交通事故を起こした運転者に加えてその雇用主・勤務先会社も責任を負う場合

交通事故を起こしてしまった加害車両運転者が,被害者に対して,被害者が被った損害についての損害賠償義務を負うことは当然です(民法709条)。

ところが,加害車両運転者に加えて,加害車両運転者の雇用主・勤務先会社も賠償義務を負う場合があります。

以下,雇用主・勤務先会社が賠償義務を負う場合について検討したいと思います。

加害車両運転者が法人等の「被用者・従業員」である場合

一般に,従業員を雇用して営業活動を行っている使用者(雇用主・勤務先会社)は,当該従業員によって経済活動を行って利益を得ていることから,当該従業員によって被った損害もまたこれを負担すべきと考えられています(報償責任)。

その反射的効果として,従業員が事業の執行中に他人に損害を加えた場合,使用者又はそれに代わる代理監督者もまた,当該従業員と連帯して,当該他人(被害者)に対して,その損害賠償責任を負担するとされています(使用者責任・民法715条)。

そのため,交通事故の被害に遭われた際,加害車両運転者はわからない又は同人の資力が乏しそうな場合で,同人の使用者がわかる場合には(ひき逃げされたが相手方運転車両には会社名が書かれていて会社がわかる場合や,相手方運転手本人が無資力の場合等),当該使用者に請求することを考えてみるべきです。

なお,使用者が,使用者責任を負うのは,被用者が使用者の事業の執行中に事故を起こしたものである必要がありますが,直接に雇用関係にある場合だけに限らず,実質的な指揮・監督関係にある場合(親会社と子会社,元請と下請等)にも,雇用関係になくとも含まれるとされています(最判昭和37年12月14日・民集16巻12号2368頁)。

また,タレントである弟子の運転の場合に師匠の責任を認定した事例(大阪地判平成13年9月25日・自保ジャーナル1428号18頁)があったりもしますので,結構広い概念であるといえます。

他方,マイカーが純粋に通勤目的にのみ利用されている限りは,使用者責任は発生しないとされていますので,注意が必要です(最判昭和52年9月22日・交民集10巻5号1237頁)。

加害車両運転者が法人等の「代表者」である場合

加害車両運転者が,法人の代表者である場合も同様の趣旨から,当該法人もまた責任を負う場合があります。なお,根拠については,当該法人の種類によって以下のとおり準拠法が異なりますので,注意が必要です。

①加害者が株式会社代表者の場合:会社法350条

②加害者が持分会社代表者の場合:会社法600条

③加害者が一般社団法人の理事の場合:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条

④加害者が一般財団法人の理事の場合:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律197条,78条

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