一般的に収入が多いとされる弁護士をはじめとする士業の方にも長い目で見た人生設計(キャリアプラン)は必要です。
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士業に人生設計が必要であること
士業が不労所得に対する意識が希薄であること
弁護士を含めた士業の方は,一般に,企業に所属して給与を得ている労働者の方に比べると,所得額が多い傾向にあります。
このことは,弁護士についてみる限り,ボス弁(いわゆる経営者弁護士)であっても,イソ弁(いわゆる勤務弁護士)であっても当てはまると思います。
そのため,士業の方は,一般に不労所得を得ることについての意識が希薄です。
不労所得を得るシステムを構築するより,自分が働いて高額の所得を得た方が効率的だからです。
士業の労働所得の限界
もっとも,前記労働収入一辺倒の考え方には,1つの限界があります。
それは,士業の方がいかに高額の収入を得られるとしても,それが労働収入である以上,労働ができなくなった時点で収入の口が途絶えてしまうことです。
人間である以上,一定の年齢に達した場合には労働を行うことができなくなることは当たり前ですし,そればかりか若年時であったとしても,病気や怪我で働けなることもあり得ます。
それにもかかわらず,多くの士業の方は,自身の高額所得を過信して,労働ができなくなったときの担保としては,国民年金の加入しかしていないことが多く,その状態で働けなくなった場合には,受領できる年金額は月額5万5000円程度ということになってしまいます。
ところが,士業の方は,元々高額の所得を得ていたため支出の大きくなっている生活をしていた方が多いため,前記国民年金収入のみで生活を維持することはできないため,働けなくなってしまった場合には,直ちに生活に困窮する事態が生じてしまいます。
では,士業の方は,現役中にいかなる収益構造を構築すべきか,以下,収入獲得手段の多様性から考えていきたいと思います。
収入獲得手段の多様化のために
以下,士業の方が得られうる収入獲得手段について検討します。
なお,士業の方の場合,高額の労働所得を得られる前提事実がありますので,その不労所得による収入獲得手段を構築する上では,あくまでも本業である労働所得に支障をきたさないよう,できる限り士業の方自身の労働力を必要としない手段を前提としていますので,事業収入等の多大な労働を要する収入獲得手段の紹介は割愛します。
労働所得
言うまでもない自身の労働による収入ですので,説明は割愛します。
不労所得
(1)士業の方に構築可能な不労所得
自身の資産形成により不労所得を構築するものです。
① 資産を積み上げていく方法
なお,ここでいう資産とは,会計上の概念である資産のことではなく,ロバート・キヨサキ氏のいう所有者のポケットにお金を入れてくれるもの(=資産自体が稼いでくれるもの)をいいます。
ア 株式
>>【日本株式市場におけるアノマリー投資】
イ 投資信託
>>【日本には資産形成に適した投資信託が存在しない?】
ウ 不動産
>>【士業の不動産投資でのインカムゲイン・キャピタルゲイン型ビジネスの別】
>>【不動産投資の最初の購入物件は区分所有マンションか戸建てか】
エ ネット収入
② 組織・仕組みを構築していく方法
例えば,弁護士法人を設立し,サラリーを支払って雇用する弁護士に仕事をさせて,所得を極大化させるという方法が考えられます。
③ 知的財産権を得る方法
例えば,書籍を執筆して印税を得たりする方法が考えられます。
(2)前記不労所得獲得手段の現実性
この点,前記②と③の不労所得獲得手段は,士業の方にとっても,それなりの難易度があり,容易に獲得できる手段とは言えません。
そこで,まずは,①の方法,すなわち資産を積み上げていく方法により不労所得を得るのが現実的な方法といえると思います。
まとめ
以上のとおり,弁護士を含めた士業のキャリアプランを考えた場合,労働所得を得られることが可能な間は,これを最大化することに注力し,その間に所得補償(①年金基金,②小規模企業共済,③所得補償保険等)についてのケアをした上で,得た労働所得をもって不労所得を得るシステムを構築する,これしかないのではないでしょうか。
なお,労働所得の多様化のためには,必然的に税金の極小化を志向することになるのですが,それについては追って考えたいと思います。
この方法が辛い点は,得た労働所得の一定額を資産形成に回す必要があるため,当面は得た所得に応じた支出をできず,生活レベルを上げられないことにあります。
他方,この方法がよいと思う点は,所得補償と不労所得の構築により,これらによる想定収入額が,想定される支出額を超えるに至った場合には(経済的自由を得た場合),収入を得る目的で労働を行うことが必要ではかくなるため,以降は自身が士業を目指した初志を貫徹するために仕事ができるようになりますし,極論すれば以降は働かなくてもよくなるわけです。
士業の方には,将来のことを考え,以上のキャリアプランをおすすめしたいと思います。