マンション等を借りて一定の期間(契約時に定めた期間)が経過した場合に,賃貸人から更新料の請求がなされる場合があります。
賃借人は,請求された更新料を支払わなければならないのでしょうか。また,支払わなければなら場合にはその適正額はいくらなのでしょうか。
【目次(タップ可)】
第更新料とは
更新料の法的意味
更新料は,賃料の補充又は当初の賃貸借契約を超えて更なる期間の更新をするための利益の対価という複合的な意味合いを持つものと考えられています。
更新料についての地域的特性
この点,更新料については,地域によって商慣習・事実たる慣習が異なります。
大阪や名古屋では,賃貸借契約締結時に更新料を定めない場合がほとんどです。多くの場合,賃貸借契約書にも更新料の特約記載はされません。
他方で,京都や関東圏では,逆に,賃貸借契約締結時に更新料が定められる場合がほとんどです。多くの場合,賃貸借契約書にも更新料の特約記載がなされます。
このように,地域間でバラバラな商慣習を有するこの国において,どのような法的根拠で賃借人に更新料の支払い義務が発生しうるのでしょうか。
更新料の支払義務の有無
賃貸借契約の本質的な内容は,賃貸人の相手方に物の使用収益をさせる義務と,賃借人の賃料支払義務ですので(民法601条),更新料は,賃貸借契約の本質的内容ではありません。
そのため,賃貸借契約時に,当事者間に更新料を支払う旨の合意(特約)がなされていなければ,賃貸人が,賃借人に対して,更新料を請求することはできません。
最高裁も,更新料を支払う旨の特約がない場合に,商慣習ないし事実たる慣習によって更新料の支払義務は発生しないとしています(>>法定更新の事例につき最判昭和51年10月1日・集民119号9頁,判時835号63頁)。
他方,賃貸借契約時に,当事者間に更新料を支払う旨の合意(特約)がなされていたとしても,更新料の支払いを約する特約が,賃借人の利益を一方的に害するものであり消費者契約法10条により無効ではないかが強く争われた事例において,最高裁が,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条に反しないと判示したため(>>最判平成23年7月15日・民集65巻5号2269頁),通常の更新料の支払特約自体の効力が否定されることもありません。
以上から,今日では,賃貸借契約締結時に,一義的かつ明確な適正額の更新料支払いの特約が存在する場合には,賃借人に更新料の支払義務が発生し,これが存在しない場合には,賃借人には更新料支払義務は発生しないとされることとなります。
更新料額
前記のとおり,最高裁が,高額に過ぎない更新料額を定めた更新料を支払う旨の合意(特約)を有効としたため,適正な更新料額が問題となります。
この点,更新料額は,個々の契約によって,契約締結に至る経緯・契約の内容(特に賃料額)・これまでの賃料改定状況等を総合的に勘案して決定されるものであり,明確な基準を算定することは困難ですので一定の幅が認められ,裁判所がその幅の範囲内で判断することになります。
私の感覚では,借家契約の場合には関東圏では賃料の1月分,京都の場合はその倍程度,借地の場合には関東圏では借地権価額の3~5%程度とされるのが多いイメージであり,これらの額から突出して高額とならなければ,有効とされるのではないでしょうか。
参考にしてください。