交通事故被害車両に積載されていた積荷の損害賠償

交通事故により車両が損壊された際,その波及的効果により同車に積載していた積荷もまた損壊される場合があります。

この場合,交通事故被害者は,加害者に対して,この積荷の損害についても損害賠償請求ができるのでしょうか。

積荷損害について損害賠償請求ができるか

基本的考え方

一般に,被害車両に積荷等が積載されていることが通常予見できるようなものであれば加害車両運転者に積荷損害についての賠償義務が生じ,他方被害車両に積荷等が積載されていることが通常予見できないようなものであれば加害車両運転者に積荷損害についての賠償義務は生じないと考えられます。

参考裁判例

(1)積荷が多種・多量の商品の場合

① 金沢地判平成25年9月13日・自保ジャーナル1919号109頁

日配系商品を配送する会社の積荷損害について,9000個以上の商品があり,種類も多様で,容器の損傷等が判定しにくいことから,積荷の全量を一律に廃棄処分し,代替品の調達をするという選択が不合理といえないとして,全品の廃棄処分について積荷損害として事故との相当因果関係を肯定した。

(2)積荷が食品の場合

① 大阪地判平成28年4月26日・自保ジャーナル1979号148頁

追突された車両の積み荷が食品の事例において,食品は,その安全管理に細心の注意が払われてしかるべきであり,配達先からさらにその個別小売店に配達される関係から小売店に配達される前に外箱を開封しては商品価値がなくなるものといえるところ,外箱に明らかな破損がなくとも中身の商品が破損している可能性があること等からすれば,事故車両に積載されていた商品を全て流通から排除することを目的とする運送業務委託契約内容には一定の合理性が認められ,全品の廃棄処分について積荷損害として事故との相当因果関係を肯定した。

積荷損害についての過失減額

原則

積荷損害についても,当然に過失相殺法理が適用されます。

そして,原則として,積荷損害についての過失相殺率は,事故車両の過失割合に従うこととなります。

例外

もっとも,例外的に,事故車両相互間の過失割合に加えて,積荷の積載方法に問題があった場合には(通常の走行においても積荷が崩れるおそれがある積み込みをしていた場合等)車両相互間の過失相殺率に加算して,他方積荷の積載方法に問題がなかった場合には過失を減算して過失認定をすることがありえます。

参考裁判例としては,以下のものがあります。

① 大阪地判平成28年4月26日・自保ジャーナル1979号148頁

事故当時,積荷を天井まで隙間なく積み込んだ上,その側面に板を当ててベルトで固定する措置を講じていた案件で,かかる措置を講じていれば通常の走行において積荷が崩れるおそれはなかったということができ,積荷の崩れは専ら被告の過失によるものとして,過失相殺を否認した。

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