必要的移送の時期的制限(民事通常訴訟の第1回口頭弁論後は当事者間に合意があっても移送が制限されます)

民事裁判を提起する際,審理を求める裁判所については,原告側が,管轄権を有する裁判所の中から1つ選んで決定します。
そのため,民事訴訟においては,訴え提起時に原告において選択された裁判所で第1審の審理・判決がなされるのが原則です。

もっとも,第1審が始まった後でも,原告・被告双方の合意により,係属する裁判所が変更することができます。

必要的移送と呼ばれるものです(民事訴訟法19条)。 “必要的移送の時期的制限(民事通常訴訟の第1回口頭弁論後は当事者間に合意があっても移送が制限されます)” の続きを読む

【当事者の協議による時効の完成猶予】猶予合意書の無料ダウンロード可能

令和2年(2020年)改正前民法の下では,時効の「中断」と「停止」についての規定を設けていたものの,当事者間における協議はこれに該当せず,当事者間で協議が進んでいる場合であっても,時効完成が近づいてきた場合,時効中断のために調停申立てなどの法的手続きを取らざるを得ませんでした。

この時効完成直前の訴え提起,調停申立て等の法的手続きの強制性を弱めるため,令和2年(2020年)民法改正により,当事者間において,協議を行う旨の書面による合意があった場合に時効の完成を猶予する旨の条文が新設されたため(改正民法151条),令和2年(2020年)4月1日以降に発生した交通事故は,改正民法に従って処理されることとなりました。

そこで,本稿では,交通事故処理に必要となる協議を行う旨の合意による時効の完成猶予制度の概略と,合意を行う際に締結する必要となる書面の参考書式(無料ダウンロード版)を紹介します。 “【当事者の協議による時効の完成猶予】猶予合意書の無料ダウンロード可能” の続きを読む

別れた妻・夫に連れ去られた子の強制執行による引き渡し履行方法とは

未成年者の子がいる夫婦において,不幸にもその夫婦関係が破たんした場合,子の引渡しを巡って紛争が生じることがあり得ます。

親権者・監護権者となった一方の親が,親権・監護権のこうしにたいする妨害排除請求権の履行強制を主張して,他方の親の元にいる子の引き渡しを求める場合などがその典型例です。 “別れた妻・夫に連れ去られた子の強制執行による引き渡し履行方法とは” の続きを読む

建物収去土地明渡認容判決を得た地主がこれを実現するための強制執行手続きの流れ

自分の土地上に建物を所有している人に対し,その建物を収去して出て行ってもらいたいという請求があります。建物収去・土地明渡請求といわれるものです。

では,この建物収去・土地明渡請求が裁判上認容されたにもかかわらず,債務者(建物所有者)が任意にこれを履行してくれない場合,法律上,どのようにこれを実現するのか説明します。 “建物収去土地明渡認容判決を得た地主がこれを実現するための強制執行手続きの流れ” の続きを読む

代理母に受精卵を提供して産まれた子の法律上・戸籍上の母親は誰か


今日では,生殖医療が発達し,一昔前では考えられなかった出産方法である赤の他人の精子と卵子による受精卵を代理母に着床させて出産してもらうということが技術的に可能となっています。

この方法でのいわゆる代理母による出産は,我が国で明文上禁止されていないため,これまでに何件もの実例が存在し,有名人がこれを選択して話題になったこともあります。

もっとも,代理母についての法律上の問題については,議論が尽くされているとはいい難く,多くの問題点が山積しています。

全てを紹介することは不可能ですので,本稿では,代理母に関する問題点のうち,代理母から産まれてきた子の法律上の母親(戸籍上の母親)が誰かという点のみに絞って検討します。 “代理母に受精卵を提供して産まれた子の法律上・戸籍上の母親は誰か” の続きを読む

車両保険で修理代・全損時価額・レッカー代は填補され,休車損害・代車代・評価損はてん補されない理由とは

車両保険とは,衝突その他の偶発な事故によって,被保険自動車に生じた損害に対して,被保険者に保険金を支払う保険です。

もっとも,車両保険では,生じた物的損害の全てが填補されるわけではありません。

交通事故に遭うと,物的損害として,被害車両自体の損傷等から直接生じる車両損害と,車両の損傷等から派生して生じる派生損害とが発生し得ますが,車両保険では,これらの物的損害のうち,どの範囲までてん補されるのか検討しましょう。 “車両保険で修理代・全損時価額・レッカー代は填補され,休車損害・代車代・評価損はてん補されない理由とは” の続きを読む

交通事故で損傷されたナンバープレートの修理費用は請求できず交換費用は請求出来る理由

交通事故被害に遭ってナンバープレートが損傷された場合に,加害者に対して当該ナンバープレートの修理代金を請求したいと考えるのが一般的かと思いますが,これは認められるのでしょうか。

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高速道路・自動車専用道路における進路変更(車線変更)車両の道路交通法上の注意義務と過失割合について

高速道路上(自動車専用道路を含む)を走行していた車両と,進路変更車両との間で交通事故が発生した場合,その過失割合はどのように決められるのでしょうか。

以下,進路変更車両に,道路交通法上どのような注意義務が課されているかを一般道路での原則と高速道路での修正要素に分けて検討した上で,進路変更車両との間で交通事故が起きた場合の基本的過失割合について説明をします。

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交通事故被害車両の修理をしなくても修理代金相当額を加害者に損害賠償として・保険会社に車両保険として請求できる理由


不幸にも交通事故被害に遭われて車両が損壊された場合,必ずしも,その車両を修理するとは限りません。

新しい車両を購入して事故車両を修理することなく廃車にしたり,損壊が走行に影響がないとしてそのまま乗り続けたりすることがあり得るからです。

では,交通事故被害車両を修理しなかった場合,修理代相当額について,相手方に損害賠償として,又は保険会社に車両保険としてこれを請求できるのでしょうか。 “交通事故被害車両の修理をしなくても修理代金相当額を加害者に損害賠償として・保険会社に車両保険として請求できる理由” の続きを読む