ストライダーは道路交通法上は自転車・軽車両・歩行者のどれに該当するのか

最近,街中でストライダーに乗車している子供をよく目にします。

このストライダーは,基本的には,公園や広場などで使用されることが前提となっているはずなのですが,街中で乗られているということは,ストライダーに乗っている子供が交通事故に遭う可能性も出てきます。

では,このストライダーが道路上で交通事故に遭った場合,どういう基準で過失割合を決するのでしょうか。現在交通事故損害賠償実務において当たり前のように規範として使用されている別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)にストライダーの区分がなされていないため問題となります。

ストライダーとは

ストライダー(STRIDER)とは,子どもたちのバランス感覚や体幹も鍛えるためにも用いられるランニングバイクの一種です。

ペダルのない自転車のような形状をしており,自転車の練習用に用いられることも多い幼児用の乗用玩具です。

ペダルがないために足で地面を蹴って推進力を得る構造となっている上,握力の弱い幼児が使用することを前提としているためにブレーキレバーがなくブレーキは足で地面を踏み込む方法によって停止するように造られています(自重が増すブレーキ装置はあえて付けられていません。)。

このように,一見すると自転車に似た見た目となっているストライダーですが,構造的には自転車と全く異なるものとなっています。

基本的には,公園や広場などで使用されることが前提となっているはずなのですが,最近では街中でも子供が乗っているのを目にします。

街中で乗られているということは,ストライダーに乗っている子供が交通事故に遭う可能性も出てきます。

そこで,交通事故に遭った場合の過失割合を算定する前提として,ストライダーが道路交通法上どのような位置づけとなっているのかについて検討したいと思います。

ストライダーの道路交通法上の扱い

ストライダーは,原動機・ブレーキペダル等がない二輪車という,ある意味特殊な構造をしています。

そこで,このストライダーが道路交通法上ではどのように扱われるかが問題となりえますが,結論からいうと,「歩行者」に該当します。

道路交通法上の「自転車」ではない

まず,二輪車という構造からストライダーが自転車と言えるかについて検討します。

道路交通法上,自転車とは,ペダル又はハンド・クランクを用い,かつ,人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて,身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて,内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいうとされています(道路交通法2条1項11号の2)。

この点,ストライダーは,ペダル(足での回転によって推進させる装置)又はハンド・クランク(手動の往復運動を回転運動に変えて推進させる装置)を用いた推進力によって進むものではなく,足で地面を蹴って進むものであるため,この定義に該当しません。

したがって,ストライダーは,道路交通法上の自転車に該当しません。

道路交通法上の「軽車両」ではない

そこで,次に,ストライダーが自転車以外の軽車両と言えるかについて検討します。

道路交通法上,軽車両とは,①自転車,荷車その他人若しくは動物の力により,又は他の車両に牽けん引され,かつ,レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。),②原動機を用い,かつ,レール又は架線によらないで運転する車であつて,車体の大きさ及び構造を勘案して①に準ずるものとして内閣府令で定めるもののいずれかに該当し,かつ,身体障害者用の車椅子及び歩行補助車等以外のものをいうとされています(道路交通法2条1項11号)。

この点,ストライダーは,前記①及び②の要件は充足するのですが,歩行補助車等(小児用の車を含む,道路交通法2条9号)に含まれることから,該当除外となります。

したがって,ストライダーは,道路交通法上の軽車両に該当しません。

道路交通法上の「歩行者」とする

以上,ストライダーは,道路交通法上,自転車にも軽車両にも該当せず,歩行者に該当することとなります(道路交通法2条3項1号)。

したがって,過失割合を検討するために別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)を利用する場合には,ストライダーは歩行者として扱って運用することとなります。

参考にしてください。

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