他人に物を無償で貸し付ける契約を使用貸借契約といいます(民法593条~)。
貸借の対価としてお金が発生する賃貸借契約と比べると特定の人的関係間で締結されることが多く,家族間や友人間で多用される契約形態です。
特に,不動産を有する方が死亡した場合に,1人の相続人が被相続人の有していた不動産に住み続ける場合(父【夫】が死亡した場合に,その妻と子が共同で自宅を相続するものの,妻【母】がそれまで通り自宅に住み続ける場合)などが典型例です。
もっとも,使用貸借契約当事者の関係が険悪になった場合,使用貸借契約の契約解約について問題となることが散見されます。
そこで,本稿では,このような場合に問題となりうる使用貸借契約の終了原因について説明したいと思います。
【目次(タップ可)】
使用貸借契約の終了事由
絶対的終了事由
まず大前提として,使用貸借契約の借主が死亡した場合,無条件で使用貸借契約は終了します(民法597条3項)。契約締結時に特別の定めをしていなければ使用貸借権が相続されることはありません。
また,借主は,いつでも契約解約が可能です(民法598条3項)。
契約締結時に期間・目的等の取り決めをした場合
他方,借主死亡以外の場合に貸主がタダで貸した物を返してもらおうとする場合(貸主の意思による使用貸借契約終了希望)は,契約締結時に目的・期限の取り決めをしたか否かによって異なります。
まず,契約締結時に期間(終了期限)を設定した場合には,設定された期限終了時期に終了します(民法597条1項)。
次に,期間を定めず,使用・収益の目的を定めた場合には,その目的を終了したときに終了します(民法597条2項)。
また,使用・収益の目的を定めた場合には,使用・収益の目的を達成するのに足りる期間を経過すると,貸主が使用貸借契約を解約することで終了できます(民法598条1項)。
契約締結時に期間や目的等の取り決めをしなかった場合
他方,契約締結時に期間や目的等の取り決めをしなかった場合には,貸主は,いつでも使用貸借契約の解約により終了できるとされています(民法598条2項)。
紛争の要点
以上のとおり,貸主が使用貸借契約を終了させたいと考える場合,契約締結時にどのような取り決めをしたかが貸主の解約権の有無を決定づけることとなります。
ところが,多くの使用貸借案件では,契約締結時にトラブルが起こっていることはほぼなく,契約締結時に取り決めをしたり,それを書面化したりしていることは極めて稀です。
そこで,貸主が賃貸借契約を終了させたいと考えた場合,貸主側は契約締結時に期間や目的等の取り決めをしなかったと主張し,借主側は契約締結時に期間や目的等の取り決めをしたと主張するのですが,決定的な証拠がないためにこれらを基礎づける事情の積み上げによって結論が決定されることとなります。
ご不明な点がありましたらお近くの弁護士にご相談ください。