民事訴訟における控訴提起のやり方とは(控訴状の控訴の趣旨の書き方から控訴理由書の控訴審への提出期限まで)

日本の裁判制度は三審制を採用していますので,民事裁判で判決言い渡しを受けた場合,判決に不服があれば,上級審に不服申し立てができます。

第一審の終局判決に対して,その事実認定又は法律判断を不当として不服を申し立てることを控訴,控訴審の終局判決に対して,その法令違反を理由として不服申し立てをすることを上告といい,控訴と上告をあわせて上訴といいます。

本稿では,民事裁判における上訴のうち,控訴提起に要する提出書面について説明したいと思います。

控訴について


控訴とは,前記のとおり,第一審の終局判決に対して,その事実認定又は法律判断を不服として,不服申し立てをする手続きです。

民事裁判における控訴審は,第2の事実審であり,原判決の事実認定と法律判断のいずれも審理対象となります。なお,上告審は法律審ですので,上告審の審理対象は法律問題に限定されており,上告審で事実認定を争うことは出来ません。

第一審が簡易裁判所である場合には地方裁判所が,第一審が地方裁判所であるときと高等裁判所がそれぞれ控訴裁判所となります。

控訴の方法(控訴状の提出)

控訴の提起は,判決書又はこれに代わる調書の送達を受けた日の翌日から2週間以内に(民訴法285条),控訴状を第一審裁判所に提出して行います(民訴法286条1項)。なお,末日が土曜・日曜・祝日に当たる場合にはその翌日が満了日とされます(民訴法95条1項3項,民法140条,141条)。

控訴状には,当事者及び法定代理人,第一審判決の表示,その判決に対して控訴をする旨を記載しなければならないとされています(民訴法286条2項)。

この点,不服申し立ての限度は,控訴状の必要的記載事項とはされていませんが,審理の便宜上記載されることが多く,控訴状に攻撃防御方法が記載されたときは準備書面を兼ねるものとされています(民訴規則175条)。

また,控訴審での審理の集約化・争点中心審理のため,控訴状に第一審判決の取り消し又は変更を求める事由(控訴理由)の具体的な記載が望ましいとされています(民訴規則182条)。

もっとも,控訴状を受けった後,2週間以内に,原判決内容を詳細に分析し,詳細な控訴理由を記載して控訴状を作成することは時間的に困難ですので,控訴状に,控訴の趣旨を記載し,控訴の理由については,「追って控訴理由書を提出する。」として,控訴理由の提出を引き延ばすことが通常です。

控訴の趣旨の記載方法としては,取消方式の方法と,変更方式の方法があり,それぞれ以下のとおりですので,参考にしてください。なお,私が弁護士になりたてのころは,控訴の趣旨は,原則として取消方式で書くものだと教えられた記憶があるのですが,最近では裁判所から変更方式での記載指示があったりしますので,臨機応変に対応していただければと思います。

取消方式の控訴の趣旨 変更方式の控訴の趣旨
全部棄却で原告控訴の場合 1 原判決を取り消す

2 被控訴人は,控訴人に対し,金・・円を支払え

(変更方式は用いない)
全部認容で被告控訴の場合 1 原判決を取り消す

2 被控訴人の請求を棄却する

(変更方式は用いない)
一部認容で原告控訴の場合 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す

2 被控訴人は,控訴人に対し,金・・円を支払え

1 原判決を次のとおり変更する

2 被控訴人は,控訴人に対し,金・・円を支払え

一部認容で被告控訴の場合 1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す

2 上記部分につき,被控訴人の請求を棄却する

(変更方式は用いない)
原告複数で全部棄却,原告の一部のみ控訴の場合 1 原判決中,控訴人・・に関する部分を取り消す

2 被控訴人は,控訴人・・に対し,金・・円を支払え

(変更方式は用いない)
原告複数で一部認容,原告の一部のみ控訴の場合 1 原判決中,控訴人・・に関する敗訴部分を取り消す

2 上記部分につき,被控訴人は,控訴人・・に対し,金・・円を支払え

1 原判決中,控訴人・・に関する部分を次のとおり変更する

2 被控訴人は,控訴人・・に対し,金・・円を支払え

訴訟物の異なる複数の請求がいずれも一部認容で,1つの請求について原告控訴の場合 1 原判決中,・・に基づく請求に関する控訴人敗訴部分を取り消す

2 上記部分につき,被控訴人は,控訴人に対し,金・・円を支払え

1 原判決中,・・に基づく請求に関する部分を次のとおり変更する

2 被控訴人は,控訴人に対し,金・・円を支払え

本訴請求認容,反訴請求棄却で,被告控訴の場合 1 原判決を取り消す

2 被控訴人の本訴請求を棄却する

3 被控訴人は,控訴人に対し,金・・を支払え

(変更方式は用いない)

控訴理由書の提出


控訴状に追って控訴状を提出すると記載した場合には,控訴の提起から50日以内に,控訴の理由を記載した書面(控訴理由書)を,控訴裁判所に提出する必要があります(民訴規則182条)。

控訴理由書提出期限は,控訴状の提出期限とは異なり,訓示規定にとどまると解されていますので,控訴理由書を期間内に提出できなかったとしても,それを理由として控訴が不適法却下されるわけではありませんができる限り,この間の提出が望ましいといえます(なお,上告審の場合は,50日以内に上告理由書を提出できなければ,上告が不適法として却下されますので,注意しましょう。)。

控訴理由書の記載事項としては,民事訴訟における控訴審は,第1審で収集した訴訟資料を前提として,控訴審で提出された訴訟資料をあわせて審理を行うという続審制をとっていますので,控訴理由につき原判決中の異議のない部分については,これを適示する必要がありません。

そこで,控訴理由書には,通常,異議のある判決の認定内容,なぜそこに異議があるのか,実際にはどういう認定をすべきだったのか,当該認定をした場合には法的効果はどうなるのかに限って記載すべきといえます。

以上,控訴提起に要する提出書面のあらましでした。



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