重過失ある交通事故の場合に任意保険(自動車保険)金が支払免責となるもの・ならないもの

自動車保険(任意保険)は,基本的には相手方に対する賠償責任保険ですが,特約を付保することによって,保険契約者(被保険者)自身の損害を填補することもできるようになる複合保険です。

この自動車保険(任意保険)については,約款上,被保険者側に故意又は重過失がある場合,保険金の支払いをしない(支払免責となる)と規定されている保険金があります。

以下,この重過失による支払免責を検討するため,重過失とは何か,被保険者に重過失がある場合に重過失免責となる保険・ならない保険について,順に見ていきたいと思います。

重過失とは

重過失の定義

明確な定義は存在していないのですが,自動車保険の支払免責事由たる重過失とは,一般に,通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも,わずかな注意さえしさえすればたやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに,漫然とこれを見過ごしたような,ほとんど故意に近い著しい注意義務の欠如をいうと考えられています。

砕けて言うと,「危ないのわかるやん,ありえへん危険な運転やん」ていう程度の過失です。

重過失認定裁判例

① 東京高判平成28年12月14日・自保ジャーナル1999号171頁

少なくとも500mは居眠り運転をしていた事案について重過失認定をした。

② 東京地判平成29年12月1日・自保ジャーナル2018号162頁

スピードリミッターを外すなどの改造をして時速216kmで走行していた車両の自損事故について重過失認定した。

③ 東京地判平成30年1月17日・自保ジャーナル2019号155頁

泥酔の上一定時間交差点内に座っていた事案につき,当該泥酔者に重過失認定をした。

被保険者に重過失ある場合に支払免責となる(保険金が支払われない)任意保険金

被保険者に重過失がある場合,被保険者自身に支払われるべき保険金は支払免責となります

故意により事故発生させたとの評価に近いような危険な運転をした者まで保護する必要がないからです。

具体的には,被保険者に重過失があった場合,以下の保険は免責となります(他にもありますが,主要なものを例示列挙しておきます。)。

① 人身傷害補償保険金

② 搭乗者傷害補償保険金

③ 無保険者傷害保険金

④ 車両保険金

被保険者に重過失があたっても支払免責とならない(保険金が支払われる)任意保険金

他方で,被保険者に重過失がある場合であっても,相手方に対して支払われるべき保険金は支払免責とはなりません

相手方からすると,加害車両の運転者に重過失があろうがなかろうが被害の程度は変わりませんので,この場合に支払免責としてしまうとあまりに被害者に酷だからです。

具体的には,被保険者に重過失があっても,以下の保険は支払免責とはなりません。

① 対人賠償保険金

② 対物賠償保険金

結びにかえて

重過失免責事由にあたるかどうかは,その判断が難しいことが多い上,その認定いかんによって,保険金の支払いの有無が決せられますので,被保険者と保険会社とで強く争われることが多い争点です。

判断に迷われたら,お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。

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