建物所有目的借地権の存続期間が契約締結時期が平成4年8月1日の前後で異なる理由とは

建物所有を目的として締結される借地契約における契約存続期間については,その契約締結時期によって,その契約期間に違いが出ます。

知っている人からするとシンプルな話なのですが,意外と知られていない内容でもあるため,以下,できる限りわかりやすく説明したいと思います。

なお,2020年4月の民法改正では,借地借家法の実質的な改正はありませんので,本稿の内容に基本的な変更はありません。

借地契約に適用される法律(借地法・借地借家法の別)

従前,借地関係を規律するものとして借地法という法律があったのですが,平成4年8月1日に借地借家法が施行されたことにより借地法は廃止されました。

そのため,同日以降に締結された借地契約には借地借家法が適用されることとなります。

もっとも,借地借家法附則により,同日以前に締結された借地契約については,借地借家法施行後もその効力を失わないとされたため,借地法が効力を有した期間に締結された建物所有目的にの賃貸借契約(旧法借地権)は,その契約内容が維持されることとなりました。

以上の結果,日本における建物所有を目的とする借地関係については,平成4年8月1日以降に締結された借地契約は借地借家法の,平成4年7月31日以前に締結された借地契約は借家法の適用を受けるという,複雑な構造となってしまいました。

建物所有目的の借地契約の借地期間は永きにわたるものですので,現時点でも旧法である借地法適用下の借地契約が相当数残存しています。

そのため,借地法が廃止されて数十年が経過した今日においてなお同法の知識が必要となりますので,注意が必要です。

なお,余談ですが,自己借地権に関する規定(借地借家法15条),借地権変更の裁判に関する規定(借地借家法17条),地代に関する紛争についての調停前置主義(民事調停法24条の2)については,例外的に平成4年7月31日以前に設定された借地関係にも適用されます。

建物所有目的の借地権の存続期間

では,建物所有を目的とする賃貸借契約につき,旧法である借地法と新法である借地借家法とのいずれが適用されるかで何が違うのでしょうか。

一番違う点は,その存続期間であり,具体的な違いは,以下のとおりです。

借地借家法における普通借地権の存続期間

現行法である借地借家法では,普通借地権(正当事由条項の適用を受け,更新可能な借地権をいいます。もっとも,借地借家法上は単に借地権とのみ表記されています。)の存続期間は,建物の構造を問わず一律30年とされ,当事者の合意によってこれより長い期間に設定することは可能ですが(借地借家法3条),これより短い期間とすることはできません(借地借家法9条)。

そして,存続期間満了の際には更新可能であり,更新後の存続期間は,最初の更新の場合は20年,その後の更新の場合は10年とされています(借地借家法4条)。なお,ここでも当事者の合意によってこれより長い期間とすることも可能です。

なお,更新に際しては,借地人が更新請求をする必要がありますが,地主が更新拒絶をするためには正当事由が必要となります(借地借家法5条,6条)。

借地法における借地権の存続期間

前記のとおり,現行の借地借家法は,建物の構造により借地権の効力(特に,借地契約の存続期間)に違いを設けていないのですが,旧法である借地法は,建物の構造によって,借地権に違いを設けています。

具体的にいうと,石造・土造・煉瓦造等の堅固な建物を借地上の建物とする場合には,当初の期間は,期限を定めなければ60年(期限を定める場合は30年以上),その後の更新の場合は,30年(期限を定める場合は30年以上)とするとされています(借地法2条1項2項,借地法5条1項2項)。

他方,非堅固な建物を借地上の建物とする場合には,当初の期間は,期限を定めなければ30年(期限を定める場合20年以上),その後の更新の場合は,20年(期限を定める場合は20年以上)とするとされています(借地法2条1項2項,借地法5条1項2項)。

ご不明な点がありましたら,お近くの弁護士にご相談ください。

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