年齢の数え方を満年齢方式とする法律上の根拠とは(数え年との違いも)

皆様は,年齢の数え方について考えてみたことはありますか。

「数え年」,「満年齢」などという言葉は聞かれたことがあると思いますが,法律上の年齢の考え方をご存知の方は少ないと思われます。

そこで,以下,法律上の年齢の考え方について検討してみたいと思います。

昔の考え方(数え年)

昔(といっても,昭和初期ころまで)の年齢は,産まれたその日に1歳から始まり,正月が来るたびに1歳ずつ歳を重ねて行くと考えるのが一般的でした。

この年齢についての考え方を「数え年」といいます。

なお,法律上は,年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号・1902年12月22日施行)により,法律上,明治35年12月22日以降は,年齢は,「出生の日より起算」(年齢計算ニ関する法律1項)し,「起算日(出生日)に応答する日の前日をもって」,加算されることになっている(同法2項,民法143条・「満年齢」)のですが,同法施行後も,数え年によって年齢を計算するというのが一般的習わしでした。同法施行により,法律と実務に乖離が生じたのです。

数え年という考え方は,今となっては不思議な考え方だと思われるかもしれませんが,数字の0(ゼロ)の概念がなければ,物事は1からスタートするのは当たり前の話ですので,全く不思議な考え方ではありません。

例えて言うと,建物は1階から始まりますし,学校も1年生から始まります。スタートが1であることはある意味当然のことなのです。

年配の方にはこの考えがしっかり来るかもしれません。

この数え年で年齢を考えると,極端な話として,12月31日に産まれた子供は産まれた日に1歳となり,翌日の1月1日にさらに歳を重ねますので,産まれた次の日に2歳になるということになります。

昔は,正確な暦がなく,また誕生日なの特定も曖昧でしたので,この数え年という考え方が都合が良かったのかもしれません。

もっとも,この考え方だと,歳を聞いただけでは,産まれてから現在までの正確な経過年数が把握できず,また諸外国の考え方と一致しないことから,外国人と比較する際に正確な対比が出来なくなってしまう等の数々の不都合もありました。

現在の考え方(満年齢)

そこで,実務上の運用・一般的習わしについても数え年を使うのを止めて,実務運用を法律の規定に整合させようとの試みがなされました。

具体的には,「年齢のとなえ方に関する法律」(昭和24年5月24日法律第96号・1950年1月1日施行)という法律が成立し,年齢の数え方について,一般的な運用・習わしについても,数え年の方法ではなく,満年齢の方法をとるよう義務付けられました

年齢のとなえ方に関する法律

第1項
この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治35年法律第50号)の規定により算定した年数(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。
第2項
この法律施行の日以後、国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表わす場合においては、当該機関は、前項に規定する年数又は月数によつてこれを言い表わさなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によつて年齢を言い表わす場合においては、特にその旨を明示しなければならない。

この満年齢で年齢を考えると,産まれた子は,産まれたその日に0歳となり,翌年の同じ日(誕生日・より正確にいうと翌年の同じ日の前日の午後12時経過時点)に1歳となるとされます。

現在では,この法律が浸透し,年齢の数え方については,法律上のみならず実務慣行,一般的な慣わしとしても,満年齢でなされるということに異論はなくなっています。

補足

なお余談ですが,法律とは無関係の分野(特に神社等)では数え年で年齢を計算する場合もあります。

特に,七五三・厄祓い等の行事では数え年で年齢計算がされているのが一般的ではないでしょうか。

以上,法律上の年齢についての考え方を整理してみました。

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