交通事故損害賠償事件を取り扱っていると,相手方から,ゼブラゾーン(導流帯)を走行していたことについての過失を主張される場合がよくあります。
典型例は,上の写真の場合でしょう。
車線を走行した後右折レーンができた場所にて車線変更にて右折レーンに進入した車両(写真A車)と,ゼブラゾーンに進入した後直進にて右折レーンに進入した車両(写真B車)とが衝突した場合の過失割合です。
この場合のB車の過失をどのように考えるのかが本稿の主題です。
一般の方や,交通事故処理に慣れていない弁護士等から,ゼブラゾーン(導流帯)の法的位置づけを理解することなく,ゼブラゾーン(導流帯)を走行していたことについて大きな過失があるといった主張がなされる場合が見受けられますので,当該主張の適否について,整理してみたいと思います。
ゼブラゾーンの道路交通法上の意味(走行禁止場所ではない)
交差点の手前で右折レーンが設置される場所などの手前等に設置される白色の縞模様の部分を導流帯といいます。一般的にはゼブラゾーンといわれていますので,その方がわかりやすいかもしれません。
ゼブラゾーン(導流帯)を走行することが法律上禁止されているかのように思っている方もおられますが,そんなことはありません。
ゼブラゾーン(導流帯)は,車両の安全かつ円滑な走行を誘導する必要がある場所において,車両の安全かつ円滑な走行を誘導するために,誘導指示を標示する路面に描かれたペイントにすぎません(道路標示【道路交通法2条1項16号】のうちの指示標示。)。
すなわち,ゼブラゾーン(導流帯)は,車両の走行を規制する道路交通法上の規制ではないのです。
道路交通法上には,車両がゼブラゾーン(導流帯)に進入することを禁止する規定は存在せず,車両がゼブラゾーン(導流帯)を走行したとしても,そのことから直ちに車両運転者が罰則を課せられることはありません。
ゼブラゾーン走行車両との交通事故の場合の過失割合
以上のとおり,ゼブラゾーン(導流帯)走行について道路交通法の直接規制が存在していないため,過失割合の根拠とされる別冊判例タイムズNo38(全訂5版)においても,ゼブラゾーン(導流帯)を走行車両することを直接の過失根拠とする分類をしていません。
そこで,冒頭交通事故の事故態様では,法的には,先行進路変更車両(写真A車)と,単なる後続直進走行車両(写真B車)との交通事故と評価されますので,ともに四輪車の場合には,基本的過失割合は,別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【153図】により,A車70%:B車30%とされます。
法的には,右折レーンができるまで待ってから右折レーンに車線変更した車両(写真A車)の方が,後方からゼブラゾーン(導流帯)をつっきって右折レーンに進入した後続車両(写真B車)よりも過失が大きいとされるのです。
この点が,一般の方に受け入れがたいものであるため,紛争が長引くことがあります。教習所などでは,ゼブラゾーン(導流帯)に入ってはいけませんなどという指導がなされていますので,心情的にはわからないではないですが,法的評価では,前記のとおりとなってしまいます。
なお,ゼブラゾーン(導流帯)は,前記のとおり,車両の安全かつ円滑な走行を図るための誘導ですので,本来は,その誘導に従ってゼブラゾーン(導流帯)を避けて走行するのが法の趣旨ともいえます。
そこで,別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)は,事故態様毎に個別に検討し,ゼブラゾーン(導流帯)を走行した車両が,同所を走行したことが,事故作出の起因性が高めたと考えられる態様の事故においては,過失割合の個別の修正要素として考慮するとしていますので,ご参照ください。
宮城県ではゼブラゾーン走行が県条例で違反になってますが、この場合の過失はどうなりますか?