交通事故被害に遭った場合に認定される治療関係費の範囲

交通事故被害に遭った場合に,加害者から賠償を受けられる(交通事故との間で相当因果関係が認められ,認定される)治療関係費は,被害者が,事故に起因して負った傷害のうち,治療の必要性・相当性が認められる範囲のものをいいます。

そのため,必要性・相当性が認められない治療については,これを加害者側が負担することはありません。治療の必要性・相当性は多くの事例で問題となりますが,特に,[低速度衝突(軽微追突)事故でのむち打ち症状]の場合に強く争われる傾向があります。

では,加害者側で負担しなければならない,被害者の必要性・相当性が認められる治療とは,いかなるものをいうのでしょうか。

以下,病院治療費,法律に基づく補助的医療関係費,法律に基づかない医療類似行為関係費の順に検討したいと思います。

 

第1 治療関係費の必要性・相当性

1 病院治療費

医師によるものであるため,特段の事情がない限り,その治療の必要性があり,かつその治療内容が合理的であり相当なものであると認められます。

2 法律に基づく補助的医療関係費

法律に基づく補助的医療としては,柔道整復(柔道整復師法),あん摩マッサージ指圧,鍼灸(あん摩マッサージ指圧師,はり師,きゅう師に関する法律)が存在しています。

この点,法律に基づく補助的医療の場合,①外科手術・薬品投与の禁止等その施術が限られた範囲内でしかできないこと,②診療録の記載・保存義務が課せられていないこと,③外傷による身体内部の損傷状態等を的確に把握するために重要な放射線による撮影,磁気共鳴画像診断装置を用いた検査等をなしえないこと等から医師による治療とは異なる配慮が求められ,治療の必要性・相当性もその配慮に応じて厳格に考えられます。

(1)柔道整復

ア 意義

柔道整復とは,「打撲,捻挫,脱臼および骨折に対して,外科手段,薬品の投与またはその指示をする等の方法によらないで応急的若しくは医療補助的方法によりその回復をはかることを目的として行う施術」であり(長野地裁松本支部昭和47年4月3日・判時682号56頁),手技を中心に人体への物理的力を一定程度時間をかけて繰り返し行うことで,骨・筋・関節等の負傷を整復し,その痛みを除去するものとされています。

イ 施術費用の認定要件

柔道整復師による施術費用を損害として認定するためには,原則として施術を受けることについて医師の指示を要するが,医師の指示がない場合には,①施術の必要性があること,②施術に有効性があること,③施術内容が合理的であること,④施術期間が相当であること,⑤施術費が相当であることの各要件を充足する必要があると解されています(東京地判平成21年6月17日・交民集42巻3号727頁)。

(ア)原則として医師の指示がある

(イ)例外的に医師の指示がないが以下の要件を充足する

① 施術の必要性があること

施術を行うことが必要な身体状況にあったこと

② 施術に有効性があること

施術を行った結果,具体的な症状緩和の効果が認められること(東京高判平成16年8月31日等)

③ 施術内容が合理的であること

施術が受傷内容に照らして,過剰・濃厚に行われていないこと(症状と部位の一致,施術内容が適正)

④ 施術期間が相当であること

⑤ 施術費が相当であること

ウ 整骨院施術費用否定裁判例

① 名古屋地判平成26年9月18日・自保ジャーナル1936号・95頁

② 神戸地判平成27年3月5日・自保ジャーナル1953号・53頁

③ 福岡高判平成27年5月13日・自保ジャーナル1946号・1頁

④ さいたま地裁熊谷支部判平成29年1月25日・自保ジャーナル1997号137頁

(2)あん摩マッサージ指圧,鍼灸

ア 意義

あん摩は主に指先を使用して遠心的に行うもの,マッサージは主として手のひらを使用して求心的に手技を行うもの,指圧はあん摩術の中の押す方法が発展したもの,鍼は人体のある特定の部位(ツボ)に金属製の針を刺して治療を行うもの,灸はツボの上でもぐさを燃やしたりあぶったりして治療をするものとされています。

イ 費用の認定要件

①施術の必要性,②施術に有効性,③施術内容の合理性,④施術期間の相当性,⑤施術費の相当性につき,柔道整復以上の具体的な主張・立証が必要とされます。

3 法律に基づかない医療類似行為関係費

一般に否定的に解される場合が多いといえます。

医師の指示があるなどして治療上有効かつ必要と認められ認定されることもありますが,その場合であってもその額が制限されることが多いと思います。

(1)カイロプラクティック

ア 肯定裁判例

① 東京地判平成7年9月19日・交民集28巻5号1358頁

イ 否定裁判例(多数)

(2)温泉療養費

ア 肯定裁判例

① 東京地判平成7年2月14日・自保ジャーナル1104号2頁

イ 否定裁判例(多数)

① 東京地判平成10年1月20日・交民集31巻1号10頁

② 東京地判平成15年5月8日・交民集36巻3号614頁

(3)その他

 

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