刑事手続きにおける検証とは(五感の作用によって対象物を確認し証拠化する手続き概略)

刑事手続きにおける「検証」という手続きをご存知ですか。

テレビドラマやマスコミ報道などでよく,捜査機関による現場検証という単語を聞くと思いますが,この現場検証も,いわゆる検証の1つです。

本稿では,なんとなく知っているようでよく知らない検証手続きについて,簡単に解説したいと思います。

刑事事件に言う検証とは

検証の意義

検証とは,裁判所・裁判官・捜査機関が行う,場所又は人について,その存在や状態等を五感の作用により認識する処分をいいます。

簡単にいうと,検証とは,見たり,聞いたり,匂いを嗅いだり,触ったりして,検証対象物が,どのような物で,どういう状態となっているのかを確認し,証拠化する手続きです。

証拠化は,五感の作用によって確認した事項を検証調書という書類に記載することによって行われ,その結果について,さらに図面・写真・模写を添付するなどの方法によって,目で見て明らかになるようにしてなされます。

裁判官による検証

裁判官による,公判期日における証拠物の取調べも検証ですが,通常裁判官による検証とは,公判廷外のものを指すのが一般的です(刑事訴訟法128条)。

裁判官による検証の場合には,当事者に立会権があるものの(刑事訴訟法142条,113条),令状は必要とせず,物の破壊等の必要な処分をすることができるとされています(刑事訴訟法129条)。

そして,検証の結果は,検証調書に記載され,公判における証拠となります(刑事訴訟法321条2項)。

以上のように,検証は,捜査機関のみならず,裁判官によっても行えるのですが,以下,捜査機関による検証について考えていきます。

捜査機関による検証とは

捜査機関による検証とは,捜査機関が行う,場所又は人について,その存在や状態等を互換の作用により認識する強制捜査をいいます。なお,検証とほぼ同様のことを任意処分として行うことができ,任意処分として行う場合には,一般には実況見分と呼ばれます。

ニュースなどを見ていると,事故現場の状況を証拠化するために,ブルーシートで目隠しをして,捜査機関が,中でごそごそやっている場面を見かけることがあると思いますが,あれも検証です。図面化したり,写真を撮影したりして,犯罪現場をリアルに記録しているのです。(マスコミなどでは,これを現場検証と言っていますが,刑事事件実務では,単に検証と呼び,現場検証などと言う単語は通常使いません。)。

捜査機関による検証は,強制処分ですので,逮捕の現場での検証や身体拘束された被疑者の一定の身体検査の場合を除いて(刑事訴訟法220条1項,218条3項),裁判所により発布された検証令状が必要となります(憲法35条,刑事訴訟法218条1項)。

加えて,検証対象物が身体の場合にはさらなる配慮が必要とされます。

身体検査も,身体という検証対象物を五感の作用によって認識する手続きであるため,検証の一種なのですが,身体をいじくり繰り回されるということは,単なる物になされる場合と比べて人権侵害の程度が大きいものといえますので,検証令状ではなく,身体検査令状という特別の令状が必要とされ(刑事訴訟法218条1項後段),また対象者が女性の場合にはさらなる配慮が必要とされています(刑事訴訟法222条,115条)。

捜査機関によって検証がなされた場合,通常,捜査機関によって検証調書が作成され,起訴・不起訴の判断資料,さらには公判での証拠資料とされます。

この点,検証調書は,本来は伝聞調書であるために慎重な吟味が必要なはずですが,事実を記載するものとして,供述調書と比べると,比較的緩やかに証拠として採用されています(刑事訴訟法321条3項)。この点については,実況見分調書も同様に扱われています(最判昭和35年9月8日・刑集14巻11号1437頁)。

なお,余談ですが,民事訴訟手続きにおいても検証手続きはあるのですが,民事訴訟手続きにおいて検証が可能なのは裁判所のみであり,捜査機関を含めた一方当事者によって行うことはできません。

参考にして下さい。



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