士業が行う不動産投資はキャピタルゲイン目的の投資が向いている?リスク・利回りを考えるとインカムゲインを狙うより失敗が少ない。

弁護士を含めた士業の世界でも,投資を行っている方が多数おられます。

また,本業が忙しい士業の方にとっては,本業以外に時間を割くことは困難だと思いますので,士業の方の副業ビジネスは,大きな手間のかからない不動産投資に偏る傾向があるのではないでしょうか。

そこで,本稿では,士業の不動産投資として,フロービジネス(売買差益狙い)とストックビジネス(家賃収入狙い)のいずれが士業に向くものなのかを検討したいと思います。

 

第1 ビジネスモデル一般論

1 フロービジネス

フロービジネスは,キャピタルゲイン(転売益)獲得を目的として個別的な取引で利益を得ることを目的として行うビジネスです。

このビジネス手法は,短期的に大きな利益を上げうるものですが,単発的なものですので,複数回に亘ってこの手法で利益を上げるには相当のスキルが要求されるものです。

株式投資を例にいえば,売却差益を目的として行うものであり,このビジネスモデルの代表的な投資家は,やはりイングランド銀行を負かした男ジョージ・ソロスでしょう。

2 ストックビジネス

ストックビジネスは,インカムゲイン(収益)獲得を目的として継続的な利益を得ることを目的として行うビジネスです。

このビジネス手法は,短期的な利益は小さいのですが,長期間に亘って継続的に一定の利益を得ることができるものですので,専門的な知識がない方でも始めやすい長期投資に向いたビジネスモデルといえます。

株式投資を例にいえば,株式配当を目的として行うものであり,このビジネスモデルの代表的な投資家は,やはりオバマの賢人かつ投資の神様ウォーレン・バフェットでしょう(日本でいえば,孫正義社長でしょうか。)。

 

第2 不動産投資のビジネスモデル

 

前記のビジネスモデルは,不動産投資にも当てはまり,不動産投資にもフロービジネスとストックビジネスが存在しています。

1 フロービジネスとしての不動産投資

フロービジネスとしての不動産投資は,不動産を購入した価格よりも高い価格で売却し,その売却益を得る投資方法です。

日本における不動産投資は,バブル崩壊まではもっぱらこの方法によるものでした。

バブルが崩壊するまでは,我が国の不動産価値は上昇の一途をたどっていたため,購入した不動産は,放っておいてもその後価格が上昇したため,ただ所有するだけでキャピタルゲインが発生したからです。

そこで,かつては,この方法(相場の価格で購入し,高くなった相場価格で売却する。)が,不動産投資の主流だったのです。

 

ところが,1991年(平成3年)ころにバブルが崩壊し,以降,不動産価格の低迷が続いたため,買ってしばらく放置した後売却するという不動産投資モデルが成立しなくなりました。

また,今後も少子高齢化による人口減少により,長期的にみると不動産価値の下落が予測されますので,このビジネスモデルが復活することもなさそうです。

現在では,このキャピタルゲイン目的でのフロービジネスは完全に下火であり,一部の不動産業者等のいわゆるプロ以外は,ほとんどこのビジネスモデルで不動産投資が行われていることはないと思います。

なお,現在のキャピタルゲイン目的のフロービジネスとしての不動産投資とは,かつてのような相場の価格で購入し,高くなった相場価格で売却するものではなく,相場価格より低い価格で不動産を購入し,相場価格で売却することで成立しているのです。

そのため,現在のキャピタルゲイン目的のフロービジネスとしての不動産投資は,相場価格と比べていかに安く仕入れができるかにかかっており,一般の方が参入するにはハードルの高いビジネスモデルといえます。

2 ストックビジネスとしての不動産投資

他方,ストックビジネスとしての不動産投資は,言うまでもなく,賃貸経営によって不動産から地代・家賃収入を得る投資方法です。

前記のとおり,キャピタルゲイン目的でのフロービジネスとしての不動産投資モデルが一般的ではなくなった現在では,不動産投資の主流は,もっぱら賃貸経営によるインカムゲイン獲得目的のストックビジネスによるものとなりました。

また,超低金利政策による銀行融資条件の借り手の有利性や,ロバート・キヨサキ氏の「金持ち父さん貧乏父さん」が大ベストセラーになったこともあって,現在でもインカムゲイン獲得目的のストックビジネスとしての不動産投資が大ブームとなっています。

 

第3 士業の不動産投資

では,以上の理は士業の方にも当てはまるのでしょうか。

士業の方に向く不動産投資は,前記キャピタルゲイン獲得目的のフロービジネスモデルでしょうか,インカムゲイン獲得目的のストックビジネスモデルでしょうか。

これに対する回答は,「人による」でしかないのですが,そんなことを言ってしまうと元も子もないので,士業の方の不動産投資に対する優位性から検討してみたいと思います。

1 士業の方が行うストックビジネスとしての不動産投資

インカムゲイン獲得を目的とするストックビジネスモデルでの不動産投資については,士業の方が行う場合であっても,士業以外の方が行う場合と大差はありません。

基本的には,士業の方の場合であっても,不動産業者等から,収益に適した物件の紹介を受け,銀行融資を受けて購入し,管理業者の管理のもと収益を上げたうえで,売却により利益を確定することによるからです。

実際,この方法で不動産経営をしている士業の方は,かなりの人数いると思います。

2 士業の方が行うフロービジネスとしての不動産投資

もっとも,キャピタルゲイン獲得を目的とするフロービジネスモデルでの不動産投資については,士業の方は,士業以外の方と比べて圧倒的に有利な立場にいます。

不動産を,相場価格よりも圧倒的な安価で購入できる可能性があるからです。

具体的にいうと,士業の方は,業務上,不動産会社・銀行・他の士業の方とつながりがあることが多く,問題不動産物件の情報を耳にする機会が多いからです。

一例を挙げると,不法占有者がいるために買い手がつかない物件の情報,接道要件を満たしていないために再建築要件を満たさない物件の情報,所有不動産の急ぎ売却をしなければならない経済状態の人の情報,破産管財申立て前後の任意売却物件情報等が一定の割合で入ってきます(究極の川上情報といえます。)。

このような問題不動産については,思い切った指値が可能ですので(場合によっては,相場の10分の1以下なんていうものもあります。),安価な仕入れの可能性が出てきます。

さすがに自分が関係する事件で,前記情報を耳にしても,当該物件を自分で買い取ることは利益相反の問題からできないと思いますが,同期や友人の士業・顧問先会社からの情報によるものであれば,問題物件の買い取りをしても問題はありません。

そして,士業であれば,かかる問題の解決(不法占有者の追い出しや,接道要件の充足等)についても,どれくらいの費用と時間を要するかの大まかな目安がわかる上,問題不動産の価値を相場価格まで戻すことも一般の方よりは容易です。

以上を踏まえると,現在においてもなお相場価格より低い価格で不動産を購入し,相場価格で売却することが可能といえますので,士業の方にとっては,いまだにフロービジネスとしての不動産投資が成り立つのではないのでしょうか。

 

以上,秋の夜長に考えてみた,士業の方の不動産投資手法の一考察でした。





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