【代車の相当性】交通事故被害車両による請求が認められる代車使用期間

交通事故被害に遭った被害者は,被害車両の修理又は買換え期間中は,車両を使用することができません。そのため,被害者が修理又は買換え期間中に代車を使用し,かつその期間中に代車を使用する必要性・相当性が認められれば,加害者に対して代車代の請求ができ得ます。

つまり,代車代を請求出来る代車使用期間は,必要性・相当性が認められる期間に限られます。

では,代車代請求として認められる期間はどれ位でしょうか。

代車使用期間についての一般論

前記のとおり,代車使用期間として認定されるのは,被害車両が修理可能な場合には,修理に必要な期間,買換えが必要な場合には買換え相当期間の範囲に限られるのが原則です。

そのため,交通事故加害者側と交渉がまとまらないために修理ができない場合や,修理工場がなかなか修理を開始してくれないために修理がなかなか進まない場合であっても,永続して代車を使用できるわけではないのです。

極論すると,相手方と交渉がうまくいっていなくても,被害者が,自身の責任と負担において修理代・買替費用費やせば被害車両を回復できますし,また依頼をした修理工場がなかなか修理をしてくれなければ他の修理工場に依頼すればいいわけですので,交渉が進んでいない等の主張は,代車を使用する理由にはならないわけです。

そのため,あくまでも修理や買換え通常要するであろうと考えられる期間が,代車の相当期間となるのが原則です。

具体的な代車の相当期間を検討すると,車種や損傷の程度にも寄るため一概には言いにくいですが,国産車の修理の場合で2週間程度(外車の場合は,別途部品取り寄せ期間検討。),買換えの場合で1ヶ月程度を限度に認定するのが一般的かと思います。

もっとも,交通事故の場合には保険会社と修理工場との協定が成立してから修理に着工するという慣行があることや,加害車両付保保険会社と比して知識・経験・交渉力の劣る被害者が,自身の判断で代車の修理代を検討した上で相当期間を判断することは困難であることから,前記原則を徹底して,代車使用相当期間を修理又は買換えの期間のみに限定をしてしまうと,あまりに被害者に酷な結論となりかねません。

そこで,裁判例では,修理又は買換えに必要な期間に加えて,その交渉内容・交渉経過に合理的理由が存在する場合には,相手方(相手方車両付保保険会社)との交渉期間についても,代車期間に含めるとする傾向にあります

交渉期間の代車代を認める裁判例の例示

以下,相手方との交渉期間の代車代を認定した裁判例をいくつか例示列挙します。参考にして下さい。

① 東京地判平成14年10月15日・交民集35巻5号1317頁

保険会社が協定の締結を拒絶して修理費用を負担しないという態度を明確にするか,それ以前であっても合理的な検討期間が経過するまでの間は,被害者が自ら修理に着工しなかったとしてもやむを得ないとして,1ヶ月半の代車代を認めた。

② 京都地判平成23年2月1日・交民集44巻1号187頁

保険会社の調査に時間を要し,正式な見積りを取るのが多少遅れたとして,40日分の代車代を認めた。

③ 東京高判平成25年9月30日・自保ジャーナル1911号119頁

日額3000円で,事故日から95日間代車を使用した事案につき,事故日から36日目に加害者側保険会社から全損である旨の連絡を受けたことを考慮し,50日分の代車代を認めた。

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