従業員・社員が業務時間中にトラブル(痴漢・傷害・交通事故等)を起こした場合に雇用主・会社がとるべき対内的手続(懲戒処分・退職勧告)と負う対外的責任(損害賠償責任)

従業員を雇用していると,一定の割合で,従業員が業務時間中にトラブルを起こします。また,従業員の数が増えてくると,その数だけトラブルリスクが増えていきます。

この業務時間中の従業員のトラブルとしては,交通事故等の業務に関連するものから,暴行・痴漢等の業務に関連しないものまで色々想定され,また従業員に責任があるもの・ないものを組み合わせると,様々なパターンが考えられます。

本件では,従業員が業務時間中にトラブルを起こして他人に損害を及ぼした場合,雇用主(法人でも自然人でも同じです。)は,対内的にどう処理し,また対外的にどういう責任を負うか検討します。

事実確認の必要性

まず大前提として,従業員がトラブルを起こしたと言われて責められている場合であっても,その責めが事実と異なるいわれのないものであれば,雇用主としては従業員を守ってあげなければなりません。

これは,雇用主としての責任です。

他方,トラブルが従業員の責任によるものであれば,雇用主として,従業員の処分・第三者対応を検討しなければなりません。

そこで,雇用主の対応を決するために,まずは事実確認をする必要があります。

事実確認の方法としては,通常は当該従業員からの直接の聞き取りから始まります。

もっとも,当該従業員が逮捕・勾留により身体拘束をされている場合には,最大23日間は雇用主による事実確認ができない状況が生じ得ますので,弁護士に依頼して接見に行かせて事実確認が必要となります。

事実確認の結果,従業員が起したと責められているトラブルが従業員の責めによるものであることが判明した場合には,雇用主としては,当該従業員に対する処分という対内的な検討とともに,従業員が起こしたトラブルについて雇用主も第三者に対する賠償責任を負うかという対外的な検討する必要が生じます。

そこで,以下,対内的処分と対外的責任の概略を順に説明します。

対内的処分の有無

まず,対内的処分について検討します。

対内的処分としては,従業員が起こしたトラブルが,就業規則等に定められた懲戒事由に該当するかを検討し,懲戒処分を科すか,または科すとしてどの処分とするかを検討することになります。

懲戒処分は,従業員が行った行為により雇用主に与えた業務上の支障に,処分による社会的影響力も勘案して行わうことが通常です。

処分をしなかった・処分が軽すぎたとして被害者側や世論の非難を浴びる可能性がある一方で,必要のない処分をした・処分が重すぎたとして従業員から裁判を起こされる可能性もあるからです。

法律的に難しい問題がでてくることが多い場合といえますので,懲戒処分を検討する場合には,まずは顧問弁護士に相談することをおすすめします。

なお,有罪判決が確定するまでは無罪者として扱われるという無罪推定の原則から,従業員が起こした事件が刑事事件化している場合には,有罪判決が確定するなどにより刑事事件が終了するまでは懲戒処分を科すべきではありません。注意して下さい。

対外的な責任

次に,対内的責任について検討します。

対外的責任については,従業員と雇用主とは,法律上,別の人格ですので,従業員の行為によって契約関係にない他人に損害を与えた場合であっても,雇用主はその損害賠償責任を負わないのが大原則です(民法709条)。

もっとも,①使用関係にあるものが,②雇用主の事業執行に関して,③第三者に損害を与えた場合(不法行為)で,④雇用主が従業員の選任及びその事業の監督について相当の注意をし,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき場合でないときは,例外的に雇用主も損害賠償責任を負うとされています(使用者責任,民法715条)。

この使用者責任を認める根拠は,従業員の業務行為によって利益を得ている雇用主は,従業員の行為によって他人に加えた損害もまた賠償すべきという報償責任に由来します。

報償責任であることから,雇用主が責任を負うためには,従業員の行為が雇用主の事業執行に関するものであることを要し,雇用主に利益がない従業員のプライベート状の行状については,雇用主は責任を負わないという帰結になります。

以上,対外的責任についてまとめると,業務時間中であっても,業務に関連しない純粋なプライベートの行状であれば,雇用主が責任をおうことはありません。

まとめ

以上のとおり,従業員が業務時間中にトラブルを起こした場合には,対内的には,従業員が起こしたトラブルが,就業規則等に定められた懲戒事由に該当するかを検討し,懲戒処分を科すか,または科すとしてどの処分とするかを検討し,また対外的には,使用者責任を負うか否かによって雇用主も賠償義務を負うかを検討することとなります。



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