動産売買先取特権の行使方法とは(商品を売却した取引先が破産・倒産した場合の強制執行方法)

商品を卸していた取引先会社が突然破産した。よくある話です。

この場合,売主からすると,商品を既に納品してしまっているにもかかわらず,代金の回収が難しくなり,非常に困ったことになります。

破産債権は,原則として平等で,破産会社に財産があった場合に按分弁済を受けるにとどまる可能性があるからです。

もっとも,破産会社に対する債権が動産売買代金債権の場合には,別除権として,破産手続き外で優先的に回収できる可能性があります(破産法65条2項)。

法律上,動産売買の先取特権が認められる「第1」及び「第2」の場合です。

簡単に説明すると,以下のとおりです。

動産売買の先取特権の行使(動産競売)

法律上,動産の売買を原因として債権を有するに至った場合,当事者の合意なく法律上当然に,当該動産に対して先取特権を有するとされています(民法311条5号)。

民法第311条
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取り特権を有する。
五  動産の売買

そのため,買主である債務者の下に売却した商品(動産)がいまだ残っている場合には,当該動産を差押えて競売にかけて換価し,そこから代金額の弁済に充てることができ得ます。

動産売買の先取特権の行使(物上代位による債権執行)

もっとも,売買代金の支払いができないということは,債務者は,資金繰りがうまくいっていないのが通常です。

そのため,多くの場合,債務者は購入した商品を第三者に転売してしまっています。

債務者が商品を転売してしまっていれば,法律上,動産競売の手続きはとれません。

もっとも,この場合には,法律上,先取特権の目的動産が売却等により債務者が受けるべき金銭その他の物に変形した場合,その具現化した交換価値(代位物)に対しても先取特権を及ぼすことができるとされています(民法304条1項)。物上代位です。

民法304条1項
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。

そのため,物上代位により,債権者(売主)は,債務者が第三債務者から弁済を受ける前であれば,債務者の第三債務者に対する売買代金債権を差押えて優先弁済を受けることができ得ます。

動産先取特権行使についてのメリット・デメリット

以上のとおり,買主である債務者の下に売却した商品(動産)がいまだ残っている場合には当該動産を差押えて,先取特権の目的動産が売却等により債務者が受けるべき金銭その他の物に変形しかつこれが弁済未了である場合には債務者の第三債務者に対する売買代金債権を差押えて優先弁済を受ける得ることができます。

これらの動産差押え・債権差押えは,法定担保権の実行として,訴訟手続きを経ずに執行手続きができることから,債務者が破産した場合の手続きとしては,簡易・迅速に債権回収が図りうる極めてメリットの大きな手続きと言えます。

もっとも,訴訟手続きを経ずに執行手続きを行うが故に,手続き上の難解性や,事実関係について高い証明を求められるというデメリットもあります。

具体的には,①請求債権及び先取特権の存在(債権者と債務者との間の売買契約の締結),②弁済期の到来,③物上代位の場合には物上代位権の発生(債務者が第三者に対して同一目的物を転売したこと)を文書をもって立証する必要があり,また適切な申立書・取引関係図・書証対照表・証拠説明書等を整理する必要がありますので,一定の困難性を伴うからです。

おわりに

動産売買の先取特権を検討しないといけない場合は,取引先の資力に問題が生じている場合がほとんどですので,通常,時間的余裕がありません。

動産売買の先取特権を行使する可能性があるのであれば,自分で色々調べるよりも,一刻も早く弁護士に相談されることをおすすめいたします。

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