交通事故被害に遭ってナンバープレートが損傷された場合に,加害者に対して当該ナンバープレートの修理代金を請求したいと考えるのが一般的かと思いますが,これは認められるのでしょうか。
結論から先に述べると,交通事故被害者は,加害者に対して,ナンバープレートの修理代金を請求することはできず,ナンバープレートを交換した場合に相当な範囲でのその交換費用を請求することになります。
どういうことか簡単に説明します。
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ナンバープレートの修理代金は請求できない
物損についての交通事故損害賠償請求権者は物の所有者
交通事故被害に遭って損傷した物の修理代金の請求は,法律的にいうと不法行為に基づく損害賠償請求であるところ(民法709条),同法に基づく請求権は,原則として当該物の所有権者がこれを有することとなります。
車両所有者はナンバープレートの所有者ではない
ところが,ナンバープレートは,車両所有者の所有物ではありません。
ナンバープレートは,普通自動車・二輪車を除く小型自動車・大型特殊自動車は道路運送車両法11条1項に,軽自動車・二輪小型自動車は同法60条1項に,軽自動二輪車は同法97条の3第1項によって国土交通大臣から,原動機付自転車は地方税法446条3項によって市区町村から交付されているものに過ぎません。いわば借り物です。
そのため,車両所有者は,所有車両が交通事故に遭ったことによって所有車両に取り付けているナンバープレートが損傷した場合であっても,加害者に対して,当該ナンバープレートの修理代金を請求することはできません。
これを認める法的根拠がありません。
ナンバープレートの交換費用は請求出来うる
では,所有車両が交通事故に遭ったことによりナンバープレートが損傷した場合,車両所有者が,加害者に対して何らの請求もできえないかというとそうではありません。
ナンバープレートは,その様式・取付方法が法定されており,損傷したナンバープレートでは法の規定を満たさない場合があり,またそこに至らない場合であっても損傷したナンバープレートを甘受しなければならないとすると車両所有者にあまりに酷な結論となります。
そこで,多くの裁判例では,一般に,所有車両が交通事故に遭ったことによりナンバープレートが損傷した場合,車両所有者のナンバープレート交換費用については,加害者に対する損害賠償義務を認めています(法律構成としては,車両修理費の一部としてではなく,独自の損害費目としている場合が多いのではないかと思料します。)。
もっとも,ナンバープレートの交換費用として認められるのは,法定費用及び妥当な範囲での業者依頼費用に限られます。
なぜなら,一般的に損害賠償とは,他人に与えた損害を填補することすなわち金銭的に見て不法行為前の状態を回復させることをいい,懲罰的損害賠償制度を採用していない我が国では被害者に不法行為前に比して利益を得ることが許されていないところ,前記範囲を超えた費用を認定した場合,被害者に経済的利益を残してしまう可能性が生じてしまうからです。参考にしてください。