【地主の承諾書】借地上の建物に担保(抵当権)設定する際に銀行等の金融機関がこれを要求する本当の理由

借地上の建物(借地権付建物)を所有している人が,これを担保に供して金融機関から融資を受けようとした場合,当該金融機関から,担保設定についての地主の承諾書を取り付けるよう求められるのが一般的です。

もっとも,法律的には,借地上の建物に担保を設定しようとする場合,担保設定について地主の承諾を得ても,全く意味がありません。

金融機関も,当然にそのことを知っています。金融機関が,地主の承諾書を欲しがるのは,別の意図によるものです。

どういうことか説明します。



第1 借地上の建物に担保設定する際の地主の承諾の法的意味

我が国では,土地と建物が別々の不動産とされており,それぞれ別々に取引をすることが可能です。

この点,土地所有者と,その上に建っている建物の所有者とが別の人である場合,その関係が親族等でなければ,建物については地主から土地を借りて建てている場合がほとんどだと思います。

この場合の建物所有の根拠となる土地使用権は,土地賃借権です。

借地上に建物が建てられている場合,底地所有と建物所有は別人にて行われることとなり,底地は地主(土地賃貸人)が所有し,借地権付建物は借地人(土地賃借人)が所有することとなります。

 

この点,土地と建物とは別人所有なのですから,当然に,担保設定も別々に行うことができます。

そのため,借地人が,自身の所有する借地上の建物のみに担保設定をすることは全く問題がなく,法律上,借地上の建物に担保設定するために地主の承諾は必要ありません。借地借家法20条も,借地上の建物に自由に担保設定ができることを前提として規定されています。

すなわち,借地上の建物(借地権付建物)を所有している人が,これを担保に供して金融機関から融資を受けようとする場合に地主の承諾を取り付けたとしても,そのことに何らの法的意味はないのです

 

地主の承諾があろうがなかろうが,借地上の建物に設定された担保権は,建物所有権の従たる権利として(民法87条),借地権にもその効力が及びます(最判昭和40年5月4日・民集19巻4号811頁)。

土地賃借権は,土地上に建物があり,かつ借地人(土地使用者:借地権付建物所有者)が地代を約定どおり支払っている限り,地主の側から一方的に解約させることができない極めて強い権利ですので,法律的には,借地上の建物(借地権付建物)のみに担保設定をすることには,一定の経済合理性も認められます。

 

第2 金融機関が地主の承諾書を要求する本当の目的

では,なぜ金融機関は地主の承諾書を欲しがるのでしょう.か。

それは,土地賃借権は,土地所有権にはない致命的な欠点があるからです。

前記のとおり,土地賃借権は,土地上に建物があり,かつ借地人(土地使用者:借地権付建物所有者)が地代を約定どおり支払っている限り,地主の側から一方的に解約させることができない極めて強い権利なのですのが,他方で,借地人が地代の支払いを一定期間怠った場合,地主から土地賃貸借契約を解約されてしまうという脆弱性があります。

すなわち,土地賃貸借契約が解約されてしまうと,土地使用権が失われますので,建物所有者は借地上の建物を取り壊して出ていかなければならなくなります。

金融機関からすると,これが怖いのです。

 

金融機関としては,借地人(土地使用者:借地権付建物所有者)が地代の支払いを怠って賃貸借契約を解約された場合,担保に取った借地権付き建物自体が無価値になってしまいますので,最悪の場合に同人所有の借地権付建物を換価して貸付金に充当しようと考えていたものが,一瞬にして吹っ飛んでしまうことになってしまうのですから,たまったもんじゃありません。

そのため,金融機関としては,この危険を回避できなければ危なくて融資ができません。

そこで,この危険をできる限り回避するために,地主の承諾書を要求するのです。

 

どうするかというと,金融機関は,地主の承諾書と題する文書を地主から差し入れさせ,その承諾書にこっそり地主を拘束する法的文言を追記するのです。

具現的には,地主の承諾書に,法的に意味のない担保設定の承諾文言に添えて,「地主は借地人が賃料の支払いを延滞したときは金融機関に通知しなければならない」等の,地主に作為義務を課す文言を入れます。

この文言があることにより,借地人(土地使用者:借地権付建物所有者)が地代の支払いを延滞した場合,地主は,借地契約を解約する前に金融機関に対して,地代が延滞していることを通知しなければならないため,金融機関としては,借地人が延滞した地代について利害関係人として地代を弁済する機会を確保でき,地主から土地賃貸借契約を解約されて借地権付建物が無価値物件となる危険を回避できるのです。

すなわち,金融機関としては,借地人が賃料の支払いを延滞したときに地主に対して通知させる義務を付加的に課すために地主の承諾書を要求するのです。

 

第3 地主に一方的に義務を課すことに対する配慮

ところが,ほとんどの地主の方は,この金融機関の意図をわかっていません。

地主のほとんどは,借地上の建物所有者から泣きつかれ,また迷惑を掛けないからなどと頼み込まれてやむなく承諾書に書面・捺印をすることが多いと思います。

そこで,無条件に地主に対する通知義務を課しては,あまりに地主が気の毒です。

そのため,地主に通知義務を課すのみの承諾書では,地主に特別の法律上の義務を課すと解釈できず,地主の土地賃貸借契約の解除権を制限しないとの裁判例も存在します(東京地判平成11年6月29日・金法1573号67頁)。

 

以上の裁判例の趣旨を踏まえると,金融機関側や借地上の建物所有者側の立場に立った場合であっても,一方的に地主に不利益となるものとならないようにするため,地主から承諾書をもらう場合には,承諾料を支払う等の地主にも一定の利益がある内容とする対策が必要です。

判断に悩まれる場合には,一度弁護士にご相談ください。





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