【車両保険の基礎】保険料の決定方法から必要となる支払保険金額はいくらかまで

本稿では,車両保険の仕組みがよくわからないという方のために,車両保険がどういう保険で,その保険料がどうやって決まり,事故があったときに支払われる保険金がどのように決まるのかについて,簡単に説明したいと思います。

車両保険とは

車両保険は,自動車保険のうち,自分の車(被保険車両)の損害を補償する保険です。

この点,自動車保険は,基本保険と特約とがセットになった商品であるところ,その基本的内容は対人保険及び対物保険を中心とする相手方に対する賠償責任保険ですので,車両保険は,自動車保険の要素とされておらず,付保の有無は保険契約者の意思に委ねられています。

自動車保険のうち,車両保険は,その他の保険・特約と比べて使用頻度が格段に高いので,総保険料に占める負担割合が高い保険といえます(付保すると,保険料が跳ね上がる保険です。)。

そこで,車両保険は,事故発生時に,自分の車の修理代を自分で負担できるかを見極めて,付保の有無が選択されるべき保険です。

車両保険についての保険料の決定方法

車両保険についての保険料の決定要素

車両保険を付保する際の支払保険料は,①車両価格,②車両保険の種類,③車両免責金の有無の組み合わせによって決せられます。

以下,順に見ていきましょう。

車両価格

車両保険は車本体にかける保険ですので,保険金額は車両価格(評価額)が基準となり,車両価格は,車種(メーカー・型式),年式(使用年数)をもとに算出されます。

車両価格が高いほど(新しい車両であるほど,高級車であるほど),保険料は高くなります。

この点,車両価格については,車両保険の保険金額として設定できる車両価格は協定保険価額によることとされており,保険契約者が勝手に設定することはできません

具体的には,保険会社は,協定保険価格をまとめた車両標準価格表を決めており,車両保険に加入するときはこの車両標準価格表に基づいて車両価格,ひいては保険金額を設定する事になります。

車両標準価格表では,上限のみならず下限も決められていますので,この上限と下限の範囲内で付保できる車両保険金額を決定することとなります(例えば,50万円~100万円の範囲内)。

車両保険の種類

車両保険のタイプは,ほぼ全ての事故類型で車両保険金が支払われる「一般型(オールリスク型)」と,車両保険が支払われるのが車両同士の事故等に限定される「限定型(エコノミー型)」の2種類があります。

一般型の方が保険料が高く,限定型の方が保険料が安くなります。

(1)一般型(オールリスク)

補償の対象となる事故の範囲が全範囲的な車両保険で,自己の範囲について,相手方のある交通事故のみならず,自損事故,いたずら被害,盗難被害の場合等のほとんどの車両被害に対して保険金が支払われるタイプの車両保険です。

(2)限定型(エコノミー型,車対車+A)

補償の対象となる事故の範囲が限定型な車両保険で,事故の範囲について,車対車の衝突事故などに限定して保険金が支払われるタイプの車両保険です。

車両免責金

車両保険の免責とは,事故による修理代相当額の保険金の支払いを受ける際に,保険の加入者が自己負担する額=保険会社の責任が免除される金額のことを言います。

事故の際には,修理費から免責金額(自己負担額)を差引いた金額が保険金として支払われます。

各保険会社で若干違いはありますが,免責ゼロから免責10万円までの区分があります。

免責金があれば保険料が安くなり,また免責金が多いほど保険料が安くなります。

車両損害を被った場合の受け取り車両保険金限度額

車両免責金がない場合

(1)分損の場合

修理代金等。

(2)全損の場合

車両価格。

車両免責金がある場合

(1)分損の場合

修理代金等から車両免責金を控除した額。

(2)全損の場合

車両価格全額(全損の場合には車両免責金を控除しない。)。

車両免責金がある場合でも,全損の場合には車両免責金を控除せずに車両価格全額の支払いがなされる理由は,保険会社が,車両保険金の支払いによって被保険車両の引き上げを行うためです(車両免責金を控除して支払った場合,全額の支払いとならないために,民法422条類推適用により,不法行為者がその残存物の所有権を取得することができなくなるという不都合を回避するためです。)。

補足(車両保険を付保する場合は上限金額にするのがおすすめ)

車両保険の付保自体は,修理費の負担ができる資力があるかどうかで決すべきなのは最初に説明したとおりですが,車両保険を付保すると決めたのであれば,車両保険は設定金額を低くしても保険料はあまり変わらないので,上限金額で設定することをおすすめします。

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