離婚に伴う財産分与の基礎(法的性質・分与時期・分与手続き・清算割合等について)

訳あって夫婦が離婚をするに至った場合,一方配偶者は,他方配偶者に対して,夫婦共同生活を送っていた間に得た財産の分与を請求できます(協議離婚の場合:民法768条1項,裁判上の離婚の場合:同法771条)。

本稿では,この財産分与について,法的性質・分与時期・分与手続・清算割合等について,順に見ていきたいと思います。

なお,財産分与の対象となる財産は,夫婦が婚姻中にその協力の下に形成した財産(夫婦共有財産)に限られ,その他の財産については財産分与の対象財産とはなりません

また,本稿は,法律上の夫婦の離婚を想定していますが,内縁解消の場合についても同内容となります(詳細は,別稿:内縁解消による財産帰属をご参照ください。)。

財産分与の法的性質


財産分与の法的性質については,最高裁は,①清算的分与・②扶養的分与・③慰謝料の3要素を含むものであると解釈しています(最判昭和46年7月23日・民集25巻5号805頁,判タ266号174頁)。

ここでいう,①「清算的分与」とは,夫婦が婚姻中に有していた実質上共同財産を清算分配すること,②「扶養的分与」とは,離婚後における一方の当事者の生計の維持を図るもの,③「慰謝料」とは,分与請求の相手方が有責配偶者であり,同人の有責行為により離婚に至った場合の請求権者の被った精神的損害を賠償するものであるとされています。

そして,以上の3要素の中で,中心的なものが,清算的分与であることについて,学説・裁判例上の争いはありません。

財産分与の時期・方法


財産分与は,まずは離婚当事者間の協議により(民法768条1項),協議ができない又は協議が整わない場合には家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるとされているところ(民法768条2項,家事審判法9条1項乙類5項),財産分与自体は,離婚と同時でも,離婚後でも決定することができます

この点については,離婚についていかなる手続きを取った場合も同様であり,離婚と同時に行う場合,離婚後に行う場合の流れは以下のとおりです。

離婚と同時の財産分与

協議離婚と同時に協議で財産分与を決定することができます。この場合,後日の紛争を防止するためには,財産分与証書を公正証書で作成すべきです。

②また,離婚調停と同時に財産分与を申立て,調停によって財産分与を行う場合には,調停調書に離婚と共に財産分条項を記載して決定されます。

③さらに,裁判離婚と同時に財産分与を決定することもでき,裁判上の和解で離婚する場合には和解調書に離婚と共に財産分与条項を記載して決定され,判決による離婚を認容する場合には離婚に附帯して財産分与を申立てた結果として決定されます(人事訴訟法32条1項)。

離婚後の財産分与

離婚後に協議によって財産分与を決定することができます。この場合も,後日の紛争を防止するためには,財産分与証書を公正証書で作成すべきです。

②また,離婚後に財産分与調停を申し立て,調停によって決定することもできます。

なお,離婚後の財産分与の申立てについては,離婚のときから2年以内に行う必要があり(民法768条2項ただし書き),この期間は除斥期間と解されているため,離婚後2年経過により財産分与の申立権限を失うため,注意が必要です。

離婚後の財産分与調停が成立しない場合には,審判手続きに自動的に移行するため(家事審判規則26条),この場合には,最終的には審判により決定されます。

財産分与の清算割合


財産分与が協議により行われる場合には,離婚当事者間の合意によるため,割合等については,協議内容によることとなります。

他方,財産分与が裁判所の手続きによる場合には,家庭裁判所が当事者双方の事情を考慮して,分与をさせるかどうか並びに分与の額及び方法を定めるとしており(民法768条3項),家庭裁判所に広範な裁量権を認めています。

もっとも,財産形成に対する寄与は経済的寄与に限られないこと,一律で定めることによって迅速な解決を図ることできることから,財産分与の清算割合は,経済的な寄与度にかかわりなく一律2分の1とするのを原則とし(平等説,いわゆる2分の1ルール),個別具体的な事情については,これを修正要素として考慮するのが一般的です。

以上より,財産分与についての清算割合については,夫婦の寄与度の割合を原則として2分の1とした上で,場合により個別事情を考慮して修正するという方法をとるのが近時の裁判例の傾向です。

まとめ

以上をまとめると,財産分与は,離婚時又は離婚後2年内に,協議又は裁判手続きによって,対象財産の清算割合が原則として2分の1の割合になるように,個別具体的財産を分与するために行われます。

参考にしてください。

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