建物収去土地明渡認容判決を得た地主がこれを実現するための強制執行手続きの流れ

自分の土地上に建物を所有している人に対し,その建物を収去して出て行ってもらいたいという請求があります。建物収去・土地明渡請求といわれるものです。

では,この建物収去・土地明渡請求が裁判上認容されたにもかかわらず,債務者(建物所有者)が任意にこれを履行してくれない場合,法律上,どのようにこれを実現するのか説明します。

建物収去・土地明渡認容判決の効力

建物収去土地明渡を認める判決を得たとしても,それのみをもって債権者(地主)が,建物を取り壊したり,建物の取り壊しを執行官へ求めたりすることはできません。

なぜなら,建物収去土地明渡認容判決を得ても,債務者(建物所有者)に対して建物収去・土地明渡義務を命じるものに過ぎず,債権者(地主)に対して建物収去権原を与えるものではない(建物の名義は債務者のままである)からです。

そのため,建物収去・土地明渡しを認める判決を得たからといって,地主が建物を勝手に壊してしまえば,建造物損壊罪の罪に問われる可能性がありますし,また建物所有者に対して損害賠償義務を負うことにもなりかねません。

建物収去・土地明渡を認める判決を得た後に,建物所有者が任意で建物を撤去しない場合には,地主としては,強制執行の手続きをもって合法的にこれを撤去する必要があります(なお,競売に付して,地主が買い取るという方法もありますが,同方法については本稿での紹介は割愛します。)。

具体的な手続きは,以下のとおりです。

建物収去・土地明渡の実現方法

「執行裁判所」への申立て

(1)建物収去命令申立(代替執行・授権決定を求める申立)

前記のとおり,建物収去・土地明渡判決は,債務者(建物所有者)に対して,建物収去等を義務付ける者に過ぎず,債権者(地主)に建物取壊し権原を付与するものではありません。

そこで,地主が,建物収去・土地明渡認容判決を得てこれを強制的に執行するためには,まずは,執行裁判所に対し,債務者の費用をもって,債務名義の実現(ここでは建物収去・土地明渡)を債務者以外の者にさせることを債権者(地主)に授権する決定を得なければなりません(民事執行法171条1項,民法414条)。

そこで,建物収去土地明渡を認める判決を得た場合には,原告(地主)は,まずは,自らを債権者として,執行裁判所に対して,執行官又は第三者をして,債務者の費用をもって建物収去する命令を得るための申立てを行うこととなります。

なお,この場合の申立の趣旨は,「債権者の申立てを受けた執行官(第三者)は,別紙物件目録記載の建物を債務者の費用で収去することができる。」となります。

(2)代替執行費用支払いの申立

この点,前項の代替執行に要する費用は,予め撤去を行う業者に見積書を作成してもらい,裁判所へその金額を申し出て,債権者(地主)にこの費用を支払うことを命じることが出来ます(民事執行法171条4項)。

この申立ての手数料は不要ですが,見積書記載の各項目について裁判所から釈明があり得ますので,根拠を明らかにした詳細なものであることが必要です(近隣対策費等の拠出根拠不明の名目があればほぼ間違いなく削除指示がなされます。)。

この点,代替費用支払い決定の発令は,授権決定前(実務上は,代替執行の申立と同時)になされる場合のものであるため,授権決定発令後にこの申し立てをすることはできません。授権決定後に行う場合には,執行費用額確定処分の申立てをすることとなります(民事執行法42条4項)。

債務者への送達及び債務者審尋

申立てを認めて授権決定をする場合には,債務者審尋を経る必要があります(民事執行法171条3項)。

実際には,債務者に送達された後,呼び出し又は書面陳述によって債務者の聞き取りがなされます。

授権決定

前記申立てを受けた裁判所は,債務者審尋を経て授権決定(債務者の費用を持って,その作為を債務者以外の者にさせることを授権する決定)をします。

なお,授権決定は,決定と同時に効力が生じますので,執行抗告の申立てがなされても,当然には執行は停止しません。

土地明渡執行申立て・建物収去執行申立て

(1)土地明渡執行申立て

授権決定(建物収去命令)に基づいて建物収去を執行官に求める債権者は,建物収去がなされる前に,債務者の土地占有を排除しておく必要がありますので,まずは,建物収去命令申立てに先だって(実際にはあわせて),土地明渡執行の申立てをする必要があります。

(2)建物収去執行申立て(授権決定に基づく作為の実施)

その上で,建物収去を現実化するために建物収去執行申立をする必要があります。

① 授権決定において,建物収去実施者が執行官と定められた場合には,執行官が建物収去を実施することとなるので(執行官法1条2号「裁判において執行官が取り扱うべきとされたもの」)に該当するため,建物収去を実施すべき場所を管轄する地方裁判所所在の執行官に対して建物収去執行申立てをすることとなります。

② 他方,授権決定において,建物収去実施者が執行官ではない第三者とされた場合,建物収去が執行官の職務とはならないため,建物収去を実施すべき場所を管轄する地方裁判所に対して建物収去執行申立てをすることとなります。

建物収去・土地明渡執行

ここまでくれば,あともう少し。通常は,以下の3回の現地立会いの上で進めます。

① 建物を空家とした上で取壊しの催告

まずは,建物内の動産を取り除き,かつ相手方の占有を解いた上で,建物収去の催告を行います。

この点,建物・土地からの占有者の排除については,立会証人立会いの下,執行官によって建物の鍵を開錠し,執行官が建物内の占有者・動産等を外に強制的に排除した後,手続き終了後に建物を施錠して終了します。なお,明渡しの強制執行については,債権者(地主)の立会いを要求されます。また,このとき排除された動産については,債権者が勝手に処分することはできませんので,通常は倉庫等を手配して,そこに運び込むこととなります。

この手続きには,立会証人,解錠技術者,動産搬出・保管業務を行う執行専門業者の手配が必要となります。立会証人の費用は催告3000円・断行5000円,解錠費用は通常の錠前1個1万円・ピックング防止用錠前2万円,執行専門業者はワンルーム:15~20万円・2K:25~30万円,3DK:35~45万円位が目安です。

② 建物収去(土地明渡)の着手執行

建物から占有者を排除した後は,いよいよ建物の取り壊しです。

授権決定において,建物収去実施者が執行官と定められた場合には,執行官(実際には,執行官から授権された業者)が建物収去を,建物収去実施者が執行官ではない第三者とされた場合は当該第三者が,建物収去に着手をします。

③ 土地明渡執行

前記建物収去については,通常日数を要しますので,前記建物収去期日と同日にすることはできません。

そこで,通常,土地明渡期日については,解体業者による建物取り壊し後,現地で再立会にて行い,ようやく建物収去・土地明渡しの一連の手続きが終わります。

なお,以上の一連の手続きは,とても長い時間と・手間がかかりますので,弁護士に委任すると実費とは別に100万円程度の報酬が発生します。各手続きについての細かい話は,お近くの弁護士にご相談ください。



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