これから不動産投資を始めようとする方は,まだ知識・経験が不足しているため,いきなり高額な物件を購入することは避けた方が無難です。
そこで,不動産投資の最初のステップとして,不動産投資初心者が購入して失敗してもダメージが少ない,安価な物件の代表格である区分所有建物投資及び木造中古戸建て投資について,検討していきたいと思います。
第1 投資を始める前の大前提
1 リスクとリターンとの関係
一般に投資の世界では,リスクが大きいものほどリターンも大きく,またリスクが小さいものほどリターンが小さい傾向があります。
このことは,不動産投資でも同様で,規模を大きくしてリスクをとればそれだけリターンも大きくなり,また人口密度の低い地方の物件でリスクを受け入れて不動産投資をすればそれだけリターンも大きくなる傾向にあります。
2 短期保有か長期保有かによる投資戦略の違い
不動産投資を短期保有(キャピタルゲイン目的)で行う場合には,売却差益が利益となりますので,物件購入時において,いつ・いくらで売るのかの判断が必要であり,出口戦略が最重要となります。
この点については,以前にも書いたとおりですが,現在では一般の方がこの手法をとるのはかなり難易度が高いといえますので,個人的には,キャピタルゲイン目的での投資をするのであれば,不動産ではなく株や為替のほうがいいのではないかと思います。
他方,不動産投資を長期保有(インカムゲイン目的)で行う場合には,最低限の出口戦略は必要ではあるものの,基本的には賃料による運用益が利益となりますので,どれくらいの期間・どれくらいの空室率で・どれくらいの賃料で貸せるのかの判断が最重要となります。
以上をふまえ,不動産投資のスタート編といえる区分所有建物投資と木造中古戸建て投資について,長期保有(インカムゲイン目的)で行う際のメリット・デメリットを比較しながら見ていきたいと思います。
第2 区分所有建物か木造中古戸建てか
1 区分所有建物について
区分所有建物は,いわゆるマンションです。ここでは,ワンルームマンション又はファミリータイプのマンションを想定しています。
(1)メリット
ア 物件購入時
①物件量が多く選択の幅が広い
②ワンルームの場合には購入金額がそれほど高額とならない
イ 運用時
①入居者を見つけやすく長期間の空室リスクが少ない
②物件事態に管理会社があるため管理が楽
ウ 売却時
①購入希望者が多いため売却にそれほど苦労しない
(2)デメリット
ア 物件購入時
①会計上,土地・建物の評価額が購入価額よりも低いため次々に融資を受け物件購入することが困難であり規模拡大に時間がかかる
イ 運用時
①税金・火災保険料の他にも修繕積立金・管理費・共益費等のランニングコストが必要となるため利回りがそれほど高くならない
②居住者が退去するサイクルが早い
ウ 売却時
①特にワンルームの場合自己所有目的で購入されることが少なく購入者が投資家に限られることから売却価額が安く抑えられることが多い
(3)区分所有建物まとめ
区分所有建物は,購入・客付け・売却等の各種手間は比較的楽ですが,ランニングコストが高額となるため,必然的に収益率(利回り)が悪くなってしまいます。
2 木造中古戸建てについて
木造中古戸建ては,いわゆる「家」です。ここでは,一軒家と長屋を想定しています。
(1)メリット
ア 物件購入時
①特に築古物件の場合購入額が安い
イ 運用時
①ランニングコストが税金・火災保険料程度であり,利回りが高くなる
②自由に修繕・リフォームができる
ウ 売却時
①土地が残るため資産価値が一定以下にはならない
(2)デメリット
ア 物件購入時
①市場への供給量が少ないため購入物件の選定に時間がかかる
②特に築古物件の場合には融資を受けて購入することが困難であることから現金での購入となる
③現金購入であるため規模拡大に時間がかかる
④建物自体に瑕疵がある場合がある
イ 運用時
①間取りが現代向きでなく購入後リフォームが必要となることが多い
②特に地方は戸建賃貸の需要が少なく郊外の場合空室リスクが高い
ウ 売却時
①戸建て賃貸をする投資家が少ないため売却に時間がかかることが多い
(3)木造中古戸建てまとめ
木造中古戸建ては,購入・客付け・売却等の各種手間が比較的多く,区分所有建物に比べると若干難易度が上がりますが,一旦客付けまでしてしまうと,ランニングコストが低額となるため,必然的に収益率(利回り)が良いものとなります。
第3 まとめ
以上,不動産投資を始める際に選択対象になるであろう区分所有建物投資及び木造中古戸建て投資について検討しました。
区分所有建物は手間は少ないですが利回りが小さく,木造中古戸建ては一定の手間はかかるますが利回りが大きい傾向にあります。
いずれも一長一短です。
区分所有建物投資及び木造中古戸建て投資自体は,いずれも規模拡大には適していませんので,将来的に行う可能性がある1棟マンション・1棟アパート投資の予行演習となることが多い投資方法ともいえます。
不動産投資の世界に一歩踏み出す際,ご一考いただければと思います。
なお,最後に補足ですが,投資結果は全て自己責任です。