個人事業主が交通事故加害者となった場合に被害者に支払った損害賠償金を経費計上できるか

個人事業主の方も,加害交通事故を起こしてしまうこともあります。

では,個人事業主の方が,交通事故を起こした結果,被害者に損害賠償金の支払いをすると,その支払額は個人事業で経費計上できるのでしょうか。

個人事業主が必要経費にできる損害賠償金

個人事業主の方は,業務に関連しない行動で自動車を運転することもあり,また事業に関連する行動で自動車を運転することもあります。

そして,当然,どちらの場合でも交通事故加害者となり得ます。

すなわち,個人事業主の方は,業務に関連しない自動車運転で交通事故損害賠償責任を負うこともあれば,業務に関連する自動車運転で交通事故損害賠償責任を負うこともあります。

この点,業務に関連しない加害交通事故に起因して負った損害賠償金の支払いについては,必要経費として計上することはできないとされています(所得税法45条1項7号)。必要経費とは,収入を得るために要した費用をいうのですから当然の帰結です。

所得税法45条(家事関連費等の必要経費不算入等)
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は,その者の不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上,必要経費に算入しない。
⑦  損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの

他方で,業務に関連して発生した加害交通事故に起因して負った損害賠償金(ここでいう損害賠償金は,慰謝料・示談金・見舞金等その名称の如何は問いません。)の支払いについては,必要経費として計上し得えます

もっとも,事業に関連した交通事故に起因して負った損害賠償金の支払いであっても,故意または重過失により他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金は,必要経費に算入できないとされています(所得税法施行令98条)。なお,重過失については,加害者の職業,地位,事故当時の周囲の状況,侵害した権利の内容及び取締法規の有無などの具体的事情を考慮して,加害者が本来払うべきであった注意を払ったかどうかにより判定されます。

所得税法施行令98条(必要経費に算入されない損害賠償金の範囲)
法第四十五条第一項第七号 (必要経費とされない損害賠償金)に規定する政令で定める損害賠償金(これに類するものを含む。)は,同項第一号に掲げる経費に該当する損害賠償金(これに類するものを含む。以下この条において同じ。)のほか,不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関連して,故意又は重大な過失によつて他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金とする。

結論

以上をまとめると,損害賠償金を支払った個人事業主が支払賠償金を経費計上できるのものは,業務に関連して,通常の過失によって支払った損害賠償金である場合をいうことになります。

加害者が,雇用主たる個人事業主自身ではなく使用人である場合にも,雇用主が損害賠償金支払い義務を負い,実際にこれを支払った場合には同様に考えます。

ちなみに,支払った損害賠償金を経費計上する場合,その賠償すべき額が確定した事業年度において,雑損失勘定などで処理をするようです。

参考にして下さい。

合せて読みたい→原則として交通事故被害者が受け取った損害賠償金(示談金等)に税金(所得税・住民税)はかかりません

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