【交通事故処理に必要となる改正民法の知識】当事者の協議を行う旨の合意による時効の完成猶予編

巷で話題となっているとおり(?),今般,民法が大改正が行われ,2020年4月1日から改正民法が施行されることになりました。

改正点は多岐にわたるところ,交通事故についても,同日以降は当然に改正民法に服することになります。

そこで,2020年4月1日以降に発生した交通事故は,改正民法に従って処理されますので,改正民法について,交通事故処理に必要と思われる点を,論点ごとに紹介して行きます。本稿はその第3稿として,新設された「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」についての説明をいたします。

【参考】

改正前民法(2020年3月31日まで)

改正前民法の下では,時効の「中断」と「停止」についての規定を設けていたものの,当事者間における協議はこれに該当せず,当事者間で協議が進んでいる場合であっても,時効完成が近づいてきた場合,時効中断のために調停申立てなどの法的手続きを取らざるを得ませんでした。

なお,この点については,当事者間の協議期間中は時効完成しないという下級審の救済裁判例が多数存在していますが,あくまでも救済措置に過ぎませんでした。

改正民法(2020年4月1日から)

現行民法の,前記訴え提起,調停申立て等の法的手続きの強制性を弱めるため,今般民法改正により,当事者間において,協議を行う旨の合意があった場合に時効の完成を猶予する旨の条文が新設されました(改正民法151条)。

この条文が新設されることにより,交通事故の両当事者間において,書面によって協議期間を定めて時効の完成猶予を行うことが出来るようになるため,無意味な時効完成間際の訴え提起,調停申立てが回避されることが期待されるようになりました。

改正民法151条
1 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは,次に掲げる時のいずれか早い時期までの間は,時効は,完成しない。
一 その合意があったときから1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは,その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは,その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により事項の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は,同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし,その効力は,時効の完成を猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成を猶予されている間にされた第1項の合意は,同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式,磁気的方式,その他他人の知覚によっては認識することが出来ない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは,その合意は,書面によってなされたとみなして,第3項の規定を適用する。
5 前項の規定は,第1項第3号の通知について準用する。

なお,重要な補足ですが,本条は,ADRにおける示談あっ旋手続きについては適用がなされません。

そのため,交通事故紛争処理センターでの示談あっ旋手続き申立てをする場合には,改正民法151条の書面による合意を併用することが必要ですので,注意してください。



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