住宅ローンを利用して銀行から資金を借入れマイホームを購入した夫婦が離婚する場合,ローン残債務の支払いはどうなるのか?

日本ではまだまだ持家信仰が強く残っており,結婚した夫婦の多くが住宅ローンを利用して居住用不動産=マイホームを購入されます。

マイホームの購入は一点賭の不動産投資であるため,投資目的で見るとどうかと思うことはあるものの,一生添い遂げる予定の夫婦・家族の住みかという意味ではマイホーム購入はある種の憧れではあります。

もっとも,住宅ローンを利用してマイホームを購入した後,訳あって夫婦が離婚するに至った場合,マイホーム自体の処理とあわせて住宅ローン残債務の処理も必要となり難しい問題に直面することとなり得ます。

以下,住宅ローンを利用してマイホームを購入した夫婦が離婚するに至った場合の住宅ローン残債務の処理について説明したいと思います。

住宅ローンの法律上の位置付け

言うまでもなく,住宅ローンとは,購入する居住用不動産を物的担保として銀行に差し入れ,その購入資金を銀行から借り入れる契約です。法律的に見ると,住宅ローンとは,金銭消費貸借契約,不動産売買契約及び抵当権設定契約の複合契約です。なお,このうち,抵当権設定契約は,実際には金銭貸付をした銀行とではなくあわせて締結させられる保証契約の当事者となる保証会社との間で行われますが,本稿の主題ではないので,本稿では抵当権の説明は割愛し,金銭消費貸借契約に特化して検討します。売買契約の説明も同様に割愛します。

そこで,金銭消費貸借契約について見てみます。

この点,金銭消費貸借契約における貸主は当然銀行です。

他方,金銭消費貸借契約における借主側にはいくつかのバリエーションがあります。

夫婦の一方が借主となる場合,夫婦双方が借主となる場合があり,また夫婦双方が借主となる場合では,双方が全額について連帯負担する場合と,個別に一定額を負担する場合がありえます。

また,借主とあわせて保証人をどうするかでも場合分けができます。

まとめると,夫婦で住宅ローンを利用する場合としては,概ね以下のバリエーションに分類されます。

①夫又は妻の単独借入れ,他方配偶者は関与しない場合

この場合は,最もシンプルな住宅ローンです。単に一方配偶者が銀行から金銭を借り受け,購入した不動産に抵当権を設定するというだけのものです。

②夫又は妻が単独で借入れ,他方配偶者が連帯保証人となる場合

これは,①の仕組みに加えて,一方配偶者が住宅ローンの返済を怠った場合に備えて,他方配偶者にもローンの返済義務を負担させるという契約形態です(この契約は,他方配偶者の地位を債務者ではなく,保証人とする方式です。)。

③夫及び妻双方が全額の連帯債務者となる場合

これも,①の仕組みに加えて,一方配偶者が住宅ローンの返済を怠った場合に備えて,他方配偶者にもローンの返済義務を負担させるという契約形態ですが,②とは異なり,他方配偶者の地位を保証人ではなく,債務者とする方式です。

④夫及び妻双方が個別に一定額の単独借入れ合算する(ペアローン)の場合

ペアローンとは,夫婦それぞれが,別個に銀行との間で金銭消費貸借契約を締結して金銭を借り受けて住宅を購入し,銀行が,それぞれの住宅持分に対して別個に抵当権を設定する方法です。

夫婦が離婚した場合の住宅ローン返済義務の帰趨

住宅ローンを利用してマイホームを購入した夫婦が離婚をした場合,その住宅用不動産=マイホームの所有関係については,夫婦間の財産分与の協議によって決定されます。

もっとも,財産分与によって決定された住宅用不動産=マイホームの所有権の帰趨は,住宅ローンの返済義務(債務者・人的担保・物的担保の帰趨)に影響を及ぼしません。

すなわち,どの契約関係で住宅ローンを利用したとしても,夫婦の離婚によって住宅ローン残債務の返済義務者,返済内容,返済額の一切に変更は生じません。

意外に思われるかもしれませんが,考えてみれば当たり前の話です。

なぜなら,前記「第1」のどの構成で住宅ローンを利用したとしても,その契約は,貸主銀行と借主夫婦との金銭消費貸借契約です。

そのため,夫婦が離婚するという借主側のみの個別事情の発生のみで,貸主との間の法律関係に影響を与えるはずがないからです。

この結論は,銀行の目線から見ると当然の結論です。

夫婦の離婚という銀行のあずかり知らない事情によって,債務を負担する者が変わってしまうという結論になるのであれば,銀行は怖くて金銭貸付けなどできないからです。

住宅ローンを利用して居住用不動産を購入した夫婦が離婚をする場合に採るべき方法

とはいえ,夫婦が離婚した後も,離婚前の契約関係を維持し,ローン財債務の支払いを継続していくことは,経済的に又は心情的に困難となる場合があり得ます。

そこで,通常は,離婚の際に,住宅用不動産=マイホームの所有権の帰趨と合わせて,住宅ローン残債務についても夫婦それぞれの収入・財産に応じた処理を検討する必要があります。

具体的には,不動産を売却して残債務の返済に充てたり(不足分の負担も検討が必要),住宅ローン負担者が所有権を単独所有して単独名義でのローンに借り換えたりするという方法もあれば,現状を前提として銀行に返済方法の変更をお願いするという方法も考えられます。

ローン残債務付きのマイホームがある場合の離婚は,難しい整理を要求されることが多いため,後々のトラブル防止のため,弁護士を介在させることを検討された方が良いかもしれません。

参考にしてください。


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