耳は,空気振動から音を感じる感音器官です。
交通事故により,耳殻(頭部の両側にある外耳孔を囲む貝殻状の突起であり,我々が一般的に目にする上記イラストの部分です。耳介とも言いますが,本稿では耳殻と統一して記載します。)が欠損した場合の後遺障害について,以下検討します。
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耳の構造について
耳は,外耳・中耳・内耳の3つの部分に区分されます
耳に達した音(空気の振動)は,耳殻から外耳道を経て鼓膜に伝播され,その鼓膜の振動がさらに中耳腔内の耳小骨を通して,内耳の蝸牛内部に満たされているリンパ液に伝わり,液体振動に変えられます。この液体振動が,蝸牛にあるらせん器官を刺激し,この刺激が内耳神経を経て大脳皮質の聴覚中枢に伝えられ,音を感じるこことなります。
耳殻の欠損に起因する後遺障害
耳殻の欠損について
耳殻の欠損については,早見表において,別表第二12級4号に,「1耳の耳殻の大部分を欠損したもの」として,1種類のみの等級の定めがあります。
ここにいう耳殻の大部分の欠損とは,耳殻軟骨部の2分の1以上を欠損したものをいいます。
なお,耳殻は左右で系列が異なるので,両耳の耳殻を欠損した場合には,1耳ごとに等級を定め,これを併合します。
醜状障害との比較について
以上に加え,耳の欠損は,醜状障害としてもとらえることもできますので,耳の欠損による等級と,醜状障害との等級を比較し,いずれか高い方の等級で認定されることになります。
なお,醜状障害については,全体で1つの系列となっているため,両耳の耳殻に欠損があったとしても,1耳ごとに等級を定めてこれを併合することはなされません。
まとめ
以上をまとめると,耳殻の欠損についての後遺障害は,以下の表のとおりとなります。
7級12号 | 耳殻を欠損したことによる「外貌の著しい醜状」 |
併合11級 | 両耳の耳殻の大部分を欠損(2つの12級4号を併合して繰り上げ) |
12級4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損 |
9級16号 | 耳殻以外の顔面の瘢痕等も併せて考慮し,「外貌の相当程度の醜状」 |
12級14号 | 耳殻以外の顔面の瘢痕等も併せて考慮し,「外貌の単なる醜状」 |
補足
耳殻の欠損は,それ自体によっては身体機能に制約を及ぼす障害ではないため,耳殻の欠損障害による後遺障害認定がなされた場合には,等級そのものではなく,労働能力の喪失を伴わないことを理由として後遺症逸失利益率が争われることが多いです。