今年も,就職活動の時期が近づいてきました。
学生の皆様は,気が気でないかもしれません。
これから採用面接に挑もうとする学生に対し,どういう気構えで挑めばいいのかについて,学校教育の有用性・問題点を踏まえ,私見を述べたいと思います。
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学校教育の有用性
総体的にみると,日本の義務教育は,とても優れています。
学校では,各分野での現時点での学問的到達点までの高度な知識について,これまで培われた経験の蓄積を基に,効率よく教えてくれます。
また,学校で与えられる問題には答えがありますので,学校での努力には相応の結果がもたらされるため,自己肯定感を生み出す作用もあります。
さらには,学校教育では,軍隊教育的な集団行動力ももたらしてくれます。
これらの相互作用によって,学校教育の結果として,人の言うことを聞く頭の良い人間を量産することができます。
すなわち,学校は,サラリーマンとして,勤務先に奉仕する人間(悪く言えば,お金のために働く人間)を大量作出するのに申し分ない機関として君臨し続けています。
日本人の親の多くは,自身の子供に,良い学校に入らないと,良い会社に入れないよなどと言って脅して勉強させていることなどがその典型です。
そして,このことが日本の繁栄をもたらしたのも事実です。戦後の日本の高度経済成長は,この学校教育により作出された猛烈サラリーマンが生み出したものといえると思います。
学校教育の問題点
ところが,現在では,この学校教育がビジネスの邪魔をしています。
知識を高める教育機関としては申し分ないのですが,学校は,その高めた知識をどうやって使うのが良いのかについては全く教えてくれていないからです。
年功序列が崩壊しつつある現在の現実社会では,努力した人に報いのある平等世界ではありません。
現実社会は,弱肉強食の世界です(より正確に言うと,適者生存の世界です。)。
現実社会で仕事をするのに,必ずしも知識が豊富である必要はありません。知識的なことは,ネットでググるか,人に聞けば十分です。フェンリーフォードも同じようなことを言っています。
知識獲得能力(言い換えれば事務処理能力)が高く評価される学校教育の中で優秀な成績を残したことと,ビジネスの世界で優秀さを発揮できるかとは直接的には関係ないのです。
さらに,学校教育には,もう1つ致命的な問題があります。
学校では,「お金」について教えくれないことです。
学校において,世の中でお金がどのように生み出され,どのように回っているのか,所得を得る方法,法人の仕組み,税制等について詳しく教えてくれることはありません。
そのため,学校教育を受けただけでは,お金の仕組みを知らない真っ白な状態で,学校卒業と同時にビジネスの世界で揉まれた海千山千の猛者に溢れた現実社会に放り出されることになります。
RPGゲームで言うと,レベル1,丸腰の状態でラスボス級のモンスターが徘徊するダンジョンに放り込まれるようなものです。無理ゲーです。
これが東大・京大に難なく入れた秀才が,社会で使い物にならない例が散見される理由です。
結構大きな問題です。
学校でお金について教えてくれていないといいましたが,教えることができなかったと言う方が正確かも知れません。
学校の先生というのは,恵まれたサラリーマンです(それなりの給料が保障されている上,公立の学校であれば公務員として身分保障までなされています。)。
毎月,雇用主から,一定の基準に従った決して安くない金額の給料が安定的に支払われるという勝ち組であるのが学校の先生です。
言い換えば,学校の先生は,自分でお金を生み出す必要がない人種なのです。 お金の素人です。
学校の先生にお金の教育が出来るはずがありません。
実社会の荒波に漕ぎ出す間際である採用面接の心構え
以上を読んでいただくと,学校が,知識の使い方やお金の稼ぎ方(もっと言えば,お金の働かせ方)を教えてくれていない,言い換えれば,学生に実社会に出るための準備方法を教えてくれていないことがわかると思います。
そのため,学校卒業後に現実社会でしぶとく生き抜いていくためには,学校教育を受けている間に,あわせて学校で教えてくれなかったことをも学んで,その準備をしていなければならないのです。
学校に行っているだけでいいというわけではありません。
学生は,おそらくこのことを企業の採用面接時に最初に痛感させられます。
企業の採用担当者は,学生が学校で教えられた事以外に何を学んだのか?また,何を学ぼうとしているのか?について回りくどい方法で質問をしてきます。
採用候補者の中から,与えられたもの(学校教育)以外の事項を,進んで取り入れ,ビジネスに活かせる人物を選別するためです。
私も経営者の端くれですので,毎年採用面接を行います。
そこでは,お決まりの質問もします。
長所・短所は?的なものから,これまでの成功経験を教えてといったものなどです。
就職活動を成功させるためには,それらの質問の意味を考えていかなければなりません。
大抵の学生は,部活でキャプテンをしていた,または学園祭を仕切ったのでリーダーシップがありますなどと回答しますが,この様な回答をされても,その人物に興味は持てません(あくまでも,「私は」です。)。
これらの回答は,意地悪く言えば,与えられた仕事をうまくこなすことが出来たことがありますと言っているに過ぎないからです。そればかりか,相手が意図している質問の意味を理解できない人物なんだと思ってしまいます。
その人が,どういう自己評価の下,どういう将来設計をしていて,それを実現するために,どういうことを考え,どの様な努力をしてきたかが全くわかりません。
採用面接での質問に対しては,正確な自己分析の下で,学生が自ら考えて行ってきた社会に出るための準備活動がどのようなものであったのか,なぜそれをしてきたのかを答えなければならないのです。
有意義な学生生活を送るというのは,勉強だけする,遊び倒すということではありません(勉強や遊びも重要であることはもちろんですが,それだけではダメだという意味です。)。
自分の将来を考え,かつ社会に出る準備を整えていくことも重要です。
偉そうなことを言ってすみません。