保有している自動車が盗難被害に遭ったり,他人に騙し取られたり,貸していた相手に持ち逃げされたりすることがあり得ます。
いずれかの方法によって保有車両を他人に奪い取られた場合には,その簒奪者に対して損害賠償請求できるのは当然です。
では,これに加えて,保有車両に付保していた保険会社に対し,当該車両時価相当額についての車両保険金を請求できるでしょうか。
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窃盗・詐欺・横領被害に遭った場合に車両保険を使えるかの結論
結論から先に述べます。
保有車両が盗まれた場合には車両保険を請求でき,騙し取られたり,貸していた相手に持ち逃げされた場合には車両保険を請求できません。
前記結論に至る形式的理由
前記結論に至る形式的理由は極めてシンプルです。
車両保険約款に,車両盗難の場合には車両保険金を支払い(車両条項1条),詐欺・横領の場合には車両保険金を支払わないと規定されているからです(車両条項2条8号)。
一言でいうと,窃盗とは盗み取ること,詐欺は騙し取ること,横領は管理物をネコババすることをいいます(正確な定義はあえて割愛します。)。
このことから,前記結論に至るのです。
なお,参考までに,某大手自動車保険会社の車両約款をアイキャッチに挙げておきますので参考にしてください(某1社の約款ですが,他の保険会社においても,ほぼ同様の規定を設けているため,結論において変わりはありません。)。
前記結論に至る実質的理由
車両を奪われたという結果が同じであるにも関わらず,窃盗の場合には車両保険金を受け取れて,詐欺・横領の場合には車両保険金が受け取れないとすることは公平ではないのではないかと思われますが,そんなことはありません。
なぜなら,窃盗の場合は車両保有者の意思に関係なく奪われていますので保有者に非がないのですが,詐欺・横領の場合は騙された結果とはいえ車両保有者の意思により奪われていますの保有者に非があると判断されるからです。
参考にしてください。