街中にある月極駐車場において,「無断駐車の場合には罰金・・円いただきます。」と書かれた看板が出ているのをよく見かけます。
駐車場を運営している立場からすれば,無断駐車があれば,その分収入が減りますし,また駐車区画を借りてもらっている人からのクレームにもつながりますので見過ごすことはできません。
他方で,無断駐車をしてしまった立場からすれば,月極の看板が見えにくくてわからず,タイムパーキングだと思って駐車させてしまったという,必ずしも故意とは言えない場合もあり得ます。
本稿では,無断駐車の場合罰金・・円と書かれた看板がある月極駐車場に無断駐車をしてしまった場合,書かれた罰金額を払わなければならないのかについて法律的に説明したいと思います。
【目次(タップ可)】
罰金額が書かれた看板の法的位置付け
月極駐車場に掲げられた無断駐車の場合罰金・・円と書かれた看板は,違反した場合に罰金を払ってもらうという意味ですので,法律的に言うと,損害賠償の予定(民法420条)をうたうものです。
民法420条 1 当事者は、債務の履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。 2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。 3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
もっとも,この420条は,その条文が置かれた位置や条文の内容からも明らかなとおり,契約関係にある者同士の債務の履行についての特約の1つです。
そのため,契約関係にない者を一方的に拘束できるものではありません。
駐車場運営者と無断駐車をした者との間に契約関係などありませんので,無断駐車の場合罰金・・円と書かれた看板をもって,民法420条により無断駐車をした者を一方的に拘束することはできません。
すなわち,無断駐車の場合罰金・・円と書かれた看板は法律的には,無意味なものなのです。
無断駐車をした者が支払うべき金銭
もっとも,月極駐車場に無断駐車をした者が,全く賠償義務を負わないかといえば,そうではありません。
契約関係にない場合に他人に及ぼした損害を賠償しなければならないとする不法行為に該当し,不法行為に基づく損害賠償義務が発生するからです(民法709条)。
民法709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
では,賠償額はいくらになるのでしょうか。
その金額は,実損額であり,具体的にいうと,無断駐車をした時間につき,近隣の駐車場の駐車料金を掛けた額程度が無断駐車をした者が支払うべき金額となります。
無断駐車をされた駐車場運営者からするとたまったもんじゃありませんが,我が国では,アメリカのような懲罰的損害賠償を否定していますので,契約関係にない者において実損を超えた損害賠償を認める法的根拠がなく,実損を超える額の請求権は発生しないことから,この金額を超えた請求はできません。
補足
補足ですが,駐車場運営者が無断駐車車両の対応に苦慮して警察に相談しても,民事不介入として取りあってくれません。
そのため,駐車場運営者が,自力で撤去したり腹いせに傷をつけたりされる場合がありますが,逆に無断駐車車両の所有者から損害賠償請求を受ける可能性がありますので,絶対にしないよう控えていただかなければなりません。
無断駐車に対してどのように扱ったらいいのかについて疑問を感じられたら,お近くの弁護士に相談されることをおすすめいたします。