交通事故被害車両が所有権留保付車両の場合の代車代請求権者が「使用者(買主・ユーザー)」である理由

交通事故により車両が損傷した場合,被害車両の修理期間中,代車が必要となる場合があります。

この点,交通事故被害車両が,ローンで購入し所有権留保が付いている車両の場合(残価設定型クレジットを利用して購入した場合も同様。),又はリース車両の場合には,車両の所有者として登録されているのはローン会社・リース会社であり,購入者・ユーザーは使用者として登録されているにすぎません。

このローン購入車両又はリース車両が交通事故に遭った場合,損傷した車両の代車代について損害賠償請求権を有する人は所有者(ローン会社・リース会社)でしょうか?使用者(買主・ユーザー)でしょうか?

結論を先にいうと,代車代については,いずれも請求権者は使用者(ローンで購入した場合は買主,リースの場合はユーザー)であり,その結論に争いはありません。

以下,理由を説明します。

代車代請求権の本質

代車代は,交通事故によって損傷した車両の修理又は買換えに要する期間中,当該被害車両を使用することが出来なくなった場合に,代車使用の必要性があり,かつ現実に代車を使用して代車代を負担ときに使用したときに認められるものです。

すなわち,代車代請求権は,自動車の修理期間又は買換え期間中の,自動車の使用価値の減少を填補するものです。

この点,被害車両が,ローンで購入し所有権留保が付いている車両の場合(残価設定型クレジットを利用して購入した場合も同様。),又はリース車両の場合には,購入者・ユーザーが使用者として登録されており,これらの使用者が自動車の使用価値を把握していることに争いはありません。

そのため,ローンで購入し所有権留保が付いている車両の場合(残価設定型クレジットを利用して購入した場合も同様。)を購入した購入者,リース車両のユーザーは,代車代請求の前記要件を主張・立証すれば,加害者に対して代車代請求をすることが出来ると考えられるのです。

参考裁判例

以下,ローンで購入し所有権留保が付いている車両の場合を購入した買主,リース車両のユーザーが代車代請求権を有するとした裁判例をいくつか紹介しますので,参考にしてください。

所有権留保車両の買主に代車代請求権を認めた裁判例

① 水戸地判昭和43年11月25日・交民集1巻4号1342頁

② 神戸地判平成8年6月14日・交民集29巻3号887頁

③ 東京地判平成15年3月12日・交民集36巻2号313頁

リース車両のユーザーに代車代請求権を認めた裁判例

① 東京地判平成25年8月7日

参考(交通事故被害車両が所有権留保車両の場合の請求権者の別)

なお,交通事故被害車両が所有権留保車両の場合の物的損害賠償の費目別の請求権者の別は以下のとおりです。参考にしてください。

①修理代:所有者及び使用者

理由→交通事故被害車両が所有権留保付車両の場合の修理代請求権者が「所有者及び使用者」である理由

②代車代:使用者

理由→本稿

③評価損:所有者

理由→被害車両が所有権留保車両であった場合の評価損請求権者が「所有者」である理由



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