交通事故被害者は警察の事故処理に協力するために要した費用を加害者に請求できるか

交通事故に遭った場合,警察を呼んだ上で,現場で事故処理をしてもらわなければなりません。この義務は,交通事故加害者のみならず被害者にも課されています。

そのため,被害者であっても,その後に警察署に赴いて調書作成をしたり,現場に呼ばれて実況見分に立ち会ったりする必要が生じることがあり得ます。

これらの事故処理については,当然に時間を必要としますし,また移動等のために費用が発生する場合もあります。

交通事故被害者は,この交通事故処理手続きに要した費用を,加害者に請求できるのでしょうか。

交通事故被害者の捜査機関(警察・検察)への協力義務の発生根拠

交通事故に遭った場合に,当事者が警察に報告しなければならない理由は,警察官に負傷者の救護や交通秩序の回復等についての適切妥当な措置を検討・実施させるため,道路交通法が,当事者に事故報告義務が課しているからです(報告義務,道路交通法72条1項後段)。

また,その後,捜査機関による調書作成に協力をしたり,事故現場に赴いて実況見分を行ったりするのに協力しなければならない理由は,捜査機関が交通事故加害者を起訴するかどうかを判断し,かつ起訴する場合の裁判資料作成を行うために,犯罪捜査への任意協力させるためのものです(刑事訴訟法197条)。

すなわち,交通事故被害者が,捜査機関に協力をしなければならない義務を負う理由は,各種法律の規定により「政策的に課されたもの」であり,交通事故被害に遭ったという事実から必然的に発生するものではありません

被害者の捜査機関への協力の際に要した費用の帰趨

交通事故被害者が,捜査機関に協力するために費用を要した場合,交通事故被害者としては,加害者に請求したいと考えるのが通常だと思います。

交通事故が発生しなければ負担する必要がなかったのですから,当然の感情です。

ところが,前記のとおり,被害者の捜査機関への協力義務は政策的に課されたものに過ぎませんので,交通事故に起因する独自の損害費目たり得るものではなく,加害者側からすると,自分が負担するには抵抗がある金銭といえます。

そこで,被害者の捜査機関への協力の際に要した費用を,加害者,被害者のどちらが負担すべきか問題となるのですが,確立した判例があるわけではなく,下級審の見解は割れています(もっとも,否定裁判例が大多数です。)。

以下,数少ない肯定裁判例をいくつか列挙しておきますので,参考にしてください。

否定裁判例

多数

肯定裁判例

①東京地判平成24年12月21日・交民集45巻6号1556頁

実況見分の立会いと警察署に保管されていた損傷自転車引き取りのためのタクシー代3430円,警察署に診断書を提出しに行くための交通費960円,警察署に供述調書を作成しに行くための交通費560円を認定した。

②仙台地判平成25年3月29日・自保ジャーナル1906号147頁

捜査機関への取り調べ出頭費用,刑事裁判対応等のための交通費を認定した。

③東京地判平成25年4月26日・交民集46巻2号577頁

警察への出頭費用1290円を認定した。

④大阪地判平成31年2月27日・自保ジャーナル2045号68頁

警察への往復費用1日分につき,事故がなければ発生しなかった費用であるとして,交通事故との相当因果関係を認めた。

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