新設法人名義での銀行口座作り方(設立直後の会社が口座を開設するのは簡単ではありません)

我が国において,法人設立直後に新設法人名で銀行口座を作るのは容易ではありません。

法人を設立又は法人成りをする際には,このことを頭に入れておかなければ,法人を設立して商売を始めたにもかかわらず,入金してもらうはずの法人名義の口座が準備できないという事態に陥りかねません。

 

第1 新設法人名義の銀行口座が簡単には開設できない理由

自然人(いわゆる普通の人間のことです。)であれば,自身名義の銀行口座を開設するのは簡単です。

銀行窓口に行って手続きをすれば、すぐにできます。

その理由は,自然人の場合には,戸籍や住民票によって,簡単にその存在が公的に証明されるからです。

そのため,個人名の口座を悪用したとすると,誰が悪用したかも明らかとなります。

 

ところが,設立直後の法人の場合にはそうはいきません。

法人は,単なる法概念に過ぎませんので(法が,権利義務の主体とするために,人であると認めたものにすぎません。),実体として存在するか否かが一見して判断できません。

法人として設立登記がなされていたとしても,その法人が実在するか否かは必ずしも明らかではないのです。特に設立直後の新設法人は,実体の存在の判断が困難です。

そのため,法人登記があるというだけで,その法人名の口座を開設した場合,その口座を管理する者が誰かわからないことから,不正の発見が容易ではなく,場合によっては,マネーロンダリングや不正送金等の犯罪用の口座として使用されるおそれがあります。

実際に,架空の(登記はあるが実体が存在しない)法人名義の口座を利用した犯罪も多数発生しています。場合によっては,口座開設をした銀行の責任を問われる可能性もあります。

そのため,銀行側としても,そのようなリスクを回避すべく,口座開設を希望してきた法人について,その法人名での口座開設を認めるか否かについては,実際にその法人の実体があるか(経済活動が行われているか)によって,かなり厳格に判断されます。

 

第2 法人設立者がやりがちな失敗

法人を設立する場合の多くは,当初は収支計算が明らかでないことから,経費を少しでも節約したいと考えるのが普通だと思います。

1人で事業を開始した場合には人件費は考えなくていいため,次の大きな経費は事務所等の家賃だと思います。

見栄えを考えると自宅で開業するのは気が引けるが,高額の家賃支払いはしんどいということで,法人を設立して事業を開始しようとされる方の一定数は,レンタルオフィスを本店とされていると思います。

 

レンタルオフィスを本店として法人設立登記をすることは簡単です。

法人設立登記自体は,費用を節約するために自分ですることもできますし,司法書士さんに依頼すれば,ものの数日で終わります。

 

しかし,レンタルオフィスを本店として法人を設立すると,その法人名で銀行口座の開設を希望しても,ほとんどの場合,銀行に断られます。

レンタルオフィスは,借りるのも出るのも簡単ですので,その所在に信頼性がなく(今後も事業を続けて行こうという意思が推認できないからです。),新設法人の経済活動自体を判断できないからです。

そのため,私が相談を受けた場合には,レンタルオフィスを本店として法人設立をするのはやめた方がいいとアドバイスしています。

 

第3 新設法人名義の口座を開設するためには

独自にオフィスを借りてスタートすることなく,レンタルオフィスを本店として事業を行いたいが,法人名での銀行口座の開設をしたいという場合にはどうしたらいいのでしょうか。

方法としては,いろいろあると思います。

個人の信用が高いのであれば,事前に銀行の支店長クラスにネゴっておく,その銀行と取引のある関係者に銀行に圧力をかけてもらうということもできるかもしれません。

また,大手行の中でも,ゆうちょ銀行の審査は,他行より厳しくないように感じますので,ゆうちょ銀行で申請してみるという方法も考えられます。

 

正解はわかりませんが,私が,レンタルオフィスを本店として事業を行いたいとの相談を受けた場合には,まずは自宅で法人設立登記を行い,これを基に法人名で銀行口座の開設を行い,完了後にレンタルオフィスに移転するよう勧めるようにしています。

これであれば,一旦自然人の公的書類による存在の信用性を利用して,法人の実体を推認させることが可能だからです。

 

これから法人を設立しようとされる方には,銀行口座開設の可否についても検討の上,行っていただきたいと思います。

なお,口座開設ができる場合でも,銀行による法人としての実体調査に数週間を要します。

法人設立の場合には,余裕をもった計画で進めましょう。



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