中小企業の寿命が30年と言わる理由について(カネ・人・ビジネスモデルの陳腐化という3つの問題について)

弁護士業務を行っていると,中小企業の終わりに立ち会うことが多々あります。

また,私も,細々とではありますが会社を経営しておりますので,業務上,中小企業のオーナー社長から事業承継の困難さを聞かされることもあります。

会社の究極の目的は維持・存続といえるのですが,一般に企業の平均寿命は25年程度といわれており,中小企業であれば,この平均寿命を乗り越えて存続するのはかなり大変です。

以下,なぜ,企業(特に中小企業)の平均寿命が25年程度と言われるのかについて検討していきたいと思います。

中小企業の金銭的問題

中小企業が維持・存続できなくなる一番の理由は,何といっても金銭的問題です。

魅力的な商品・サービスを生み出せないがために十分な売り上げが上げられない企業は,早々に市場からドロップアウトしていきます。

当たり前の話です。

中小企業の場合には,これに加えて,貸し倒れのリスクにもさらされます。

仮に,魅力的な商品・サービスを市場に提供することができたとしても,売掛金の回収ができなければ企業はつぶれてしまいます。

企業は,売上げが黒字だという理由だけで存続することはできません。キャッシュフローが黒字にならなければ生きていけません。

言うまでもなく,中小企業は,資金が潤沢ではありませんので,取引先が倒産するなどして売掛金が貸倒れてしまうと,途端にキャッシュフローが悪化します。

売掛金が貸倒れても,仕入れ・経費の支払は待ってくれないからです。

中小企業の場合,売掛金を回収が,次の運転資金となっているのが通常ですので,売掛金の貸し倒れが発生すると途端に倒産(いわゆる連鎖倒産)の危機に瀕します。

大企業であれば,多少の貸し倒れが発生したとしても,それを補う体力がありますが,と中小企業は,そうはいきません。

売り上げが黒字の企業であっても,キャッシュフローの黒字でなければ会社が存続することはできません。

中小企業の人的問題

また,中小企業は,人的な問題も抱えています。

中小企業の場合には,経営方針の決定から,資金繰り,営業,実務,経理のほぼ全てを社長の判断に任されている場合がほとんどだと思います。

そのため,中小規模でかつ知名度が高くない企業の場合には,業務上得た経験・ノウハウ・人脈は,その企業自体にではなく,業務担当者個人に蓄積されます。もっとも言うと,社長に集積されます。

その結果,中小企業は,社長がいないと成り立たない企業となってしまいます。

この点,中小企業は,どこかの企業に勤めて経験を積んだ元サラリーマンが,そのノウハウを生かして起業するという場合が多いと思われます。

その場合,例えば大学卒業後10数年大手企業に勤務し,40歳で晴れて独立したなんて場合を考えてみると,独立して20年もすれば経営者は60歳です。

そろそろ引退を考える時期に差し掛かります。すなわち,中小企業は,開業後20年程度で世代交代の時期が来るのです。

ところが,中小企業は,優秀な人材を大企業に取られてしまうという点において,採用面での大きなハンデがあります。

また,いい人を採用できたとしても,資金面の問題や教育カリキュラムの整っていない中小企業において,従業員に十分な教育を施し,次世代を担う能力を引き出すのは相当困難です。人を育てるのは難しいのです。

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さらに,従業員を一人前に育て上げたとしても,中小企業を引き継いでくれるとは限らず,早々に独立してしまう危険もあります。

独立後20年の間に有能な後継者を育成できていればいいのですが,独立後は会社の運営や業務の拡大に追われ,また以上の理由から,後進の育成などおろそかにしていることが通常です。

そうすると,社長が引退を考え出す時期には,これを引き継ぐ適切な人材がいないという問題に直面してしまうこととなるのです(中小企業を永続させていくためには,社長が元気なうちに経営権を次世代に経営権を引き継がせていかなければなりません)。

黒字企業であっても,後継者がいなければ会社が存続することはできません。

中小企業のビジネスモデル陳腐化問題

さらには,中小企業は,ビジネスモデルの追求という意味でもリスクを抱えています。

世の中では,絶えず何らかの流行が発生し,それらの流行を追って企業が勃興します。

先進的アイデア,革新的サービス,流行りのスイーツ等,過去の流行に乗って事業拡大していった企業は,枚挙にいとまがありません。

流行に乗った企業は,そこから莫大な利益を上げることができますので,波に乗った途端に事業規模は一気に拡大します。

ところが,これらの流行は,永続するわけではありません。

流行が生まれると,利益が生まれますので,そこに膨大な数のビジネス・資本が集中します。

そのため,流行が発生すると,価格競争が始まり,その結果としてすぐに陳腐化します。

そして,価格競争が始まると,流行のものに高付加価値を生み出せない企業はドロップアウトしていきます。

流行は,爆発的な利益を生み出しますが,爆発すればするほど,その終息も速いのです。市場の動きは,一瞬です。

そのため,流行をビジネスとするためには,早期に流行をつかみ,流行期間中に,開発資金と利益を回収しなければビジネスとして成り立ちません。

流行を追う商売をしている場合には,1つの流行をとらえたとしても,その流行が終息する前に次の流行をとらえなければならず,それを際限なく繰り返していかなければ存続していくことはできません。

中小企業は,この追っかけを,十分な資金とマーケット調査力を持つ大企業と同じ土俵で戦い,勝ち取らなければならないのです。

これができなければ,継続していくことは困難です。

終わりに

中小企業は,以上の大きな3つのリスクにさらされていますので,これらを乗り越えて,30年以上の長きに亘って市場にて活動を続けることは並大抵のことではないのです。

日本に存在する会社の99%は中小企業と言われており,雇用の維持はもちろん,技術の蓄積等も中小企業においてもなされています。

また,世界に轟く大企業も,かつては中小企業から出発し,マーケットでのし上がって行ったのです。

中小企業は大事です。日本は中小企業が支えています。

時代に合わなくなった中小企業が市場から淘汰されていくのはやむを得ない話だと思いますが,ニーズをつかんでいるにもかかわらず,以上の問題で倒産に至るというのはとてももったいない話です。

日本の将来のためにも,中小企業の事業承継について本気で考えていかないといけない時期かもしれませんね。

最期まで読んでいただき,ありがとうございました。

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