乗客の乗っていないタクシーに手を挙げても止まってもらえずスルーされることがある理由

タクシーに乗ろうと思って,乗客の乗っていないタクシーに向かって手を挙げても,止まることなく通り過ぎられてしまった経験はありませんか?

回送表示や運転手に気が付かれなかった場合はまだしも,空車の表示だったり,運転手と明らかに目があったりした場合でもスルーされてしまうことがよくあります。

急いでいるときなどは,焦りを超えて,怒りさえ感じることもあります。

なぜ,このようなことが起こるのでしょうか。

実は,このようなことが起こる背景には,タクシー側において,法令・社内規定に触れるために客を乗せられない場合と,タクシー乗務員(ドライバー)が心情的に客を乗せたくない場合があり得ます。

以下,順に説明します。

法令等の規制により客を乗せられない場合

営業区域

タクシー営業においては,各地域の運輸局長が定める営業区域というものが存在し(道路運送法施行規則5条),タクシー事業者(一般旅客自動車運送事業者も同様)は,発地及び着地のいずれもがその営業区域外に存する旅客の運送(路線を定めて行うものを除く。)をしてはならないとされています(道路運送法20条)。

すわなち,タクシー乗務員が乗客を乗せるためには,乗客を乗車させる地点又は降車させる地点のいずれか(又は両方)が,営業区域内に存しなければならないのですが,乗客の降車地点が明らかでないタクシーの場合は,必然的に,乗車地点を営業区域内とする必要があることになります。

そのため,当該タクシーの営業区域内で乗客を乗せて運行を開始し,営業区域外に出て乗客を降ろした場合には,当該場所から,当該タクシーの営業区域内に戻ってくるまで,当該タクシーは,乗客を乗せることが出来ないのです。

おそらく,これが,冒頭の乗車スルーが発生するもっとも多くの場合であるといえます。

なお,タクシーが当該車両の営業区域外を走行している場合には,通常「回送」表示を示しているため,乗車不可であることが外からわかるようになっていますが,たまに乗務員がスイッチ操作を忘れて「空車」表示になっている場合があり,このときに冒頭で示したような苛立ちが発生する要因となります。

距離制限(最高乗務距離制限)

タクシーは,乗客を,目的地に安全に届けることが仕事です。

そのため,タクシー乗務員による乗客の安全性を確保できない状態での運行業務について一定の規制が課される場合があります。「最高乗務距離」制限というものです。

最高乗務距離は,その名のとおり,1人の乗務員が1日に乗務することが出来る最高距離を定めて規制するもので,その地域ごとに規定されている場合があり(判例では,距離制限を違法としていますが…),また各会社による個別規定が存在する場合もあります。

かかる制限がある場合,タクシー乗務員が,既にその日の最高乗務距離を超えて乗務をしていたとすると,その後に乗客を乗せることはできませんので,冒頭の乗車スルーが発生する場合となり得ます。

停車禁止場所の場合

タクシーといえども,停車禁止場所に停車して,客を乗車するわけにはいきませんので,停車禁止場所で手を挙げていても,冒頭の乗車スルーが発生する場合となり得ます。

その他(迎車中・回送中の場合)

以上のほか,法律上の制限ではないのですが,迎車に向かっている途中のタクシーや,業務を終えて営業所へ戻る途中のタクシーはお客さんを乗せることはしませんので,この場合には,冒頭の乗車スルーが発生する場合となり得ます。

迎車中・回送中か否かは,タクシーの助手席前方に取り付けてある表示板を見ればわかります。

乗務員の心情によって乗客を乗せたくない場合

以上の法令上の各種制限がない場合には,タクシー事業者(乗務員)には,道路運送法13条各号に記載された例外的な事情がある場合を除いて,運送引受義務を負っているため,法律上は客の乗車を拒絶することが出来ず(道路運送法13条),これを拒絶した場合には100万円以下の罰金刑が課される可能性があります(道路運送法98条6項)。

すなわち,基本的には,タクシー乗務員は,手を挙げた客の乗車を拒めないはずなのです。

道路運送法13条
一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。
一 当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。
二 当該運送に適する設備がないとき。
三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。

ところが,タクシー乗務員も,慈善事業として営業しているわけではありませんので,売り上げにつながらない近場であることが想定できる場合や,対応のめんどくさい酔っ払い等の客の場合には,平気でスルーされたりもします。

以上,参考にしてください。


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