交通事故被害者が受領した損害賠償金・保険金が原則非課税となる理由

交通事故被害者の方が,加害者又は加害車両付保付保保険会社から損害賠償金を受け取った場合,その受け取った金額につき,所得税・住民税等の税金は課されるのでしょうか。

原則として損害賠償金は非課税

交通事故被害に遭い,相手方又は相手方付保保険会社から損害賠償金を受け取った場合,法律上,原則として,その受け取った金額につき,所得税は課されないとされています(所得税法9条1項17号,所得税法施行令30条1号)。

この理は,受け取った損害賠償金のみならず,受け取った相当額の見舞金についても同様とされています(所得税法施行令30条3号)。

また,住民税についても,所得税法の総所得金額の計算と同じ計算をするとされていますので,同じく課税されないこととなります。

所得税・住民税の課税がなされないため,交通事故被害者は,損害賠償金を受領しても,原則として当該受領金についての税務申告も必要となりません。

損害賠償金を受領しても非課税となる主な理由は,損害賠償金の受領は,被害者が被った損害を填補するもの(マイナスを0に戻すもの)にすぎず,利益・所得を得るもの(0からプラスになるもの)ではないからです。

所得税法第9条1項17号
「保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第四項 (定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項 に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」については,所得税を課さない。

所得税法施行令30条1号
所得税法9条1項17号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金とは,「損害保険契約(保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第四項 (定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項 に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項 に規定する少額短期保険業者(以下この号において「少額短期保険業者」という。)の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この条において同じ。)に基づく保険金,生命保険契約(同法第二条第三項 に規定する生命保険会社若しくは同条第八項 に規定する外国生命保険会社等の締結した保険契約又は少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この号において同じ。)又は旧簡易生命保険契約(郵政民営化法 等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第百二号)第二条 (法律の廃止)の規定による廃止前の簡易生命保険法(昭和二十四年法律第六十八号)第三条 (政府保証)に規定する簡易生命保険契約をいう。)に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で,身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)」をいう。

例外として損害賠償金に課税される場合

もっとも,受け取った損害賠償金のうちに,その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には,その補てんされた金額に相当する部分については,各種所得の収入金額とされます(所得税法施行令30条柱書)。

①人的損害についての例外

治療費として受け取った金額は,医療費を補てんする金額であるため,医療費控除を受ける場合は,支払った医療費の金額から差し引くことになります。しかし,その医療費を補てんし,なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。

②物的損害についての例外

①資産に加えられた損害の場合に,当該資産が事業用資産の場合には,その損害賠償として受け取った金員については,事業所得の収入金額とされます。

この場合の損害賠償金は,収入金額に代わる性質を持つものであるからです。

②車両が店舗に飛び込んで損害を受けた場合で,その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として受け取った損害賠償金については,事業所得の収入金額とされます。

この場合の損害賠償金は,必要経費に算入される金額を補てんするためのものだからです。

③事故により事業用の車両を廃車とする場合で,その車両の損害について損害賠償として受け取った金員のうち,車両の損害に対する損害賠償金などは非課税となりますが,車両について資産損失の金額を計算する場合は,損失額から損害賠償金などによって補てんされる部分の金額を差し引いて計算します。

なお,この場合,損害賠償金などの金額がその損失額を超えたとしても,全額が非課税となります。

③その他

非課税となる見舞金は,社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。また,収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは,非課税所得から除かれます(所得税法施行令30条3号)。

また,死亡保険金については生命保険と同様の扱いを受けますので,受取なんの別により,相続税・所得税住民税・贈与税が課されますので注意して下さい。

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