中国の春秋時代に,伯楽(紀元前680年ころ~紀元前610年ころ)という,名馬を見分ける名人がいました。
秦の穆公(大人気漫画「キングダム」にも過去の回想で登場したこともある偉大な王です。)に仕えた人で,馬の目利きから転じて,優れた資質を持つ人物を見抜く力がある人物として例えられる「名伯楽」の語源となった人物でもあります。
この伯楽の逸話が,商売を行う上でのヒントとなりそうですので,紹介したいと思います。
名伯楽の逸話
春秋時代は,中国における戦国時代であり,戦争が日常茶飯事の時代でした。
この点,昔の戦争には,馬はつきものです。
戦闘時の乗馬用・戦車用のみならず,斥候や兵站に至るまで機動力のある馬が必要とされており,馬なしで戦争をすることはできません。
そんな時代ですので,馬の目利き名人である伯楽は,英雄的人物でした。
当然,弟子もたくさん抱えていました。
そんな伯楽に対して,あるとき,伯楽のお気に入りの弟子と,伯楽が気に入らない弟子が,2人して馬の目利きについての教えを乞うたそうです。
皆さんは,伯楽が,それぞれにどういう教えを施したと思いますか。
私だったら,お気に入りの弟子の方に名馬の見抜き方を教えそうなものですが,伯楽は違いました。
伯楽は,お気に入りの弟子には,駄馬の見抜き方を,気に入らない弟子には,名馬の見抜き方を教えたそうです。
私は,逆じゃないかと思ったのですが,理由を聞いて納得しました。
名馬は,世間にほとんどおらず,またいたとしても高価すぎて一握りの人しか購入することができません。
そのため,名馬の見抜き方を会得したとしても,マーケットが小さすぎて,名馬を仕入れて転売することによって利益を得るのは困難なのです。
ところが,駄馬と駄馬とはいえない少し優れた馬はそこら中に存在しているため,仕入れも簡単です。また,価格も安いため,売却先を探すのも簡単です。
そのため,駄馬の見抜き方を会得した場合,大きなマーケットで,駄馬同様の値段で少し優れた馬を仕入れ,これを転売するという商売が成り立ち,大儲けをすることができるのです。
以上の理由から,お気に入りの弟子に大儲けをさせてあげたい伯楽は,お気に入りの弟子に,駄馬の見抜き方を教えてあげたのです。
この話には,商売を行う上で,大きなヒントがあるのではないでしょうか。
名伯楽の逸話から学ぶビジネスのヒント
確かに,名馬のように値が張る高価なものを商売として取り扱った場合,1回あたりの成功報酬は高額になります。
ところが,高価なものは,それほどポンポン売れません。
例えていうなら,お金をかけて作られたマクラーレンやランボルギーニといった超高級車は,これを高額のお金を出して購入することができる購入候補者が少ないため,大量には売れないのです。
そのため,1回あたりの利益が多くとも,数が少ないため,莫大な利益を得るには至りません。
他方で,駄馬ではない少し優れたものを商売として取り扱った場合,成功報酬は高価なものと比べて劣りますが,その分,数をさばくことができます。
例えていうなら,大量生産が可能なトヨタのプリウスという優れた大衆車は,一般庶民でも届く価格帯であるため購入候補者が多く存在し,大量に売りさばくことが可能となります。
そのため,1回あたりの利益が少なくとも,その数をかけた分の利益を得ることができますので,莫大な利益を得ることができ得ます。
以上に鑑みると,商売を行う上では,数少ない希少な高額商品を取り扱うよりも,ありふれた優れた商品を取り扱う方が莫大な利益を得ることができることがわかります。
車の例を出しましたが,衣類であれば「ユニクロ」,飲食店であれば「マクドナルド」,飲料であれば「コカ・コーラ」等,優れてはいるもののありふれた商品を大量に売買して莫大な利益を得る商売例を挙げれば,枚挙にいとまがありません。
参考にしてみて下さい。