道路上(一般道)を直進走行していた車両が,前の車両に追突する交通事故が発生した場合,追突車両と被追突車両との間の過失割合はどのように決められるのでしょうか。
以下,一般道路を走行する車両が,道路交通法上どのような注意義務が課されているかと追突事故が起きた場合の基本的過失割合について説明をします。
なお,本稿は,一般道における追突事故についてのものであり,高速道路・自動車専用道路上での追突事故については,以下の記事を参考にしてください。
①高速道路・自動車専用道路における「前方を走行中の車両」との追突事故の過失割合(道路交通法上の注意義務も)
②高速道路・自動車専用道路における「前方に駐停車中の車両」との追突事故の過失割合(道路交通法上の注意義務も)
【目次(タップ可)】
車両を運転して一般道路を直進走行する際の道路交通法上の注意義務
一般道路を走行する車両は,道路の左側を(道路交通法18条1項),前方を注視しながら(一般的注意義務),法定最高速度を超えない速度内の(道路交通法22条1項)他車等を妨害しない安全な速度にて(道路交通法70条の規定の安全運転義務の一適用場面),前を走行する車両との車間距離を保持しながら(道路交通法26条)走行しなければならないとされています。
道路交通法18条1項 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。 道路交通法22条1項 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。 道路交通法26条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
なお,これの他にも,最低速度の制限がある場合は,その範囲内の速度で走行しなければならない最低速度義務(道路交通法23条),他の車両に追いつかれたときは,その追いついた車両が当該車両の追い越しを終えるまで,速度を増してはならない加速禁止義務(道路交通法27条1項),道路の曲がり角付近,上り坂の頂上付近,又は勾配の急な下り坂をでの徐行義務(道路交通法42条2項),車両等の運転者は,危険を防止するためやむを得ない場合を除き,その車両等を急に停止させ,又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない急ブレーキの禁止義務(道路交通法24条),信号遵守義務(道路交通法7条)等の各義務も存在しています。
一般道で追突事故が遭った場合の追突車両と被追突車両の基本的過失割合
原則(被追突車両に注意義務違反がない場合)
追突事故が発生した場合,通常,被追突車両には,後方から走行してくる車両から追突されることについての予見や回避が不可能ですので,基本的には,追突車両の前方不注視や車間距離不保持という一方的過失による事故であるとされます。
(1)被追突車両が走行中又は停止中の場合
①追突車両100%:被追突車両0%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)p293参照
(2)被追突車両が駐車中の場合
①追突車両(四輪車)100%:被追突車両(駐車中)0%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【157図】参照
②追突車両(単車)100%:被追突車両(駐車中)0%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【234図】参照
例外(被追突車両が理由のない急ブレーキをかけた場合)
もっとも,道路交通法24条は,道路を走行する車両は,危険を防止するためやむを得ない場合を除き,急ブレーキをかけてはならないとしていますので,被追突車両が,理由のない急ブレーキをかけたことにより追突事故が発生した場合には,被追突車両にも一定の過失が生じます。
①追突車両(四輪車)70%:被追突車両(四輪車)30%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【154図】参照
②追突車両(単車)60%:被追突車両(四輪車)40%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【227図】参照
③追突車両(四輪車)80%:被追突車両(単車)20%
別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)【228図】参照