家事調停・審判事件における子どもの手続代理人制度とは(親の離婚に子供の意思を反映させるために)

愛し合って結婚した夫婦であっても,訳あって離婚に至る場合もあります。

離婚に向かう夫婦が,いずれもが大きなストレスを受ける状況下にあるのはもちろんですが,実はこのとき,夫婦以上に夫婦間の子どもも大きなストレスを受けています。

家事事件手続きにおいて子どもの意思を尊重するべき理由

離婚の話が進められている際には,通常は,子どもは蚊帳の外におかれますので,子どもは,両親が抱えている問題点について理解できず,何が起きているのか,今後どうなって行くのかが分からないというストレスにさらされます。そのストレスは親の比ではありません。

また,親の離婚,及びそれによって決まった事柄は,子どものその後の人生に大きな影響を与えます。

以上の点から,親の離婚手続きの際に,子どもの意思を反映させていくことも重要といえます。裁判所の手続きに乗っている場合は,なおさらです。

そこで,本稿では,親の離婚手続きの際に子どもの意思を反映させる手段として考えられる,子どもの手続代理人制度について検討していきます(なお,その他の家事手続きについても子どもの手続代理人制度を利用でき得ますが,本稿は離婚に基づく問題に特化して検討します。)。

子どもの意思尊重手段①:家庭裁判所調査官による調査

実は,裁判所における家事事件(調停・審判)を行う際には,子どもの福祉を目的として調査・意見を述べる役割を果たすために,家庭裁判所調査官が存在しています。

家庭裁判所の調査官は,家事事件の解決を目的として,子どもの心情・意向の調査を行うことをその職責としています。

その意味で,家庭裁判所調査官は,子どもの意思を,親の離婚に反映させる1つの重要な役割を果たしているといえます。

もっとも,家庭裁判所調査官は,あくまでも事件処理をその目的として職務を行うものであるため,子どもの意思調査は回数・内容が制限的であり,また子どもの立場に立って両親の間に立って調整的役割を果たすこともできません。

そのため,家庭裁判所調査官に任せるだけでは,子どもの意思尊重という意味では,必ずしも十分とは言い切れません。

子どもの意思尊重手段②:子供の手続代理人制度

そこで,家事事件手続きにおいても,より子供の意思を反映させる目的で家事事件手続法(平成25年1月1日施行)により,子どもの手続代理人制度ができました。

法的根拠

日本が批准した児童の権利に関する条約(いわゆる,子どもの権利条約,平成6年5月22日に効力発生)12条により,日本国内においても,子どもには,自身に影響を及ぼす事項について,年齢・成熟度に従った意見を表明する権利があるとされました。

これを受けて,家事事件手続法においても,未成年者である子がその影響を受ける家事審判手続き・家事調停手続きにおいて,子の陳述聴取,家庭裁判所調査官による調査,その他適切な方法により子の意思の把握に努め,審判に子の年齢・発達に応じた意思の考慮をしなければならないとされました(家事審判法65条,258条1項)。

具体的には,手続き行為能力が認められた事件について,子どもの利害関係参加を認め,その際に,子どもに手続代理人を選任するという制度が出来ています。

子どもの手続代理人制度

子どもの手続き代理人制度とは,①子どもに手続行為能力が認められた家事事件について,②意思能力ある子どもが,③当該事件を申立て,又は当該事件に利害関係参加するなどして手続きに参加する場合に,④弁護士が「子どもの手続代理人となる」制度です。

重要な4要件は,以下のとおりです。

①子どもに手続行為能力が認められた家事事件

②意思能力ある子どもが

ここでいう能力は,一定の年齢・発達の域に達していることをいい,決まった年齢で線が引かれるわけではありません(そのため,5~6歳であっても認められ得ます。)。

③当該事件を申立て又は当該事件に利害関係参加するなどして手続きに参加する場合

利害関係参加の場合は,子どもが自ら参加する任意参加(家事事件手続法42条2項)と,裁判所が職権で子供を参加させる職権参加(家事事件手続法42条3項)とがあります。

④弁護士が子どもの手続代理人となる

手続代理人となる弁護士の選任形態としては,子どもが自ら選任する私選の場合と,裁判長(調停の場合は裁判官)が,申立又は職権で選任する国選(家事手続法23条1項2項)とがあります。

子どもの手続代理人の役割

子どもの手続代理人として選任された代理人は,親のためではなく,その子どもの権利保護のために活動します(もっとも,子どものために,親の利害対立の調整をすることはあり得ます。)。

主な活動内容は,①子どものための主張及び立証活動,②情報提供や相談に乗ることを通じて子どもの手続きに関する意思決定の援助,③子どもの利益に適う合意による解決の促進,④不適切な養育費に対する対応などがあります。

最後に

以上のとおり,手続き行為能力が認められた事件について,子どもの意見を反映させるための子どもに手続代理人という制度が出来たのですが,まだまだ周知が徹底されておらず,それほど利用がなされていないのが現状です。

また,子どもの手続代理人である以上,依頼者が資力の乏しい子供であることから,弁護士報酬の問題も発生します。

補修の点では,私選選任の場合に,片方の親から報酬を受け取ると,子どもの権利保全の観点から問題です。

また,国選選任で,親が民事法律扶助を利用している場合には,その他実費として追加費用の支出を求めることとなるのでしょう。また,日弁連委託援助事業の「子供に対する法律援助」を利用することに考えられます。

いずれにせよ,まだ始まって間もない制度といえますので,今後議論の深まりに従い,より使い勝手のいい制度となって,子どもの意思尊重が進んでいくことが期待されます。

参考にしてください。



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