いつの間にか日本でもハロウィンが認知され,なぜかコスプレイベントの様相を呈しているようです。
その結果,ハロウィン前の土日・当日には,東京では渋谷,大阪ではUSJ等に多くの若者がコスプレ衣装を着て群がって来るという報道を目にするようになりました。
ハロウィンのコスプレイベント化については賛否両論あるみたいですが,法律家としては,このコスプレ衣装を着た集団は,法的グレーゾーンをスキップで渡っているように見えてしまいます。
以下,ハロウィンコスプレの何が法的に問題となるのか検討してみましょう。
【目次(タップ可)】
コスプレ衣装制作行為
アニメ等のキャラクターのコスプレ衣装製作の場合
コスプレ衣装は,アニメ等の何らかの作品のキャラクターを模したものであることが多いのですが,これらのキャラクターは,通常,著作物として保護されています。キャラクターそのもののみならず,そのキャラクターの衣装も同様に保護されます。
そのため,キャラクターもののコスプレ衣装の製作は,そのままであれば著作物の複製(著作権法21条)に,基本は変えずに一部改作したものであれば翻案(著作権法27条)にあたり,これらを行った場合には著作権法違反となります。
この点,法律上,著作物であっても,家庭内での私的使用目的の複製・翻案であれば,著作権者以外の者が行なうことも禁止されていません(著作権法30条1項,著作権47条の6第1項)。
他方,私的使用を超える行為については,著作物の複製権は著作者の著作権を侵害することとなりますので,許されない行為となります。もっとも,家庭内で製作しているだけでは外部から把握しようがありませんので,この段階で問題となることは通常ありませんが・・・
その他の周知されたキャラクターや独自のキャラクター衣装製作の場合
著作権で保護されるもの以外の場合には,前記の著作権の問題とならないので,基本的には,衣装製作段階での問題は生じません。
そのため,犬や猫など動物や,著作権の切れたキャラクターについては,そもそも著作権違反の問題は生じません(なお,近々ミッキーマウスの著作権が切れるそうですので,その後は街中にミッキーが溢れかえるかもしれません。)。
コスプレ衣装を着て特定のイベントに出たりネットにアップする行為
家庭内で衣装を製作しているだけではほぼ問題とならないものですが,これを外部に発信し出すと,問題点が出てきます。
著作物を公に上演・上映する権利は著作者が持っており(著作権法22条,同22条の2),インターネット上への発信権も同様です(著作権法23条)。
そのため,オリジナルをマネる形でコスプレ衣装を着てイベントに参加すれば上演権侵害に,ネットに発信すれば公衆発信権侵害となる可能性があります(営利を目的としない場合の除外規定あり,著作権法38条)。
コスプレ衣装を着て街中をねり歩く行為
公法違反
以上に加え,コスプレ衣装を着て街中に繰り出す場合には,さらに市中の安全を確保するための法律に触れる場合も出てきます。
代表的なものとしては,以下のものが考えられます。
①刑法違反
露出の程度によっては,軽犯罪法に反したり,公然わいせつ罪に該当する場合もありえます。また,誰かのモノマネをすることによって真似た人物を侮辱することになる場合には,名誉毀損罪に該当する可能性がありえます。
②軽犯罪法違反
警察官,消防士,自衛官などを精巧にまねた結果,一見して本物に見えるこれらのコスプレをした場合には,軽犯罪法1条15号に反するとされる場合もありえます。
なお,コスプレといっても,ミニスカポリスなど,明らかに本物と区別できる場合にはこれに該当しないと考えられます。
③道路交通法違反
街中をねり歩く際の道路の使用状況により,道路交通法に違反する場合がありえます。
④銃刀法違反
コスプレ衣装に刀や拳銃を所持する場合には,銃刀法に違反する場合がありえます。
私法違反(損害賠償責任)
コスプレによって,他人の何らかの権利を侵害した場合には,損害賠償責任を負う可能性があります。
最期に
コスプレ衣装の作成及び作成した衣装の着用は表現の自由の保障の下にあると言い得ますが,著作権や公衆の安全と衝突する領域では一定の制限を受けえます。
場合によっては,公法的規制・私法的規定の対象となりえます。
コスプレは,衣装作成,購入から,それを着用しての表現行為に至るまで,実はかなり議論を要する法的問題を含んでいます。
はっきり言って,結構グレーです。
今日では,コスプレはほぼ黙認状態となっており,やりたい放題の状況となっていますが,今後,世論の高まりによって一斉摘発がなされる可能性もないとは言い切れません。
コスプレを楽しまれる場合には,以上の点も注意しつつ,自己責任にてお願いいたします。