初めての刑事裁判傍聴を有意義にするために知っておくべき公判手続きの概略とは

本稿は,初めて刑事裁判手続きを傍聴に行かれる方のために,刑事公判廷で何が行われているのかを事前に認識いただき,意味ある裁判傍聴としていただくために,簡潔に刑事公判手続きの基本的な流れを説明するものです(一応,通常裁判を念頭に置いていますが,裁判員裁判においても基本的な流れは同じです。)。

裁判傍聴の前に,一読いただければと思います。

手続きの大枠

まず,知っておいていただきたいのは,刑事公判で行われるのは,以下の4つの手続きのみということです。

争いのない自白事件であっても,強く争われる否認事件であっても,行われているのはこの4つであり,かつこの順番であることを認識していただくことが,まず大前提となります。

冒頭手続き

裁判の本題に入る前の前提手続きです。

証拠調べ手続き

検察官の主張事実が(有罪・無罪の別,有罪の場合は量刑の程度),公訴事実を証拠により証明できるかどうかを判断するために,証拠を調べる手続きです。

論告・弁論

検察官の意見(論告・求刑)と,弁護人の意見(弁論)を,それぞれ述べる手続きです。

判決

裁判所の判断を言い渡す手続きです。

4つの大きな手続きについてのそれぞれの具体的内容

では,公判では,以上の4つがどのように行われているのでしょうか,それらの具体的な事項も含めて順に見ていきましょう。

冒頭手続きについて

① 人定質問(刑事訴訟規則196条)

被告人が証言台の前に立たされ,住所・氏名・本籍・生年月日・職業の確認をされる手続きです。

人違いを防止する意味で行われます。

② 起訴状朗読(刑事訴訟法291条1項)

検察官が,裁判官に対して,裁判の内容を明らかにするために,検察官が,起訴状に記載された事件の内容を読み上げる手続きです。

一般に,検察官が,「被告人は,平成・・年・・月・・日,・・・・で,・・・・をしたものである。」と述べているものがそれです。

③ 権利告知(刑事訴訟法291条2項)

被告人に対し,刑事公判手続きにおいても,自己に不利益な供述を強要されないこと(憲法38条1項)が保障されていることを告知される手続きです。

一般に,裁判官が,被告人に対して,「これから,検察官が朗読された起訴状記載の公訴事実についての審理を行いますが,審理に先立ち被告人に注意しておきます。被告人には黙秘権があります。従って,被告人は答えたくない質問に対しては答えを拒むことができるし,また,初めから終わりまで黙っていることもできます。もっとも,被告人がこの法廷で述べたことは,被告人に有利・不利を問わず証拠として用いられることがありますので,それを念頭に置いて答えて下さい。」といった趣旨を述べているものがそれです。

④ 罪状認否(刑事訴訟法291条2項後段)

検察官が読み上げた起訴状記載の公訴事実に誤りがあるかどうかについての確認をする手続きです。被告人だけでなく,別途弁護人にも確認されます。

一般に,裁判官が,権利告知に続いて,「それでは,以上を前提にお聞きします。今,検察官が読み上げた公訴事実に誤りはありますか。」と聞くものがそれです。

間違いがなければ,「間違いありません。」と答え(いわゆる「自白事件」です。),違っていれば,「私はやっていません。」などと答えます(いわゆる「否認事件」です。)。

証拠調べ手続きについて

① 冒頭陳述(刑事訴訟法296条)

起訴状で朗読された公訴事実をより具体的にさせるものであり,被告人の経歴,犯行に至る経緯,犯行の状況等を,検察官側の見立てとして具体的に説明する手続きです。なお,冒頭陳述は,被告人側でも行うことができますが,自白事件で被告人側が冒頭陳述をすることはまずないと思います。

一般に,検察官が,「検察官が証拠により立証しようとする事実は,以下のとおりです。被告人は,・・・で生まれて,・・・し,・・・と思い立って・・・」などとストーリー立てて事件の内容を説明していくものがそれです。

② 証拠調べ請求(刑事訴訟法298条)

検察官が,冒頭陳述で述べた事実を証明するために必要な証拠を公判廷に提出するよう申し立てる手続きです(なお,裁判官は,事前に証拠を見ていません。)。

一般に,検察官が,冒頭陳述に続いて,「以上の事実を立証するため,証拠等関係カード記載の各証拠の取り調べを請求いたします。」と述べているのがそれです。

③ 証拠調べ請求に対する求意見

検察官が取調請求をした各証拠について,弁護人が,そのまま取調べをしてもよいのか意見を述べる手続きです。

弁護人が,「・・・は同意,・・・は不同意。」などと,順に回答していく手続きがそれです。

④ 証拠決定(刑事訴訟法297条1項)

弁護人の回答に従い(なお,弁護人が同意した証拠については必要性がないものでない限りそのまま証拠として採用されますが,同意されなかった証拠については別途検察官により対応が検討されます。もっとも,専門的な内容となりますので,本書では割愛します。),裁判所が取り調べる証拠を決定します。

これにより,検察官の手持ち証拠が,初めて裁判官の目に触れることとなるのです。

⑤ 検察官立証(要旨の告知)

検察官が,裁判所に提出された証拠の要約を裁判官に説明する手続きです。

⑥ 弁護側立証

弁護人側からも,検察官が行った前記②~⑤の手続きを行います。

⑦ 証人尋問

証人に対して,検察官・弁護人・裁判官から尋問がなされる手続きです。

⑧ 被告人質問(刑事訴訟法311条)

被告人本人に対して,弁護人・検察官・裁判官から質問がなされる手続きです。

論告・弁論手続きについて

① 論告・求刑(刑事訴訟法293条1項)

検察官が,それまでの審理の内容を踏まえて,どのような判決を求めるかについて意見を述べる手続きです。事実についての意見のみならず,求刑についての意見も述べられます。

② 最終弁論(刑事訴訟法293条1項)

弁護人が,それまでの審理の内容を踏まえて,どのような判決を求めるかについて意見を述べる手続きです。

一般に,弁護人が,「・・という証拠からすると,検察官の主張事実は立証不十分であり無罪である。」とか,「・・事情に鑑みれば,執行猶予付きの判決で十分である。」などと述べているのがそれです。

③ 被告人の意見陳述(刑事訴訟法293条2項)

審理の最後に,被告人に言いたいことを述べてもらうための手続きです。

裁判官が,被告人に対し,「これで審理を終えますが,最後に何か言っておきたいことはありますか。」といった質問をするのがそれです。

判決言渡しについて

前記1項~3項を基に,裁判官の思考過程(理由)とともに,判決が宣告され,第一審が終了します。

最後に

以上が,刑事裁判の基本的な流れです。

争いのない自白事件の場合,冒頭手続き,証拠調べ手続き,論告・弁論を大体40分位で行い,後日判決言い渡しを行うこととなります。

なお,一連の裁判の手続きを通しで見たいのであれば,裁判所の入り口近くにある開廷表を確認し,「新件」と記載されている事件を見に行かれるのがいいと思います。

罪名については,覚せい剤取締法違反事件等は,自白事件が多く,手続きの流れを確認するには最適な場合が多いと思います。

以上の刑事手続きの流れを理解いただいて,刑事公判をいくつか傍聴されれば,刑事裁判手続きというものが何となく理解できるのではないでしょうか。

最近は,中学生の方が傍聴をされていたりするのを目にしたりします。

法曹関係者以外の方にも刑事裁判手続きが身近なものとなれば,法律に関する議論もより深いところでなされると思いますので,より法廷傍聴が活発になされることを期待しております。



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