警察官ではない私的誘導員(警備員)の誘導によって交通事故が生じた場合の過失割合について

大型ショッピングセンターや工事現場などでは,その出入口付近に立ち,出入口からの出入り車と道路走行車との交通整理を誘導する誘導員をよく目にします。

この誘導員がいてくれるおかげで,ショッピングセンターや工事現場の出入口付近のスムーズな交通整理が行われ,また交通安全にも役立っています。

他方で,この誘導員は,ショッピングセンターや工事業者が使用している私人にすぎず,これらの者が公道上の交通整理を行うことが可能なのかという疑問も生じます。

本稿では,このような私的誘導員の見落とし等の過失によって交通事故が発生した場合の,関係当事者の過失割合がどのように判断されるのかについて考えてみたいと思います。

第1 私的誘導員による誘導の道路交通法上の位置づけ

1 警察官等の誘導の場合

当然のことですが,道路の通行に際しては,道路交通法の規制に服します。

道路交通法上,警察官等は,手信号・誘導棒等を用いて交通整理ができるとされ,この警察官等の交通整理は,法的拘束力を有することとなりますので(道路交通法6条1項),警察官等の手信号等がある場合には,この交通整理を無視すれば法的責任を問われ,他方でこの手信号等の交通整理に従えば法的責任を問われません。

すなわち,警察官等の手信号等は,道路交通法に優先するのです。

したがって,警察官等の手信号等がある場合には,その誘導下においておきた交通事故については,この手信号等の交通規制に対する違反の程度によって過失割合が決せられることになります。

道路交通法6条1項
警察官又は第百十四条の四第一項に規定する交通巡視員(以下「警察官等」という。)は、手信号その他の信号(以下「手信号等」という。)により交通整理を行なうことができる。この場合において、警察官等は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため特に必要があると認めるときは、信号機の表示する信号にかかわらず、これと異なる意味を表示する手信号等をすることができる。

2 私的誘導員の誘導の場合

ところが,私的誘導員の手信号や誘導については,法的拘束力がありません。

その理由は,シンプルです。

大型ショッピングセンターや工事現場等における私的誘導員に対して,道路交通法上が,一切の権限を付与していないからです。

そのため,車両運転者は,私的誘導員の誘導に従う義務はありませんし,他方で,私的誘導員の誘導があったとしても車両運転者の各種道路交通法上の義務が軽減されることもありません。

したがって,私的誘導員の手信号等の誘導がある場合であっても,その誘導下においておきた交通事故については,通常の道路交通法規制の違反の程度によって過失割合が決せられることになるのです(私的誘導員の手信号等の交通規制は当事者間の過失検討の対象となりません。)。

第2 補足

以上のとおり,私的誘導員の誘導がある場合に,その誘導下に起きた交通事故であっても,原則として,その過失及び責任は,運転者自身のものとして問われますので,私的誘導員の誘導がある場合であっても,運転者自身によるいつも通りの安全確認が必要といえます。

もっとも,私的誘導員の誤誘導によって交通事故が発生した場合において,その誤誘導について警備会社に一定の責任を負わせる裁判例も存在しますので,私的誘導員の誘導下で交通事故に遭われた場合には,一度弁護士に相談されることをおすすめします。



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