離婚の際に財産分与の対象となる財産(夫婦共有財産)と財産分与の対象とならない財産の違いについて

縁があって結婚した夫婦は,双方の協力のもとで,結婚後それぞれが収入を得て預貯金を増減させたり,いずれかの名義でローンを組んで車・家等の動産・不動産を買い,また各種保険に入るなど,様々なプラス・マイナス財産を築き上げていきます。

ところが,縁があって一緒になった夫婦が,訳あって離婚に至った場合,この複雑に形成された財産をどのように分割処理をすることになるのかが問題となります。

現在は,3組に1組の夫婦が離婚する時代となっており,この離婚に伴う財産分与が問題となることが多くありますので,以下,夫婦間の財産関係の基本的考え方と,離婚による財産関係の解消についての考え方について検討します。

夫婦間の財産関係について

婚姻中の夫婦の財産についての基本原則

法律上は,夫婦であっても別人ですので,原則として婚姻中の夫婦であっても,婚姻中にそれぞれが取得・消費した財産は,個々人の財産関係であるとも考えられます。

もっとも,婚姻中の夫婦は,同居・協力義務(民法752条),婚姻費用負担義務(民法760条)を負った状態で共同生活を行い,双方の協力の下で,夫婦共有財産を形成・消費します。

また,対外的にも,夫婦の一方配偶者が,日常家事に関する事項について,第三者に債務を負った場合には,他方配偶者もまたその債務について連帯責任を負うとされています(民法761条)。

そこで,法律上は,夫婦の財産関係について相当程度の同一性を志向していると考えられます。

そのため,実体法上,夫婦が,婚姻中にその協力の下に形成した財産については,その名義のいかんにかかわらず,またプラス財産もマイナス財産も区別なく,原則として夫婦共有財産とされます。なお,この点については,税法上の考え方とは異なります。

婚姻中の夫婦の財産についての例外的扱い

以上に対し,夫婦共有財産とならない財産がいくつかありますので紹介します。

①一方が婚姻前から有する財産(民法762条1項)

②婚姻中に夫婦の協力なしに自己の名で得た財産(民法762条1項)

③夫婦財産契約(民法755条)を締結した場合

夫婦財産契約とは,婚姻前に,前記の法律上の夫婦の財産関係とは別の取り決めを行い,それを登記することによって,その夫婦独自の財産関係を規律するというもので(民法755条,同756条),一旦定めたら変更できない強力な法的拘束力を持つ契約です(民法758条)。

もっとも,夫婦財産契約は,その存在があまり知られていないことに加えて,婚姻時に離婚時を想定した契約を締結するという心理的抵抗感から,ほとんど利用されていないのが実情です。

離婚時の財産分与

前記のとおり,婚姻中に夫婦が形成した財産は,基本的には夫婦共有財産となりますので,離婚の場合には,共有財産を夫婦のいずれかの単有となるよう分配する必要があります。

この夫婦共有財産の財産分配を,財産分与といいます。

他方,夫婦共有財産とならない各人の単独財産については,財産分与の対象となりません。

なお,財産分与の基本的論点については,別稿:離婚に伴う財産分与の基礎にて詳しく説明していますので本稿での紹介は割愛します。

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