路上横臥者との交通事故(道路上で寝ている人をはねた場合)の過失割合

酒酔いや急病等を原因として路上に寝転がっている人を路上横臥者といいますが,道路走行車と路上横臥者との間で交通事故が発生した場合,その過失割合は,どのように考えるのでしょうか。

【参考:道路横断者との交通事故】

道路横臥者との交通事故の際の考え方

道路横臥者は,道路交通法上では,歩行者として扱われます。

そして,車両運転者には,前方を注視しながら(一般的注意義務),法定最高速度を超えない速度内の(道路交通法22条1項)他車等を妨害しない安全な速度にて(道路交通法70条の規定の安全運転義務の一適用場面),前を走行する車両との車間距離を保持しながら(道路交通法26条)走行しなければならないとされています。

そのため,道路横臥者と衝突した車両運転者には,歩行者との衝突を基本として,通常,大きな注意義務違反が認められます。

他方,車道(道路)は,あくまでも車両が走行するためのものであり,人が道路上で横臥することは認められていません。

また,車両運転者に,道路上に人が横臥していることまで予想して車両を走行させる義務があると言い切れるか問題があります。

そのため,道路横臥者との衝突事故が発生した場合に,車両運転者に,通常の歩行者との衝突の場合と同程度の過失割合を認めるのは適切ではありません。

この点については,多くの裁判例では,車両走行者に一定の注意義務違反を認めつつ,道路横臥者にも,通常の歩行者と比べ厳しい注意義務違反を認めています。

具体的に裁判例を見てみると,道路横臥者に30%【昼間の場合】~50%【夜間の場合】程度の過失をみることが多いように思われます。

道路横臥者と衝突事故におけるの基本的過失割合

昼間の場合

昼間の場合,道路走行車両運転者から,路上横臥者を発見することは,比較的容易と考えられますので,道路横臥者と比べて,道路走行車両に大きな過失を認定します。

①道路走行車(四輪車・単車)70%:道路横臥者30%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【47図】参照

夜間の場合

夜間の場合,道路走行車両運転者から,路上横臥者を発見することは,昼間に比べて困難ですので,その分道路横臥者の過失を加重して認定します。

①道路走行車(四輪車・単車)50%:道路横臥者50%

別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【48図】参照

道路横臥者と衝突事故における裁判例

以下を前提に,道路横臥者との衝突事故についての裁判例をいくつか紹介しますので,参考にしてください。

道路横臥者の過失50%の事例

① 仙台地判平成30年9月6日・自保ジャーナル2040号158頁

深夜に片側2車線道路の第1車線中央に座っていたところ,交通事故に遭って死亡した66歳男性の過失を50%と認定した。

道路横臥者の過失40%の事例

① 東京地判平成24年3月9日・自保ジャーナル1872号

自動二輪車運転者が,側壁に衝突して路上に転倒中,乗用車に礫過されて死亡した事案につき,他の車両は転倒者に気が付いて進路変更をしているが,被告は,これを見落として同人を礫過していることから前方不注視による過失を認定し,他方,横臥者にも何らかの過失を認定し,同人に40%の過失を認めた。

② 大阪地判平成28年10月26日・自保ジャーナル1989号174頁

深夜,自転車搭乗者が転倒して路上横臥中,タクシーに礫過されて死亡した事案につき,自動車には,全く減速することなく横臥者及び自転車に衝突しており前方不注視の程度は著しい一方で,横臥者にも,深夜の位路上において横臥していれば道路を走行中の車両運転者による発見が遅れるなどして衝突する可能性があることは容易に想定可能であり,転倒後即座に歩道に避難することによって事後の事故を回避することは可能であったにもかかわらず,アルコールの影響もあり少なくとも1分以上道路上に横臥していたのであるから同人の過失も小さいといえないとし,横臥者に40%の過失を認定した。

道路横臥者の過失35%の事例

① 横浜地判平成25年5月27日・自保ジャーナル1906号

深夜,時速40km制限の片側1車線道路に横臥していた男性をタクシーが礫過死させた事案につき,横臥者が酒に酔った状態で横臥しており,同人の落ち度が否定できないとして,横臥者に35%の過失を認めた。

道路横臥者の過失30%の事例

① 東京地判平成26年3月27日・自保ジャーナル1924号

深夜の国道上で横臥者が自動車に礫過された事案につき,横臥者が自殺以外の何らかの事情により転倒・横臥した可能性は否定できず,自動車には30km以上の速度超過による前方不注視があるとして横臥者3割,自動車7割の過失認定をした。



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