逮捕されてから起訴・不起訴判断がなされるまでの身体拘束期間が23日間を超えない理由

刑事訴訟手続きは,①捜査の端緒→②捜査→③公訴提起→④公判手続き→⑤判決(上訴)→⑥刑の執行,という一連の流れで行われます。

本稿では,このうち,捜査機関において犯罪を犯したと疑われる者が捜査機関から捜査(②)に必要として身体拘束を受ける場合(逮捕及び起訴前勾留)の期間制限についての説明をしたいと思います。なお,被疑者を拘束して捜査が行われる場合と,被疑者を拘束しないで捜査が行われる場合があります(被疑者を拘束しない場合は,在宅事件と呼ばれます。)が,本稿では身体拘束がある場合について検討します。

この点,結論からいうと,被疑者の身体拘束は,被疑者に重大な人権の制約を強いるものであるため,1つの事件について,逮捕から起訴・不起訴の判断がなされるまでの身体拘束期間は,最長で23日間を超えることは絶対にありません。

以下,前記結論に至る理由を説明します。

逮捕

逮捕とは

逮捕とは,短期の身柄拘束処分をいい,通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の3種類存在しています。

逮捕の種類

①通常逮捕

通常逮捕とは,検察官,検察事務官又は司法警察職員が,事前に裁判官が逮捕の逮捕の理由及び逮捕の必要性を判断して発する令状をもとに,被疑者の身体拘束をするものです(刑事訴訟法199条)。

通常逮捕をすると,被疑者に対して,身体拘束という重大な人権制約を行うこととなるため,職業裁判官によって,逮捕の理由(被害者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由)と,逮捕の必要性(被疑者が逃亡又は罪証隠滅をするおそれ)があると認められなければ,令状発布がなされず,通常逮捕をすることができません。

これを令状主義といいます。

②現行犯逮捕

現行犯逮捕とは,現行犯人(現に罪を行い,又は現に罪を行い終わった者)の身体拘束をするものであり,逮捕状が不要であり,かつ逮捕者は捜査機関でなく私人であっても構わないとされています(刑事訴訟法212条,同213条)。

③緊急逮捕

緊急逮捕とは,検察官,検察事務官又は司法警察職員が,死刑,無期,長期3年以上の懲役又は禁固にあたる重大犯罪であると疑うに足りる十分な理由があり,かつ急速を要する場合に被疑者の身体拘束をする者であり,事前の逮捕状は不要とされています(刑事訴訟法210条,ただし,事後の逮捕状は必要とされています。)。

逮捕による身体拘束の期間制限

前記のいずれかの逮捕により,司法警察員が被疑者を通常逮捕した又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは,留置の必要があると思料するときは,48時間以内に書類及び証拠物とともに,被疑者の身柄を検察官に送致する手続きをしなければならならず,検察官送致をしないときは直ちに被疑者を釈放しなければならないとされています(刑事訴訟法203条1項,3項)。

余談ですが,この警察の手持ち時間を業界では,「ヨンパチ」と言っています。

そして,司法警察員から被疑者の身柄を受け取った検察官は,留置の必要がない時は直ちにこれを釈放し,留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に対して,被疑者の勾留を請求しなければならないとされています(刑事訴訟法205条1項)。

すなわち,逮捕については,警察段階で48時間,検察段階で24時間のあわせて72時間(3日間)の身体拘束ができることになり,この72時間を超えた逮捕をすることは法律上許されていません。

72時間を超える身体拘束をするためには,逮捕ではなく,以下の起訴前勾留が必要となります。

起訴前勾留

勾留(起訴前勾留)とは

勾留(起訴前勾留)とは,逮捕に続く身柄拘束処分をいいます。

勾留をするに際しては,逮捕による短期間の身体拘束を先行させる必要がありますので,いきなり勾留から行うことはできません(刑事訴訟法207条1項,逮捕前置主義)。

逮捕を先行させる理由は,逮捕の場合にも逮捕状発行に際して裁判官のチェックが入りますので,勾留による裁判官のチェックの前に,より人権侵害の程度が少ない短期間の身体拘束を先行させ,10日間もの身体拘束が行われる勾留状発行に際しての裁判官に二度目のチェックをさせるためです。

勾留請求

検察官より勾留請求がなされた場合,裁判所は,被疑者が住所不定の場合・罪証隠滅のおそれがある場合・逃亡の恐れがある場合のいずれかに該当すると判断した場合,10日間以内期間を決めて,勾留状を発することとなります(刑事訴訟法207条,同208条1項,60条)。

勾留延長請求

前項の勾留後,裁判所は,やむを得ない事情があると認められるときは,さらに10日間の勾留延長ができます(刑事訴訟法208条2項)。

起訴前勾留による身体拘束の期間制限

以上より,起訴前勾留については,最初の勾留で10日間,勾留延長でさらに10日間のあわせて20日間の身体拘束ができることになり,この20日間を超えた起訴前勾留をすることは法律上許されていません。

この20日間を超える身体拘束をするためには,被疑者を起訴した上で,起訴後勾留が必要となります。

なお,起訴後勾留については,判決が出るまで身体拘束がされます。

身体拘束期間まとめ

以上のとおり,捜査機関に逮捕された場合には,起訴・不起訴の判断がなされるまでの身体拘束期間は,最長,逮捕で3日間(72時間),勾留で20日間の合計23日間を超えることは絶対にありません。

この23日間は,被疑者にとっては長くつらい期間ですが,捜査機関にとってはこの間に起訴・不起訴の判断を強いられる,短く追い詰められた期間といえます。

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