交通事故被害者の装備品は人損か物損か

交通事故に際し,被害者が身に着けていた物が既存・紛失した場合,物損として扱われるのか,それとも人損として扱えるのかが問題となります。

一見,加害者側負担しなければならないことに変わりがないため,どちらでもよさそうにも思えるが,人損として扱うことができれば,「身体」が害された場合における損害賠償を保障する自動車損害賠償保障法(自賠法)の適用を受け自賠責保険金の支払いを受けることができるためにその区別が問題となるのです(物損の場合には自賠法の適用はないため)。 “交通事故被害者の装備品は人損か物損か” の続きを読む

ストライダーは道路交通法上は自転車・軽車両・歩行者のどれに該当するのか

最近,街中でストライダーに乗車している子供をよく目にします。

このストライダーは,基本的には,公園や広場などで使用されることが前提となっているはずなのですが,街中で乗られているということは,ストライダーに乗っている子供が交通事故に遭う可能性も出てきます。

では,このストライダーが道路上で交通事故に遭った場合,どういう基準で過失割合を決するのでしょうか。現在交通事故損害賠償実務において当たり前のように規範として使用されている別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)にストライダーの区分がなされていないため問題となります。 “ストライダーは道路交通法上は自転車・軽車両・歩行者のどれに該当するのか” の続きを読む

【損害拡大防止義務】交通事故被害者が被った損害のうち被害者負担となるものについて

交通事故被害に遭った場合,加害者側に損害賠償請求することができることはもちろんですが,被害者自身が加入している保険会社に対して保険金(人身傷害補償保険金・車両保険金など)の請求ができる場合があります。

もっとも,その交通事故被害者であっても,当事者間の損害の公平な分担という観点からむやみに損害を拡大させることがないようにする義務を負うと考えられ(損害拡大防止義務),被害者がある行動を取っていれば損害の拡大を容易に防止できたにもかかわらず,その行動を取らなかったことにより損害が拡大した場合にはその損害は被害者が負担すべきであると考えられています。

以下,どのような根拠で損害拡大防止義務が課されることとなり,具体的にどのような効果をもたらすかについて簡単に説明したいと思います。 “【損害拡大防止義務】交通事故被害者が被った損害のうち被害者負担となるものについて” の続きを読む

上司・部下・同僚が運転する車に乗車中の交通事故の場合には当該車両に付保された自動車保険契約対人保険金は支払われない

お仕事をされている方の中では,同じ会社に勤める上司・部下・同僚の運転する自動車で移動することがよくあると思います。

当然ですが,同じ会社に勤める人物の運転する自動車に乗車中にも一定の割合で交通事故が発生します。

もっとも,同じ会社に勤める人物の運転する自動車に乗車中に交通事故に遭った場合,「同じ会社に勤める人物の運転する自動車」の自動車保険契約に基づき対人保険金が支払われることはありません。

本稿では,なぜそのようなこととなっているか,その場合にどうしたらよいのかについて簡単に説明したいと思います。

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自動車の車幅とはどこからどこまでか(法律豆知識)

交通事故損害賠償実務を処理している際,事案を検討したりする際はもちろん,図面を引く際などにも車両の幅が問題となります。

例えば,4m道路において,149cmの169cm車両がすれ違う場合の位置関係を示す場合に問題となり得ます(わかっている人からすれば全く問題とはなりませんが・・)。

以下,わかっている人には当たり前の事項ですが,車幅の意義について簡単にその意義と法的根拠を説明したいと思います。 “自動車の車幅とはどこからどこまでか(法律豆知識)” の続きを読む

三輪車自動車の交通事故では別冊判例タイムズの単車と四輪車のどちらの基準を適用するのか

日本の道路では,単車(二輪車)・四輪車のみならず,三輪車自動車も多数走行しています。

そのため,当然ですが,三輪車自動車も一定の割合で交通事故に遭います。

では,三輪車自動車が交通事故に遭った場合,どういう基準で過失割合を決するのでしょうか。現在交通事故損害賠償実務において当たり前のように規範として使用されている別冊判例タイムズNo.38(全訂5版)に三輪車自動車の区分がなされていないため問題となります。 “三輪車自動車の交通事故では別冊判例タイムズの単車と四輪車のどちらの基準を適用するのか” の続きを読む

【軌道敷内の法規制】路面電車と車両との交通事故の際の法律関係

現在17都市で運航している路面電車ですが,その軌道敷に自動車が進入することがある関係上,路面電車と車両との交通事故が一定数生じます。

この点,路面電車が走っている都市が多くないこと,またそのために交通事故の絶対数がそれほど多くないことなどから路面電車が走る軌道敷内における交通事故についてはあまり周知がなされていないように思います。

そこで,本稿では,軌道敷内における路面電車と車両との交通規制と事故発生時の基本的な考え方を説明したいと思います。 “【軌道敷内の法規制】路面電車と車両との交通事故の際の法律関係” の続きを読む

【優先道路とは】法律上の優先・劣後関係ができるのはどのような交差道路か

交通事故損害賠償請求事件を処理をしていると,信号機による交通規制のなされていない交差点において,優先道路であるかそうでないかが争われる場合が多々あります。

具体的には,別冊判例タイムズの過失割合表を用いる際に,どの表を用いるか,用いた表の修正要素となるかについて検討する際に,当該交差道路が優先道路・劣後道路となるかが問題となるのです。

もっとも,保険会社の担当者レベルだと,法律的にどういう道路が優先道路であるのかが周知されていない場合がありますので,示談交渉の際の前提段階で紛糾する場合がありますので,本稿では,優先道路とはどういう道路をいうのかについて具体的に説明したいと思います。 “【優先道路とは】法律上の優先・劣後関係ができるのはどのような交差道路か” の続きを読む

交通事故により死亡した被害者の遺族が受領した損害賠償金は相続税の課税対象となるか

かつて別稿にて交通事故被害者が受領した損害賠償金・保険金が原則非課税となる理由について説明をしましたが,本稿では,これを一歩進め,交通事故により死亡した被害者たる被相続人の遺族が,加害者から損害賠償金を受け取った場合,この受領金額が課税対象となるかについて検討したいと思います。

なお,交通事故により被害者たる被相続人が死亡して遺族が損害賠償金を受領する場合としては,①賠償金の支払いを受けてから被相続人が死亡した場合,②支払いを受ける賠償金額が確定したが支払いを受ける前に被相続人が死亡した場合,③支払いや賠償金額が確定する前に被相続人が死亡した場合,の3パターンが考えられますので,それぞれの場合に場合分けして考えていきます。

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車両を盗まれた・だまし取られた・乗り逃げされた場合に車両保険金は支払われるか

保有している自動車が盗難被害に遭ったり,他人に騙し取られたり,貸していた相手に持ち逃げされたりすることがあり得ます。

いずれかの方法によって保有車両を他人に奪い取られた場合には,その簒奪者に対して損害賠償請求できるのは当然です。

では,これに加えて,保有車両に付保していた保険会社に対し,当該車両時価相当額についての車両保険金を請求できるでしょうか。 “車両を盗まれた・だまし取られた・乗り逃げされた場合に車両保険金は支払われるか” の続きを読む