子供のいる女性と結婚をした場合,夫となる男性と,妻となる人の連れ子との親子関係がどうなるかについて考えたことはありますか。
結論から言うと,子供から見て母となる人が誰と結婚をしたとしても,それだけで子供の身分は変わりません。
逆から見ると,夫となる人から見て,子供がいる女性と結婚したとしても,ただそれだけで妻の連れ子と法律上の親子になるわけではありません。
以下,子供のいる女性と結婚をする男性と,妻の連れ子との関係を簡単に説明します。
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妻の連れ子と継父の法的親子関係:子のいる女性と結婚しただけの場合
わが国では,子供と母親との法律上の母子関係は,分娩という事実により当然に発生するとされています(最判昭和37年4月27日・民集16巻7号1247頁)。
他方,法律上の父子関係については,その子が産まれて来たときの,その子の母とその夫との夫婦関係の成否によって決まるとされています。
具体的には,法律上の父子関係は,その子が産まれたときのその子の母とその夫との夫婦関係の成否によって決まり,子が産まれて来たときに,母に夫がいればその夫が子の実の父親となり,母に夫がいなければ実の父親は存在しないとの結論になります。
この法的父子関係(子と実の父親との関係)については,基本的には,その後の母親の婚姻関係によって変化することはありません。
そのため,男性が,子のいる女性と結婚したとしても,結婚の事実それだけでは,その男性は,妻の連れ子の法律上の父親となりません。
法律上の父でないため,継父と妻の連れ子との間に相続関係も生じません。
この状態のままで,継父と妻の連れ子との間に相続関係を生じさせようとするならば,遺贈,生前贈与,死因贈与などの個別の手段をとっておく必要があります。
妻の連れ子と継父の法的親子関係:連れ子と養子縁組をした場合
以上のとおり,子がいる女性と結婚したとしても,結婚それだけでは妻の連れ子と間に法的父子関係は生じませんので,男性(継父)と妻の連れ子との間に法的親子関係を生じさせるためには,継父と妻の連れ子との間で養子縁組をする必要があります。
養子縁組届の提出によって(民法799条,同739条),養子縁組日から,男性(継父)と妻の連れ子との間に法律上の親子関係が発生します(民法809条)。
なお,養子となる者(本件では妻の連れ子)が15歳以上の場合には,その子の意思により,15歳未満の場合には,法定代理人(本件では妻)の承諾によって養子縁組をすることとなります(民法797条1項)。
また,妻の連れ子と養子縁組をするにはその配偶者の同意が必要とされていますので(民法796条),連れ子の年齢に関係なく,配偶者(本件では妻)の同意が必要です。なお,連れ子が未成年者の場合,本来であれば家庭裁判所の許可が必要となるところですが,配偶者の直系卑属の場合は例外的に不要とされますので(民法798条),本件では家裁の許可は必要ありません。
男性(継父)と,妻の連れ子との間で養子縁組をした場合には,両者は法律上の親子となりますので,何らの行為を要することなく両者の間に相続関係が発生しえます。なお,妻の連れ子は,男性(継父)と養子縁組をしたとしても,実父との親子関係は遮断されませんので,妻の連れ後は,実父がいれば,継父と実父のいずれとも法律上の親子関係(相続関係)が生じますので注意が必要です。
妻の連れ子と継父の法的親子関係:妻と離婚した場合
では,継父と連れ子の母が,結婚後に,訳あって離婚することになった場合,継父と連れ子との関係はどうなるのでしょうか。
この点については,既に述べた2つの場合によって結論が異なります。
継父と妻の連れ子が養子縁組をしていない場合
前述のとおり,継父と妻の連れ子とが共同生活を行っていたとしても,養子縁組をしていない場合には,そこに法的親子関係は発生していません。
そこで,法律的には,継父と妻の連れ子とはあくまで他人ですので,継父と連れ子の母との離婚は,継父と連れ子の身分に何らの法的関係性も及ぼしません。当然,元々法的親子関係が存在しないのですから,そこに相続関係も生じません。
継父と妻の連れ子が養子縁組をしていた場合
もっとも,継父と妻の連れ子とが養子縁組をしていた場合には話が異なります。
そこに養親子という法的親子関係があるからです。
この点,前述のとおり,この法的親子関係は,養子縁組届の提出によって生じたものであって,継父と連れ子の母との婚姻によって生じたものではありませんので,継父と連れ子の母との離婚によって法的親子関係が消滅することはありません。
すなわち,継父と連れ子の母が離婚をしたとしても,継父と妻の連れ子とが養子縁組をしていた場合には,法的には両者は親子であり続けます。そのため,両者に相続関係も生じます。
そこで,この場合に,継父と妻の連れ子との法的親子関係を消滅させようとする場合には,離婚手続きとあわせて,継父と妻の連れ子との離縁(協議上の離縁又は裁判上の離縁)の手続きをとる必要があります。
結びに代えて
最近では,昔ほど子供のいる女性と結婚することに抵抗を感じる人は多くなくなったと感じられます。
そのこと自体は決して悪いことではないのでしょう。
もっとも,妻となる人の連れ子を養子縁組をするかどうかは,依然として重大な問題であり続けます。
養子縁組による当然の相続関係発生が,親族間に紛争の火種を作ることにつながる可能性があるからです。
法律上の父子関係を作出しなくても,妻の連れ子に対して財産を譲り渡す手段はありますので,子供のいる女性と結婚をする際に,安易に妻の連れ子と養子縁組をするのは避けるべきなのかもしれません。
子供のいる女性と結婚をされる場合(された場合)には,自身と,妻,そして子供の将来にとってどの手段が一番いいのかをよく考えていただき,人生設計をしていただければ幸いです。
人生設計に迷ったり,専門的な意見をお聞きになりたい場合には,お近くの弁護士に相談されることをお勧めいたします。