【交通事故よる後遺障害】脊柱以外のその他体幹骨の変形障害

交通事故被害に遭われた場合,不幸にも脊柱以外のその他の体幹骨の変形障害が残存してしまう場合があります。

そこで,本稿では,交通事故により脊柱以外の体幹骨の変形障害が残ってしまった場合の後遺障害認定について考えていきましょう。

後遺障害等級認定上のその他の体幹骨とは

自賠責保険の後遺障害等級認定にいう,その他の体幹骨とは,鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤骨(仙骨は骨盤骨の一部として変形障害認定の対象となりますが,尾骨は変形障害認定の対象とはなりません。)をいいます。

その他体幹骨の変形障害の後遺障害等級認定基準

前記その他体幹骨のいずれかに「著しい変形」を残した場合,別表第二12級5号に該当します。

ここにいう「著しい変形」とは,裸体となったときに変形や欠損が明らかにわかる程度のものをいい,レントゲン写真によって初めて見出される程度のものはこれに該当しないとされています。この点については,採骨による変形の場合も同様です。

2箇所以上のその他体幹骨の変形障害

その他体幹骨の箇所の数え方

鎖骨・けんこう骨

左右をそれぞれ別の骨として取り扱います。

ろく骨

全体を一括して1つの箇所として取り扱います。また,ろく軟骨もろく骨に準じて取り扱います。

したがって,ろく骨は1本切除の場合であっても,3本切除の場合であっても,同じく12級5号として扱われます。

胸骨・骨盤骨

もともと1つしかありませんので,それぞれ1つの箇所として取り扱われます。

2か所以上のその他体幹骨に変形障害がある場合

前項の箇所を前提として,2箇所以上に,それぞれ著しい変形がある場合には,同一系列に属する障害ですので,併合等級(自賠令2条1項3号)を認定するのではなく,別表第二備考6の併合の方法を準用して,1級繰り上げ,別表第二11級相当と認定されます。

2箇所以上に著しい変形があっても,当該等級を超えることはできません。

その他体幹骨と関連部位との併合の取り扱いについて

骨盤骨の変形と股関節の機能障害の場合

骨盤骨が高度に変形したために,股関節が転位し運動障害が残った場合には,骨盤骨の変形と股関節の機能障害が併合されます。

この場合,骨盤骨の変形による12級5号と,股関節の機能障害による12級7号の,別表第二併合11級と認定されます。

骨盤骨の変形と下肢の短縮障害の場合

骨盤骨の変形によって,下肢そのものには異常が生じないが,下肢を短縮したのと同じ様な障害が残った場合には,併合することはできず,骨盤の変形による12級5号か,下肢短縮障害(5cm以上短縮は8級5号,3cm以上短縮は10級8号,1cm以上短縮は13級8号)のいずれか高い等級で認定されます。

鎖骨の変形と肩関節の機能障害の場合

鎖骨に著しい変形を残すとともに,肩関節の機能にも障害を残した場合には,鎖骨の変形による12級5号と,肩関節の機能障害による12級6号の,別表第二併合11級と認定されます。

その他体幹骨の変形と長管骨の変形の場合

その他体幹骨の2箇所以上に著しい変形を残し,同時に上肢又は下肢の長管骨に変形を残した場合には,まずその他体幹骨の変形について別表第二11級相当とし,それと系列の異なる長管骨の変形とを併合することができます。

併合する場合には,併合11級相当と,別表第二12級の,別表第二併合10級と認定されます。

補足

その他体幹骨の後遺障害等級該当性が争いになることはそれほど多くありません。

もっとも,その他体幹骨の変形は,それ自体によっては全く労働能力の低下をもたらさない,又は通常の喪失率ほどの低下をもたらすわけではない障害であるとして,等級そのものではなく,後遺症逸失利益率が争われることが多い障害類型といえます。

1 鎖骨変形の場合

2 胸骨変形の場合

3 ろく骨変形の場合

4 けんこう骨変形の場合

5 骨盤骨変形の場合

骨盤骨変形の場合のうち,他の身体的部位の手術のために骨盤骨を採取して移植した場合,後遺障害認定上は腸骨採取による変形障害認定がなされることがあるが,この場合には労働能力喪失を否定する裁判例が多いといえます。

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