【交通事故による後遺障害】損傷による脾臓(ひ臓)摘出

交通事故の際の衝撃によって,脾臓が損傷した場合に,脾臓が摘出される場合があります。
交通事故によって脾臓摘出に至った場合,損害賠償上はどのように扱われるのでしょうか。以下,脾臓とは何か,脾臓摘出の場合の後遺障害等級の順についてみていきましょう。

脾臓とは

脾臓は,腹部左上の肋骨のすぐ下の部分(胃の奥)に存在する,握りこぶし大の柔らかい臓器です。

脾臓は,①血液の貯留機能,②老朽赤血球・血小板の破壊機能,③リンパ装置としての生体防御機能の3つの機能を有しています。

①血液の貯留

脾臓において血液成分を蓄え,必要に応じて全身へと送り出す機能を有しています。

②老朽赤血球・血小板の破壊

脾臓は,古くなったり傷んだりした血小板等を破壊して,鉄分とヘモグロビンに分け,鉄分は骨髄にて新たな赤血球の成分として利用され,ヘモグロビンはビリルビンに変えて肝臓へ送り老廃物として排泄する機能を有しています。

③リンパ装置としての生体防御

脾臓は,全体の4分の1もの量が集まる人体最大のリンパ器官であり,細菌やウイルスなどと戦うための抗体を製造する機能を有しています。

脾臓摘出の場合の後遺障害等級

脾臓の摘出

脾臓は生命維持のために必須の器官ではなく,仮にこれが失われたとしても,他の臓器によって脾臓の働きを埋め合わせて生命維持が可能です。

そこで,交通事故により脾臓に障害が生じ,非観血的な治療が有効といえないと判断された場合(手術による切開を要すると判断された場合)には,脾臓の摘出術が施行されます。

なお,最近では,手術をする場合でも,脾臓を残す場合が増えてきているようですが,私は医者ではありませんので,その辺りの医学的な判断基準はわかりません。

脾臓摘出の影響

脾臓を摘出しても,通常,直ちに人体に特段の症状を生じさせることはありません。

もっとも,前記のとおり,脾臓はリンパ装置としての機能を有していることから,これを摘出すると,免疫機能が一定程度低下することとなり,感染症に罹患する危険性が増加します。

脾臓摘出の場合の後遺障害等級

認定基準上,脾臓摘出の場合には,「ひ臓を失ったもの」として,別表第二13級11号が存在し,これに従った後遺障害等級認定がなされます。

補足

かつては,交通事故によって脾臓摘出がなされた場合には,8級11号の後遺障害等級認定がなされていました。

ところが,平成18年の基準の見直しによって脾臓摘出の後遺障害等級が格下げされ,平成18年4月1日以降に発生した交通事故によって脾臓摘出がなされた場合には,前記のとおり13級11号の後遺障害等級認定がなされます。

そのため,基準改定前後で,脾臓摘出の評価,ひいては損害賠償額について,極めて大きな差が生じることになりました。

今日の訴訟で,基準改定前の裁判例を引用したりすると,相当な反論が来ますので,気を付けましょう。

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